「アニメ番組制作者が語る制作エピソード!」その②~アニメ制作における音楽の役割と重要性・制作者のこだわり~

Vol.14
株式会社フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー
映像業界40年 おやじプロデューサーのひとり言
関田 有應

こんにちは。
フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー 関田有應(せきたゆうおう)です。
14回目のコラムは「アニメ番組制作者が語る制作エピソード!」その② ~アニメ制作における音楽の役割と重要性・制作者のこだわり~です。

前回もお話させて頂きましたが、私が担当していたテレビ番組やCMは、未就学・就学児童を視聴対象にした実写映像でした。
そんな私にとって、アニメ業界の制作の仕組みは、今まで経験した事がない細分化された制作工程と役割の違うスタッフで構成され、制作されていました。

テレビ業界で私がプロデューサーをさせて頂いた番組では、ディレクター(監督)はひとりです。
ところがアニメ制作においては、作業工程に多くの監督がいます。
監督、作画監督・美術監督・音響監督・各話監督(演出)。
テレビ業界で20年以上プロデューサーをさせて頂いていた私にとって、アニメ作品に関わる監督の多さに驚き、戸惑いさえも感じました。

だれに何を相談したら良いのか。
どう進めたら良いのか。
元請け会社のプロデューサーとして、どのように作品制作と関わるか。

アニメ制作は、アニメ業界の老舗、大手アニメ制作プロダクションにお願いしていました。
制作プロデューサーをはじめ、監督、文芸ディレクターの皆様は、アニメ業界の重鎮ぞろいで、数々のヒット作を世に送り出した実績をお持ちの方ばかり。
皆さん、こだわりの塊(かたまり)。
加えて各パートの監督のこだわりがまた凄い。
監督のイメージ以上の絵を作り出す事に、強烈な「熱」と「想い」を持つ、言わば職人集団の親方(監督)クリエイターの方々です。

私だって番組タイトルを言えば、誰しもが知っている番組のプロデューサーです。
3DCGアニメーション制作の世界では、少しは知られている制作プロダクションの制作本部長・プロデューサーです。
自信もありました。
同じ映像表現ですから、単純に技法と手法の違いだけだと思っていました。
しかし、これが大変な間違いでした。

最初の壁は、 制作スタイルが全く違う。
トーン&マナーが違う。
それとコミュニケーションの取り方でした。
今までの私の制作スタイルが通用しない。
今までのCM・番組制作プロデューサーの経験や能力だけでは到底太刀打ち出来ない!

戸惑いはありましたが、結果を出す事がプロデューサーとしての責務です。
そこで最初に始めた事は2Dアニメ(手描きアニメ)の世界を理解し、知る事です。
2Dアニメ制作の経験が少なかった私は、2Dアニメの制作工程・仕組みを覚える事から始めました。

レギュラー番組を数本抱えていた私です。
寝る間を惜しんで番組制作に取り組んでいました。
それに加えて2Dアニメ制作の制作工程、表現方法を学ぶ。
睡眠時間を削り時間を惜しんで行いました。
でも全然平気でした。
想いは、2Dアニメ制作を行うプロスタッフの皆様と、これからアニメ番組を共に制作するにあたり、私が何も知らないで制作に関わる事への申し訳ない気持ちと、映像制作が大好きでテレビ業界でプロデューサーの道を選び、結果を出してきた自分との向き合いでもあり、さらに私の覚えたい!という気持ちと好奇心が原動力になりました。
また学ぶ楽しさが、喜びでもありました。

実写制作の流れと、アニメ制作の流れ、作業内容・工程の違いを比べながら覚えていくという方法で取り組みました。
まだ、アニメの専門書などほとんど出版されておらず、制作現場にたずさわる、すべてのスタッフから徹底的なヒアリングを行いました。
制作進行スタッフにもたくさん聞いて、色々な事を教えてもらいました。

プライドなんてどうでも良かった! アニメ番組制作を通して、視聴者の皆様に笑顔をお届けしたい!
そのためには、自分が成長しなくては上質のアニメ制作はおこなえない。
ましてや、未就学・就学児童向けのテレビ番組プロデューサーですので、作品制作への想いと執着は人一倍強かったので拍車がかかりました。
そうなるともう夢中です。
完ぺきな“のめり込み状態”です。

アニメ制作工程でのプリプロ(制作の骨格)が進むにつれて各種設定・脚本、声優のキャスティングや、OP・ED・BGM制作などの検討段階にはいる頃には、2Dアニメ制作の流れがわかってきました。
放送日までの一連のアニメ制作工程の理解度が深まるうちに、どのタイミングまでに何を行うのか。
CM・番組制作の場合、プリプロ・プロダクション・ポストプロダクションという流れで制作を行いますが、アニメ制作も同じ流れです。
しかし、被写体が無い世界ですから、0から100まですべて絵で描き起こします。
細分化されたアニメ制作の精度を上げるために、各工程に監督がいるのだという事も理解出来ました。

制作現場とのミーティングを重ねて行くうちに、私の中で大きな発見がありました。

「アニメ制作プロダクションは、絵(作画)で勝負する!」

アニメ制作プロダクションですから、絵(作画)で勝負するのが当たり前と言えば当たり前。
ですので、どちらかというと音楽は2の次!
アニメは絵(作画)が命。
音楽はあくまで脇役であり、あまり重要視されていない事もわかりました。

それなら音楽制作プロデュースは私が行う!

「アニメ番組制作者が語る制作エピソード!」その②
~アニメ制作における音楽の役割と重要性・制作者のこだわり~

今回のお話はここまでです。 次回は、私のアニメ制作における音楽プロデューサーの想いや、音楽制作の話をさせて頂きます。

クリエイターとして歩み始めたアシスタントプロデューサー君。
音楽制作は映像制作と同じくらい広い世界です。
志を高く持ち、自分の選んだ道を迷うことなく真っ直ぐに進んで下さい。
そして素敵なプロデューサーになって下さい。
「がんぱれ」
先輩シニアプロデューサーとして心より願う事です。

ここまで読んで頂き有難うございました。 それではまた次回。

*株式会社フェローズは日本動画協会の会員です。

プロフィール
株式会社フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー
関田 有應
(せきた ゆうおう)大学を卒業後、テレビ局直系制作会社に入社。 企画、番組制作、イベント映像、PV、VP制作を行い、その後CM制作を中心に実写業界でのキャリアを積み、大手出版社グループでデジタルコンテンツ系の映像・音楽制作。 子供向けアニメ作品を中心とした、テレビシリーズ・OVA・劇場版・音楽制作・マーチャンダイジングと、キャラクタービジネスの世界で製作プロデューサーを行う。代表作は、平成の名物キャラと言われる主人公がハムスターのアニメ作品 株式会社フェローズにて アニメセクションの立ち上げを行い、現在はマーケティングセクションにて全国の映像系学校でのセミナー講師やキャリアアドバイザーを行っている。 息子も大手広告代理店直系の制作プロダククションのPM「親子鷹」である。※無類の音楽好きで、40年ぶりに大学時代のバンドを復活。活動中。

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