WEB・モバイル2018.08.22

駆け込み寺として起業。人材力とチームワークでCS重視のIT総合サービスを展開

福岡
株式会スミリオン 代表取締役 福田裕聡 氏
社名は「Smile(笑顔)+Million(百万)+One(一心)」の意味を込めた造語。「皆で心を一つにして協力すれば何事も成し得る」の精神で、顧客に満足してもらえるITサービスを提供し、ともに笑顔で永続する企業づくり、が同社の理念とのこと。思いがけない理由から会社を立ち上げた福田代表に、苦境を打開した経緯や大切な仲間とともに笑顔で成長していくためのプランについてお話をうかがいました。

エンジニアから営業職へ、そして決意の起業

会社員時代にシステムエンジニアから営業職へキャリアチェンジした経歴をお持ちだそうですね。

システムエンジニアとして働くうちに、地位を上げ収入を増やすためには営業スキルが大事だと気づきました。父親が営業としてバリバリ働くのを子どもの頃から見ていたせいかもしれません。当時、会社経営に携わっている大学の先輩が何人かいて、その方たちにいろいろなアドバイスをいただいたのも大きかったです。「営業をやらせてください!」と上司にお願いし続けたら、社長が「変わった人間がいるものだ。」と後押ししてくださって、その時、所属していた広島事業所を出て、岡山、大阪、名古屋、東京、千葉の各拠点を巡って営業としての経験を積ませていただきました。

会社設立までに、どのような経緯があったのですか?

営業を5年ほど経験し、受託開発事業を任されて技術者の採用活動にも携わっていたところへ、先輩社員から「福岡で起業するから手伝ってくれないか」と誘いを受けたのが、そもそものきっかけです。会社を辞めて福岡へ移ったら、よそ者でも歓んで受け入れてくれる福岡のご当地気質がうれしくて、すぐに福岡が好きになりました。当時は、毎晩派手に飲み明かしていたというのもありますが(笑)。ところが、その会社で様々な問題が発生し経営難に。会社が倒産すると路頭に迷うかもしれない社員の受け皿になればと、立ち上げた別会社が、スミリオンでした。

前職で得た教訓を経営に活かして

満を持しての起業ではなかった分、ご苦労もあったのでは?

最初は3人からスタートし、その後、徐々に前の会社の人たちが合流してきました。成り行き上、代表になってしまったので、必死に勉強して、知り合いの経営者にも指導を仰ぎながら、事業を軌道に乗せることに全力を傾けました。「スミリオン」の社名は、私の出身地、広島ゆかりの戦国武将、毛利元就の思想からヒントを得たものです。元就は「百万一心」と刻まれた石碑を立てています。「百万一心」の文字を分解すると、「一日・一力・一心」とも読め、「一」は「同じ」という意味でもある。心と力を合わせれば何事も達成できるはずだ。そんな願いを込めました。

前の会社からの仲間が、そう思わせてくれたと?

そうですね。前の会社は、今はなくなってしまいましたが、数々の出会いは、今も残る貴重な財産となりました。それだけに、資金繰りが苦しくなってくると経営サイドにいる身として、とてもつらかったです。そういうときに心の支えになってくれたのが周りにいる仲間たちでした。お金のかからない居酒屋に集まっては意見を交わし、腹を割って話し合う時間を持てたからこそ、当社が今、ここにこうしてあるように思います。「スミリオン」の名は気に入っていますが、ITサービスの会社と思われなくて、不動産業や保険業に間違われます(笑)。

つらい思いをされたことで、反省が経営に活かされている面もあるのでは?

まず、前の会社の経営を反面教師として、キャッシュフローをしっかり管理して経営の安定を図ることを前提としました。また、前の会社はSES事業が売上のほとんどでしたが、経営の柱を複数備えるために当社ではお客様企業からの受託開発に力を入れました。現在ではSESと受託開発は6対4の⽐率です。さらに、屋台骨を強化するため、自社開発にも注力していきたいと考えています。 自社開発例としては、知人のパーソナルトレーナーとの話から開発に着手した、高齢者施設向けオンライントレーニング「e-GYM」があります。トレーナーのいる施設と離れた施設を生中継でつないで双方向コミュニーケーションを可能にしながら運動ができるオンラインサービスで、導入先の施設利用者に対するサービス向上と関係者の業務改善に役立っています。

気心の知れた仲間とスタートした会社は、各自の経験値とチームワークによる強みを有していると言えますよね。

現在18⼈いる社員のうち、10⼈がシステムエンジニアとして10年以上の経験の持ち主です。金融系システムで経験を積んだ者が多いのが特徴ですが、多様な業種向けのシステム開発の上流から下流までの全工程を担当できる幅広いスキルを各自がもっています。設計における要件定義の段階から参画して課題発見と問題解決を、お客様とのやりとりを通じワンストップで行ってシステム構築を進めていけるため、当社の対応力の高さを評価していただけるケースが少なくありません。

個々の能力を最大限に引き出す環境づくり

課題と考えている点はありますか?

各自の能力の高さからワンストップサービスが提供できるのは会社としての強みである反面、個人への負担が大きくなりすぎるおそれがあります。現在の体制では段階的な試みになるでしょうが、設計、開発、保守のそれぞれに専任チームを編成し、役割分担によって業務の効率化と生産性の向上を図っていきたいです。

—個々の人材の働きやすさが生産性の向上につながるわけですね。

「百万一心」の精神を理念に掲げている以上、心を合わせ、力を合わせる一人一人が活き活きと活躍し、やりがいを得て、充実する環境を目指しています。そのために、福利厚生の充実や働き方改革を推進中です。先端技術勉強会と、ざっくばらんな意見交換やアイデア会議も兼ねたランチ会は、ともに月2回実施。社風向上委員会、スキルアップ委員会などは社員主導で取り組みを進めています。家族も参加できる花見、バーベキュー大会、ゲーム大会など、年間行事も実施しています。行事としてミュージカル鑑賞を行っている会社なんて、ほかにはあまりないのでは(笑)。

来年1月で10周年だそうですが、次のステップへ向けての思いは?

例えば、当社が保育園に導入するシステムを開発する際には、通園時間に現地へ足を運んで独自にデータを収集するところから始めます。そのように、しっかりと要件定義を行ってシステムを組んでも、実際に稼働してみて初めてわかることがある。より使い勝手のよいシステムへ近づけるためには、さらに手間暇をかけなければならない。どんなに大変な思いをしても、地域の企業や組織の活動を自分たちの技術と工夫で支えた結果、「業務が効率化できて助かった」「コストを抑えられるようになって本当によかった」と歓んでもらえると、それまでの苦労は吹き飛びます。そのたびに、私たちの存在意義を実感します。これからも地域の未来に貢献できるよう進化を目指しながら、社会を笑顔でつなぐ活動に邁進していきます。

取材日:2018年7月27日 ライター:堀 雅俊

株式会社スミリオン

  • 代表者名:代表取締役 福田裕聡
  • 設立年月:2009年1月
  • 資本金:500万円
  • 事業内容:経営ITサービス(ITコンサルティング)、SES(顧客オフィスにシステムエンジニアが常駐して技術を提供するサービス)など
  • 所在地:福岡県福岡市博多区博多駅東1-14-25 新幹線ビル2号館5F
  • URL:https://www.smillione.co.jp
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