下北沢という街を舞台にしたやわらかい日常、映画『街の上で』
今泉力哉(いまいずみ りきや)監督の最新作、映画「街の上で」を一足お先に鑑賞しました。
実は今泉監督作品を今まで見たことが無かったこと、普段はサスペンスやホラーばかり見ていてこういった日常系をほとんど見たことが無かったので130分という大作を最後まで飽きずに見ていられるか心配だった…が、要らぬ心配だった。
今泉力哉監督について
1981年2月1日生まれ、福島県郡山市出身。
代表作に『たまの映画』『サッドティー』『退屈な日々にさようならを』など。
『こっぴどい猫』でトランシルヴァニア国際映画祭最優秀賞受賞。
「午前3時の無法地帯」「東京センチメンタル」などのドラマ、乃木坂46のシングルCD特典映像『水色の花』(齋藤飛鳥)『早春の発熱』(衛藤美彩、桜井玲香)なども手がける。
2019年に『愛がなんだ』『アイネクライネナハトムジーク』が公開、2020年1月には『mellow』(主演:田中圭)『his』(主演:宮沢氷魚)が公開。
金曜ナイトドラマ「時効警察はじめました」やWOWOW「有村架純の撮休」にも演出として参加するなど精力的に活動している。
今年2月より『あの頃。』(主演:松坂桃李、脚本:冨永昌敬、原作:劔樹人)が公開中。
今泉監督は「演出」のプロでやわらかいリアルな空気感を出すのが上手。
ハラハラしたりドキドキしたりなんていう波は殆ど無く、でも物語の続きが、主人公「青」の日常が気になり、気が付いたらエンディングを迎えていた。
大人になった今だったらあまり感じる事のない「小さな悩み」とか、「自分本位な選択」、大人ならバッサリ切り捨ててしまう様な「小さな期待」。
そんなものが劇中にはたくさん散りばめられていて、なんだか自分が若いころに戻ったような…。
ああ、自分もこんな時期あったあった…と、もぞもぞする不思議な気持ちで画面に見入ってしまった。
下北沢の古着屋で働いている荒川青(あお)。青は基本的にひとりで行動している。たまにライブを見たり、行きつけの古本屋や飲み屋に行ったり。口数が多くもなく、少なくもなく。ただ生活圏は異常に狭いし、行動範囲も下北沢を出ない。事足りてしまうから。そんな青の日常生活に、ふと訪れる「自主映画への出演依頼」という非日常、また、いざ出演することにするまでの流れと、出てみたものの、それで何か変わったのかわからない数日間、またその過程で青が出会う女性たちを描いた物語。
公式サイトより拝借。
下北沢、古着屋、ライブ、古本屋、自主映画。
実は20代の頃に下北沢の近くに住んでいて、自転車で通ってバーテンのバイトしてたり、友人の劇団で宣伝美術の手伝いしてたり、夫は元バンドマンだったり。
古着屋と古本屋は今もしょっちゅうお世話になってたり。
自分の生活にこの単語たちがクリティカルヒットをしていて、本当に懐かしい様な暖かいくすぐったい気持ちになりながら見ていた。
終始漂う青(=若葉竜也)のやわらかい雰囲気、出てくる女の子たちの可愛いような色気のような魅力的な空気感。
全編通して街の登場人物との他愛のない会話、すべてが心地よい映画だった。
日々忙しく働いている大人のアナタにこそおすすめしたい、そんな作品。
出演:若葉竜也 穂志もえか 古川琴音 萩原みのり 中田青渚 成田凌(友情出演)
監督:今泉力哉『愛がなんだ』
脚本:今泉力哉 大橋裕之
公式サイト:https://machinouede.com/
2021年4月9日(金)より新宿シネマカリテ、 ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。