自社開発のオープンソース「baserCMS」でビジネスやクリエイターを支援
オリジナルの「baserCMS」をはじめ、オープンソースを利用して500以上のウェブサイト構築に関わってきた株式会社キャッチアップ。代表取締役の江頭竜二さんは異業種からシステム系の仕事に転身し、自ら開発した「baserCMS」をオープンソースとしてリリースしました。公開まで、そして公開から今に至るまでの道のりにも、多くの人の協力があったと振り返る江頭さん。紆余曲折のキャリア、福岡ならではの取り組み、今後の展望までお伺いしました。
異業種からIT業界へ転身して、30代半ばで独立
江頭さんはずっとシステム系の仕事をされてきたのですか?
いえ、全く違うんです。初めは地元佐賀の銀行に就職したのですが、自分には合わないと思い4か月で退職。車が好きだったので、ガソリンスタンドで正社員として働き始めて、副店長になりました。ただ、26歳のとき、将来を考えて職業訓練所に行ってみたところ、ホームページにすごく興味を持ったんです。「これだ!」と思い、寝る間を惜しんで勉強に没頭しました。
けれど当時、未経験で雇ってくれる会社はなく、コールセンター代行業の会社に入社。スーパーバイザーをしていたら、日頃の努力の甲斐もあってシステムの業務もできるようになり、システム部を立ち上げることに。とにかく必死に本を読んで勉強しながら、通販の受発注システムなどを担当しました。
紆余曲折がありながらも、興味のある分野を見つけられたのですね。
プログラミングはできるようになったのですが、デザインにも興味があり、本当はウェブデザインの仕事に就きたいと思っていました。そして2007年に独立しました。でも、特に人脈や仕事の当てがあったわけでもなく、さらにリーマンショックで不景気になり、1年後には仕事がなく行き詰ってしまって。それに、自分にはウェブデザインのお仕事が向いてないと気付きました。一定の時間で全体のクオリティを出すことがとても難しくて…。システムに専念しようと決めました。
オリジナルのオープンソース「baserCMS」をリリース
30代半ばで大変でしたね。それから、どうされたのでしょうか?
自分で開発していたプロダクトがあり、収益につなげられないかなと考えていました。また、ずっと独学でやってきた自分のプログラミングが正しいのかわからないため、福岡のコミュニティに参加することにしました。そこには業界で既に活躍されている方々も多くいて、いろいろなことを教えてもらいました。プロダクトの話をすると「オープンソースにしたら」とアドバイスいただき、オープンソースCMSの「baserCMS」を2010年にリリースしました。
すぐに広まったのでしょうか?
1年ほどは引き合いがなかったのですが、福岡のコミュニティの方々がプロダクトを育てていこうと実際に使ってフィードバックをしてくれたりして、応援してくれました。本当にありがたかったですね。それから福岡工業大学で「baserCMS」を採用していただけることが決まりました。かなり大きな案件だったのでアルバイトを3人雇って、僕の自宅で夜中まで作業して、どうにか4か月ほどで完成しました。
初めから大きな案件で、やりがいがあったことでしょう。
手伝ってもらった2人とはそれからも一緒に働きたいと思い、2012年に株式会社キャッチアップを立ち上げました。郊外の海辺のマンションの1室をオフィスにしました。でも、僕は経営に関して全くの素人で、トライアンドエラーの繰り返し。売り上げが落ち込んで困ったとき、福岡の大手制作会社の社長に相談したことをきっかけに少しずつ仕事が増えて、便利な天神エリアに移転して、社員を増やしてきました。
エンジニアを支援して、福岡や業界を盛り上げたい
今の事業内容を教えてください。
軸が2つあり、ひとつはCMS系のウェブシステムを中心とした提案と開発です。社員は18人になり、福岡の大手制作会社のパートナーとして仕事をさせてもらうことが大半です。不動産から学校、企業、ECサイトまで幅広く手がけています。 もうひとつの軸として、「baserCMS」を普及・改善していくために、2014年特定非営利活動法人ベーサー・ファウンデーションを設立しました。僕が福岡と東京のオフィスを行き来しながら、全国的な活動を展開しています。
御社の強みはどんなところでしょうか?
やはり自社のプロダクトを持っているところですね。そして、500以上のサイト構築に携わってきたプロのエンジニアの集団として、お客様に安心して仕事をご依頼いただけるように心がけています。
会社として目指していることや、ご自身の将来のビジョンを聞かせてください。
「baserCMS」を中心に据え、ウェブサイトの制作を通じてお客様のビジネスに貢献していきたいと考えています。また、クリエイターを支援したいという思いがあり、エンジニアが開発したものを販売できるマーケットプレイスも提供しています。僕自身がフリーのときに収入が安定せずにすごく苦労したので、フリーランスの方や小さな制作会社が少しでもお金を得られる場になればと考えたのです。「baserCMS」がクリエイターの人たちにとってより使いやすいプロダクトになるように改善して、もっともっと広めていきたいと思っています。
会社の経営者としては、ここで働いて良かったと思ってもらえる会社にしたいし、社員が子どもに誇れるような会社にしたい。そして僕の代で終わらせることなく、未来へとつないでいけるような経営をしていかなければと考えています。
福岡市は「エンジニアフレンドリーシティ福岡」を掲げて、クリエイターが働きたいと思うようなまちづくりを目指していますね。
当社もエンジニアフレンドリーシティ福岡の取り組みに賛同しています。今は全国的にエンジニアが不足していて、他社からハンティングするか育てるかの2択と言われています。先ほどお話したように、福岡には以前から様々なコミュニティがあり、みんなで助け合い伸びていこうという土壌があります。僕がコミュニティに助けられてきたので、今はコミュニティを運営する側としても携わっています。福岡でエンジニアを育てて、業界を盛り上げていけるように力を尽くしていきます。
取材日:2019年9月10日 ライター:佐々木 恵美
株式会社キャッチアップ
- 代表者名:江頭 竜二
- 設立年月:2012年1月
- 資本金:300万円
- 事業内容:ウェブシステム開発、オープンソース支援
- 所在地:〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名2-11-25 新栄ビル4階
- URL:https://catchup.co.jp/
- お問い合わせ先:092-791-5508