○ちゃんおでんのメッセージ
オリンピックは結局1年ほど延期になりましたが、その準備として「東京都受動喫煙防止条例」が4月1日より全面施行されるため、それまで喫煙者のエリアもあったカフェも、狭い喫煙室のみに方針転換するなど、喫煙者にとってますます肩身の狭い社会になってしまいました。
そんな社会の動きなどまるで知ったことじゃないと、店頭に堂々と灰皿を置いてくれているたばこ屋さんもまだ少数派ですが残っています。
新しい職場の近くにも、そんなたばこ屋さんがあって、昼休みともなると、近隣の会社に勤めている人たちが道路にもはみ出して、うまそうにたばこを吸っています。
僕も毎日そこに通うようになったのですが、そのたばこ屋さんの向かいの店に気になるものを見つけました。そこは「○ちゃんおでん」という小さな呑み屋さんなのですが、その店の入り口の脇には額縁型の黒板が掛けられていて、毎日メッセージが書き換えられるのです。
初めてそれを目にした時、「○○製紙は ペーパーカンパニー 生は350えん」と白墨で書かれていました。もちろん「○○製紙」は実名です。そこの主人が「○○製紙」に恨みがあって、ヘイトスピーチのつもりでそんなメッセージを晒しているのかなと思いました。しかし、次の日には次のようなものに変えられていました。
「もし鱈が釣れたら レバーが食べたい タラレバ」
さらに次の日には、
「優ちゃんがチューをして 屁をこいた ユーチューブ」
この流れを見て、主人がダジャレ好きで、それを半分趣味で毎日書いているんだということがはっきりしました。ダジャレだけでなく、社会的ニュースをネタにしたものも少なくなく、写真は「座布団一枚〜!」と思った作品です。
「新型コロナの検査をしました 私は妖精でした」
なかなかです。このジャンルでは次のような秀作も生まれました。
「スタップ細胞と トイレットペーパーはあります! 小保方談」
「オリンピック観戦より 新型コロナ感染」
どんな人が書いているんだろう。ちょっと興味が湧きましたが、昼はもちろん、仕事が終わって立ち寄る夕方の7時前にもまだお店は閉まっています。
ところがある日、少し遅くなって7時過ぎにたばこを吸い始めると、なんと店に明かりが灯っているではありませんか。例の黒板も外されています。おそらく今、店内で次の新作を書いているのです。
わくわくしながら待っていると、いきなり入り口の扉が開いて黒板を抱えた人が出てきました。おそらくその人が「○ちゃん」です。しかしその人物は、想像していたものと少し違っていました。黒板を抱えて店から出てきたのは、派手なアロハシャツを着た金髪リーゼントのおじさんでした。「○ちゃん」はその日の作品を書いた黒板を店の前に掲げました。
「女性客にはウエルカム キッスをご用意しました」
それを見てなんだかがっかりしました。洒落でも社会を茶化したものでもなかったからです。思えば、以前からエッチネタもまあまあありました。
「ワクチン×2 ワクワクチンチン」
「山手線と中央線 それから総プ線」
「ふねさんの趣味はサーフィン 波(平)に乗る」
エッチネタだと、最後にいつも付いている「生は350えん」が意味深になってきますけどね。