ゲーム2021.03.17

eスポーツの未来は、スサノオが担う。ゲーム好きの中学生が、業界の先駆者となるまで

大阪
株式会社スサノオ 代表取締役
Takahiro Nakano
中野 貴博

「eスポーツ」と聞いて、ピンとくる人はどれくらいいるでしょうか? eスポーツとは、ゲームでの対戦を野球やサッカーなどと同様の「スポーツ競技」として捉えた名称のこと。何となく知ってはいるものの、実際にプレーしたり、観戦したりした経験のある人は少ないかもしれません。

しかし、近年では大手企業が次々と参入し、経済産業省が活性化に向けた事業を行うほど、大きな成長が見込まれている業界のひとつなんです。そんなeスポーツ業界の中で、技術力と経験値の高さで厚い信頼を寄せられている会社、それが株式会社スサノオです。スサノオの強みは何といっても「総合力」。

大会・イベントの企画運営、動画配信、eスポーツ施設の運営、そして選手の育成やチーム運営まで、eスポーツに関するありとあらゆる事業を手掛けています。

「eスポーツって、面白い!」ゲーム少年だった中野社長が会社を立ち上げるまでの経緯と、eスポーツが秘める大きな可能性について、伺いました。

 

格闘ゲームの大会で、20万人 の頂点に立った中学生

 

ゲームは昔から好きだったのでしょうか?

僕が小中学生のころに大流行したゲームが、格闘ゲームの「ストリートファイターII」(カプコン)、通称スト2(ツー)です。周りの男子の9割はやってたんじゃないかな。

アーケードゲームの台は街中どこにでも置いてあったし、スーパーファミコンのソフトも発売されて、大ブームになりました。全盛期の1993年に開催されたスト2の全国大会には、予選で20万人ほどが参戦、国技館で行われた決勝イベントには、予選を勝ち抜いた8000人ほどのプレーヤーが集まりました。

今だと考えられないくらい大きな規模の大会ですね。実は、その大会で優勝したのが、当時中学生の僕だったんです。とはいえ、ワイドショーや雑誌で大会のことが取り上げられても、優勝者にスポットライトが当たるわけではなかったんですよね。

世間からの扱いは、「ただのゲームオタク」。称賛される訳でもないし、何かが変わる訳でもありませんでした。優勝賞品も、カプコンのロゴが入った自転車1台だけ(笑)。

高校生になってからはアルバイトが忙しくなり、ブームが落ち着いて大会が開かれることもなくなったので、ゲームは趣味として楽しむ程度になっていきました。

当時は、ゲーム関係のことを仕事にしようという考えはまったくなかったのですか?

ゲームが仕事になるなんて、思ったことすらありませんでした。ゲーム関係の仕事といったら、ゲームメーカーの開発職くらいしか思いつきませんでしたし…。

「ゲームの大会で優勝したんだから、ゲーム会社にはすぐ就職できるんじゃないの?」と言われたりもしましたが、そんなことはもちろんありません。働く、という観点からゲーム業界に関わる考えはまったくありませんでした。

小さいころ家が飲食店をやっていたので、調理の専門学校に通い、料理人になりました。転機を迎えたのは2018年、すでに料理人から転職しており京都の会社で働いていたときです。休みの日に社長から突然電話がかかってきて、「お前、昔ゲームやってたんだろ?eスポーツって知ってるか?」と。どうやらテレビで見てeスポーツに興味を持ったらしく、社内でeスポーツ事業部を立ち上げないか、という提案だったんです。

それは急展開ですね!

ええ。でも、当時は、eスポーツでどうやって利益を上げたらいいのか、見当もつきませんでした。何をやっていいかよく分からないし、はたして本当に事業になるのか……。とにかく「面白そう」という気持ちだけで、引き受けました。

こうして始まったeスポーツ事業部ですが、所属しているのは僕1人で、仕事はひたすらゲームをすること。社長は、僕をプロゲーマーとして大会に出場させようと考えていたんです。

eスポーツ事業部が立ち上がってわずか2カ月後、フロリダでスト2の30周年記念大会開催が決定し、過去作品の優勝者2名と共にエントリーしました。大会の結果は、4位。一緒に行った2人も優勝、7位と、ベスト8に日本人が3人も入る結果となり、日本でも結構メディアに取り上げられました。

その後も大会への出場はしていましたが、それだけでは事業としてはやっていけません。どうやったらeスポーツで収益を上げられるか、と考え、思いついたのがeスポーツ施設の立ち上げでした。その時にeスポーツの会社として株式会社スサノオを設立しました。

 

決め手は「演出」。もっと多くの人にeスポーツを楽しんでもらうためにできること


eスポーツ業界はどのような広がりを見せているのでしょうか?

最近は、eスポーツで地方創成に取り組む地域の例が増えてきています。eスポーツに関心があるのは、10代から20代の若者。地域にeスポーツの文化を取り入れて若い人たちが活動しやすい環境を作り、進学や就職で都会に流出するのを防ごう、若い人たちに来てもらおう、という考えですね。

また、大手企業でも、「eスポーツ部」を作るところが増えています。従業員が何百人、何千人といる企業なら、ゲーム好きの人は相当数いるはずですから。コミュニケーションの場としても使えますし、企業のイメージアップにもつながります。実際に「eスポーツ部に入りたい」という理由で採用試験を受けに来る学生さんもいるらしいですよ。

後は、企業対抗戦も開催できたらいいなと思っています。ニューイヤー駅伝のように、企業の実業団がそれぞれのユニフォームを着て対戦したら面白いでしょうね。

これからさらにeスポーツ文化を広めていくためには、どんな工夫が必要だと思いますか。

 プレーヤーはもちろん、最近では観戦者として楽しむ人も増えてきました。観戦者を増やすために最も大事だと思うのは、「演出」です。

野球やサッカーを観戦するのが好きな人たちは、必ずしも自分がプレーヤーだというわけではないですよね。でも、試合を見て楽しむことができる。

ゲームもまったく同じだと思います。自分がプレーヤーでなくても、ゲームの知識があまりなくても、見ていて楽しいものだったら、観戦してくれるはず。そのためには、見やすく、分かりやすく、楽しめる演出が必要不可欠なんです。

ただゲームをしている様子を配信してもダメで、素人レベルの人でも自然と頭に入ってくる実況解説、画面の作り方、誰と誰が戦っていて今は何対何なのか、これらが分かりやすい配信演出のテクニックが必要です。

韓国では、eスポーツの選手に固定ファンがついていたりするんですよ。ユニフォームや、撮影の仕方で格好良く見せる工夫をしていることで、まるでアイドルのような存在に。女性ファンも多いです。

なるほど!そのような観点から見ると、ゲームに関心が薄かった層の流入もさらに増えていきそうですね

先ほどの企業対抗戦の例もそうですが、業界を盛り上げていくには、eスポーツの「大会」のような「場」がもっと要ります。ただ、大会の運営は誰にでもできることではありません。高度な映像配信技術も必要だし、選手や試合の見せ方のノウハウも必要。そんな時に、スサノオが総合的にサポートできたらと思っています。

eスポーツの配信、チーム運営、施設、番組作り……。業界でこれらをカバーできている会社は多くありません。これまで以上に「eスポーツといえばスサノオ」と言われる存在になりたいですね。

スサノオはカメラやスイッチャーなどの機材を自社所有しており、コロナ禍の状況に留意したオンラインイベント運営のノウハウもあります。さらにWEB制作や映像制作も社内で行っています。eスポーツにかかわらず、こうした案件についてのご依頼があれば受注することができますので、ぜひお問い合わせください。

 

30年ぶりに、あの場所へ戻りたい。国技館でのeスポーツ大会を夢見て


eスポーツ業界は、これからさらに伸びていきそうです。どんな想いが挑戦のモチベーションになっているのでしょう?

僕は昔から、「自分は運がいいんだ」と思っています。中学生で国技館の大会で優勝したのも、あの会場にいた中で「たまたま一番運が良かったからだ」と思っています。今、一緒に仕事をしてくれているスタッフやオーナーの方々とも、運が良くて出会えた。そういう人たちと出会えたから、やってこれたのだと思います。

eスポーツは日本だとまだまだ収益化もされていないし、未知数なところが大きい。でも、ないものを創りあげていく、前例のないものをかたちにできれば、関わる人たち全員が幸せになれるのではないかと思います。

今の僕の目標は、国技館で1万人規模のeスポーツの大会をやることです。中学生のころ自分が優勝したあの場所で、もう一度大きな大会を開きたい。

その時にはもちろん運営側として関わるでしょうが、実は選手としても出たいな、なんて思ったりもしています。成長したスタッフたちが、「僕らが現場で大会を成功させるので、社長は選手として優勝してきてください!」って言ってくれたら、最高ですね。

取材日:2021年1月22日 ライター:土谷 真咲

 

株式会社スサノオ

  • 代表者名:中野 貴博
  • 設立年月:2019年2月
  • 資本金:3900万円
  • 事業内容:eスポーツイベント企画運営、LIVE配信事業、eスポーツ事業プロデュース
    eスポーツチーム「SUSANOO GAMING8」運営
  • 所在地:〒530-0022 大阪市北区浪花町13-38 千代田ビル北館5階
  • URL:https://www.ssno.co.jp
  • お問い合わせ先:06-6568-9380

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