ナプキン不要のサニタリーショーツTHINXと、そのアイディアを形にした起業家ミキ・アグラワル
- Vol.111
- Dig it! NYC 藤井さゆり
私が以前より気になっていたもの…
それは、生理用ナプキン不要のサニタリーショーツ「THINX」。
A day in the life of a real menstruating human ✨
THINXーYoutube
ナプキンを装着したり、取り替えたりする必要がなく、ショーツ自体が経血を吸収してくれるサニタリーショーツです。経血を吸収する部分はタンポン2個分の吸収力を持ち、抗菌、漏れ防止加工などが施された4層構造となっているのですが、ナプキンのような厚みはありません。洗濯は軽く水でゆすいだあと、洗濯機で洗うだけ。
どうです、女性のみなさん、これ、欲しくないですか?!
海外への配送も行っているので、興味がある方はTHINXウェブサイトへ。ヒップハンガー、ハイウエスト、ボーイショーツ、スポーツ、チーキー、ソングと6種類あり、タイプによって吸収力に違いがあります。ちなみに私は、ヒップハンガータイプ(タンポン2個分の吸収力)をオーダしてみました。
まだ使っていないので、使用感などはわかりませんが、布地も作りもしっかりしているし、履きやすそうです。こんなパッケージで届きます。
「多い日は漏れる」とのコメントや記事も見られますので、多い日はタンポンか月経カップと併用するといいとのこと。個人的に月経カップはオススメです。
気になる評価ですが、サイトによって隔たりはありますが、概ねポジティブなコメントが見られます。タンポンが主流であり、サニタリーショーツを見かけることがないアメリカでもTHINXに興味を持つ人も多く、Facebookのレビューでは、2,000人の内1,300人が5つ星を付けており、5段階評価の内4.2を獲得しています。
ナプキン不要のサニタリーショーツってありそうなのに、今まで作られてなかったのが不思議だなぁと思い、このコンセプトを思い付いた人はどういう人なのか調べてみたところ、THINX創始者の一人であるMiki Agrawal(ミキ・アグラワル)さんに辿り着きました。
ミキ・アグラワルさんは、インド人の父と日本人の母を持つ、カナダのモントリオール生まれの起業家。彼女は以前から起業家になりたいという夢を持っており、2012年にTHINXを創業。本社はニューヨークのマンハッタン(チェルシー地区)にあります。
また、THINX以外にも、パンティーライナー不要のショーツブランド「ICON」、トイレに取り付けるタイプのビデアタッチメント「TUSHY」、ニューヨークに3店舗持つグルテンフリーのピザレストラン「WILD」と、様々なアイディアを形にし成功させています。
THINXだけではなく、様々なアイディアを形にされていることもすごいですし、バイタリティ溢れる方ですよね。
また、TEDx Talkで話されていたことですが、サッカープレイヤーとして活動していた時にワールドカップの遠征時に訪れた南アフリカで、ある少女と出会ったそうです。
その少女に「学校は?」と聞くと「恥の一週間だから学校には行けない」と答えます。学校に行けない理由についてその少女が言うには、彼女には生理用ナプキンというものはなく、生理が来るとマットレスの一部や床に引く古いラグを使って手当をしていること、そして以前、生理中で学校に行った時に、マットレスが飛び出て男の子に笑われ、泣きながら帰ったということがあり、生理中の一週間は学校に行けないということを聞いて、衝撃を受けたそうです。
Confessions of An Underwear Activist | Miki Agrawal | TEDxBethesdaWomen
TEDx TalksーYouTube
ビジネス・インサイダーでは以下のように語っています。(以下の翻訳は、下記のビデオから引用)
ビジネスで成功するために、自分自身に問うべき3つの質問として、(1)自分にとって最悪なことは何か、(2)それは他の人にとっても最悪なことか、(3)この問題について時間がかかっても情熱を持って取り組むことができるか、を挙げています。
彼女の場合、(1)の答えは「生理中のアクシデント」、(2)は「他の女性にとっても同様の問題で、生理中のアクシデントで下着をダメにした経験がない女性はいない」、(3)は「新しいビジネスを始めるには、時間がかかっても、苦しくても腰を据えて取り組まなければならない」と語っています。
連続起業家(A serial entrepreneur)が明かす成功のための3つステップ
Business Insider JapanーYoutube
そして2015年、ニューヨークの地下鉄構内と車内に打ち出した大々的な「THINX」の広告。女性の陰部や生理をイメージさせる「半分に割ったグレープルーツの断面」と「白身が流れ出ている卵」、「THINXを着用した下着姿の女性」の写真を使用したデザインについて、不快、挑発的であるといった物議を醸しだしました。
彼女はこれについて、以下のように説明しています。
「地下鉄広告用のガイドラインにきちんと沿って広告を作ったんです。何が問題なの?9歳の男の子が見ても、この広告はお母さんのお腹の中で起こっている、あなたの成長を助けるためものだよって、生理について説明をしたらいいんじゃないかしら。」
「地下鉄でよく見る豊胸手術についての広告は、一人の女性は小さいオレンジを胸の前で持ち悲しい顔をしている、もう一人の女性は大きいグレープフルーツを持ち笑顔を見せている。THINXの広告では同じグレープフルーツを使っていますが、(一つは自然ではないものについての表現に対して)THINXは、女性の生理という自然に来るものを表現している。」
How Thinx Got Its Provocative Ads on the New York City Subway
Inc.ーYouTube
この広告は、これまでの地下鉄広告を大きく変えることになりました。
こういった功績もあり、THINXは2017年、アメリカのビジネス誌Fast Companyから「World’s Most Innovative Companies」(世界でもっとも革新的な企業)の一つとして選ばれています。
彼女に対し大きな興味と尊敬を感じていたのも束の間。今年2018年に入り、THINXの何人かの部下にセクハラを行っていたとして、THINXを離れていたことがわかりました。
このことは非常に残念でなりません。アメリカでは昨年、権力を振りかざし、女性に対しレイプを行っていたというハリウッドでのセクハラ問題が明るみとなりました。女性がやったとしても男性がやったとしても、セクハラは絶対に許されない行為です。
しかし、THINXという製品を通して、彼女が社会に貢献をしてきたこれまでの実績は素晴らしいものですし、リスペクトされるべきで、個人的に刺激を受けたことには変わりありません。
現在彼女は、ビデアタッチメント「TUSHY」(THINXとは無関係)に尽力しているようです。
何にしても、近いうちにTHINXショーツを使えるのが楽しみな私です。「THINX日本」で検索すると、日本人の個人バイヤーさんが売っているサイトも見つかるので、英語での購入に不慣れな方はこちらを利用して頂くのも手かと思います!
(参考、引用)
JEZEBEL.com Thinx Says That Former CEO Miki Agrawal Is No Longer Involved With the Company
Profile of 藤井さゆり
東京生まれ、アメリカ在住。日本とアメリカでの職務経験あり。
東京丸の内にある公益法人にて8年間勤務の傍ら、友人が企画したクラブイベントのフライヤーや、CDジャケットのデザインを行う。
公益法人では「地方の街づくり・街おこし」支援事業の一環で、ウェブサイト業務に携わる。 公益法人退職後、2004年より4年間、都内商業施設のサイト更新・管理、販促サイトのキャンペーンページ企画と取材・撮影を含めたライティングワーク、ウェブデザインを経験。
2008年ニューヨークに移住。ニューヨークではウェブマーケティング、サイト管理を企業にて経験、それと共にウェブデザインとライティングワークをフリーランスとして行う。現在は日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」を立ち上げ、オーナー兼デザイナーを務める。
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