WEB・モバイル2023.04.05

会社倒産の危機から原点回帰し、V字回復!言葉のパワーで「社会に良い影響を」

岡山
株式会社ワード 代表取締役社長
Kousuke Miyake
三宅 耕介

Web制作やWebメディア事業といったデジタル領域にも幅広く展開している株式会社ワード。岡山市を拠点に、雑誌や会報誌、社内報制作、オウンドメディアなど、編集や文章に関わる仕事を手がけているクリエイティブ集団です。代表取締役社長の三宅 耕介(みやけ こうすけ)さんは、雑誌の編集長を勤めた経験から、文字を綴る楽しさと面白さに魅了されて起業しました。一度は挫折しかけたものの、今では1年間で月間訪問者数17万人を超えるレコメンドメディアを手がけている、プロの編集者です。そんな三宅さんのこれまでの歩みや将来への展望をお伺いしました。

美容室での会話がきっかけで、女性誌が誕生。27歳で編集長に

ワードを設立されるまでの、三宅さまのキャリアをお聞かせください。

大学を卒業後、地元でタウン誌を扱う会社に入社しました。広告営業から、特集の企画・取材・営業など、出版に関わることのほとんどを一通り経験し、順調にスキルを積んでいった入社5年目、人生を左右する転機に恵まれます。
当時お世話になっていた美容師さんとの雑談の中で、「美容室に来られるお客さんは『団塊ジュニア世代』の女性が多く、晩婚化・両親との同居率が多い傾向にある。そんな内容の特集があったらいいのに」という声を耳にしたのです。
「そのような要望があったので、雑誌を作りたい」と上司に相談したところ、企画が通り、雑誌を創刊することになりました。
新しく創刊した雑誌はニーズとマッチしており、続々と続刊が出るヒット作に成長しました。また創刊後しばらくして、編集長も経験できたので、これまで培った自分の経験を生かせる良い機会でしたね。この成功体験が、後の自分の進路にとても大きな影響を与えています。

ワード設立の経緯を教えてください。

27歳の時に雑誌の編集長となり、「ヒト・モノ・カネ」と密接に関わりながら、一つの雑誌を作り上げる喜びや、事業をやる楽しさを知ることができました。
また社員たちは、会社の方針や都合で次々と異動してしまいます。自分の元で育った部下を何人か見送るうち、次第に「適材適所を自分で決めて、自分で考えて利益を出すような活動をしたい」と思う気持ちが強くなりました。
もともと独立志向が強い方ではなかったのですが、これらの経験から2010年の5月、福山市にワードを立ちあげたのです。

設立するも社員が辞職。会社倒産の危機から原点回帰

株式会社ワード設立でご苦労なさった点や、乗り越えてきた壁などございましたらお聞かせください。

立ち上げ当初、「メディアの会社にしよう」と考えたこともあったのですが、13年前の福山市ではあまりWebの需要がありませんでした。そのため、出版社を法人化し、社員2人を雇い、スタートしました。
まずは1冊、習い事関係の雑誌の創刊を目指したものの、リーマンショックによる大不況の真っ只中というタイミングの悪さや、自身の計画や見通しの甘さなどもあり、利益が出せなかったのです。そのうち社員も辞めてしまい、雑誌を出す前に独りになってしまいました。
しかも、1000万円あった資金は30万円にまで減ってしまい、大ピンチでした。当時2人目の子どもも生まれたばかりで、妻もすぐに働くことができません。「このままでは倒産してしまうかもしれない…」というところまで追いつめられていました。
そこで事業の方向性を変え、チラシなどの広告の受託営業を請け負うことにしたのですが、多くは足元を見られた金額のものばかりで、「仕事はあるけど食っていけない」状況でした。
今一度「自分の強みは何か?」と考えたところ、やはり「雑誌の制作にあるのではないか?」という考えにいたったのです。営業を重ねる中で、企業の冊子制作に困っているというニーズに気付き、ターゲットを会社が作る冊子にシフトすることにしたのです。「社内報などの会社冊子を、雑誌風に作る制作会社です」とPRしていきました。
こういった案件はコンペから入るものが多く、頻度もそう多くありませんが、一つ受注できると金額も大きいため、できる限りの多くの力を注ぎました。
また編集プロダクションとして、地元の本を出している出版社や書店を回ったところ、旅行情報誌などの仕事をいただけたのです。その後は会社に寝袋を用意して働くほどに忙しくなりました。

紙媒体から未経験のWeb媒体へ進出。月間訪問者数17万人の新メディアも

御社の事業内容について教えてください。

雑誌や会報誌、社内報制作など、編集や文章に関わる事業を中心に、Web制作やWebメディア事業といったデジタル領域にも幅広く展開しています。
数年前までは、主軸は冊子制作と旅行情報誌関連で、9割が紙媒体、1割がWeb媒体でしたが、今では逆転しています。

紙媒体からWeb媒体へ、どのように移行されたのですか?

社長の私もスタッフもWebの知識がなかったので、編集も、編集アシスタントも、デザイナーも、プログラマーも、みんなで勉強して力をつけていきました。紙媒体からWebへの移行は正直苦労しましたね。
しかし、紙の編集もWebの編集も、仕事の基本はどの業種も一緒です。「読者にどうやって伝えていくか?」が分かっていれば、伝え方が違っていても幅広く対応することができました。

新メディア『エディモ』について教えてください。

コロナ禍の1年前にリリースしたレコメンドメディア「エディモ」は、美容・健康などの情報をお届けする、女性向けコンテンツです。スタッフはほとんどが女性なので、自分の生活延長線上で興味のあることを深堀して、質の高い記事を書いてもらいました。
オープンから1年目にして月間訪問者数17万人を達成し、地方発のメディアとしては大きく育っています。Webメディアは、印刷費などのコストも掛からない理想的な形態でありながら、アフィリエイトで利益もしっかり出ています。
Webデザイン・取材・原稿の作成・プログラミングと、Webメディア作りは「チームの総力戦」といえる大きなプロジェクトです。困っている人が読んで響くものを作りたいと思います。レコメンドメディア「エディモ」はこれからも、まだまだ伸びるでしょう。

「読者に伝わるか?」を最重要視し、文章などを徹底的にチェック

紙媒体・Web・出版に共通して抱いている「文章」へのこだわり、大切にしていることを教えてください。

文章を読むのは正直、面倒なことです。そんな面倒なことを読者にやってもらえるかどうかが腕の見せどころなので、常に読者のことを考えることがこだわりの一つです。
受託制作なので、最終的にクライアントさんの望むモノを作りますが、クライアントさんの意向よりも、最終的に「読者に伝わるか?」を重視して提案・制作していますね。
1人で書いていると視点が抜けることがあるので、ライターからあがってきた原稿を2人がかりでチェックして、伝わる文章かどうか考え抜きます。「ワード」という社名が示すように、我が社の強みなので、決して妥協できません。

企業理念の「伝える力で社会にグッドインパクトを与える」とは、具体的にどういうことでしょうか?

「誰かに何かを伝える」が弊社の仕事の核であり、クライアントさんの想いを、編集して世に出し、伝えていくことが使命です。
言葉はある種のパワーを持っていると思います。暗く陰のあるネガティブな内容ではなく、明るく良いインパクトを与えたい。我々の放つ言葉や企画で、社会に良い影響を与えたいと考えています。

人材を育て・守ることに注力し、効率&収益が上昇!作業の見える化も後押し

どのようなクリエイターと一緒に働きたいですか?重視する点を教えてください。

以前は、人員不足で切羽詰まってから「経験者かどうか?」を基準に採用を決めていた部分が大きく、仕事をまわすための即戦力を求めていました。しかし過去の経験に固執し、変化を嫌い、離職されるケースも多く、常に人員が不足している状態でしたね。
そこで「この会社に合う人材か?」を基準に、採用を決めることにしました。未経験者であっても、ポテンシャルがある人は後にスキルも伸びます。目先の利益にとらわれず、じっくりと育てることにしたのです。
妥協せず、丁寧に選ぶことで社内の雰囲気も良くなり、利益も上がり、離職率も下がりましたね。
経験問わず、クライアントさんの想いやスタッフの想いを自分事として考えられる、素直な人と一緒に働きたいと思っています。

今後の展望や、そのために取り組んでいる内容などをお聞かせください。

今はWebメディアが熱く、利益も出ているので今後も拡大していきたいですね。 また、現状維持では会社も人間も育たないので、会社の規模も少しずつ大きくしていきたいと考えています。
そのためにも社内全体の働き方を見直し、効率性と利益の向上を目指しています。以前は、私が6割くらいの仕事を自らまわしていたのですが、今はスタッフに仕事を振り、定時に帰ることを目標にしています。社長が社内に残って仕事をしていると、定時になっても、スタッフは気を遣って帰れなかったのです。
またアプリで一人一人の作業量を見える化したところ、一つの作業にどのくらいの時間やコストがかかっているか一目でわかるようになり、これまでに比べて作業効率は上昇しました。
今後もより働きやすい環境を作りながら、色々な人と関わり、良い人材を育てつつ、結果を出していきたいですね。

地元岡山で働きたいと考えるクリエイターへ、メッセージをお願いします!

岡山は気候も良いし、食べ物も美味しいし、そこそこ都会という暮らしやすい環境です。そんな暮らしやすい地方を拠点にして、目線を全国に向けるのが、今どきの働き方ではないかと思います。
会社であれ、何であれ、やる以上は上を目指すべきではないでしょうか。
地方暮らしだからといって、ローカルだけに目を向けると、自らの目標が下がってしまうかもしれません。
地方にいても、離れた場所とオンライン取材だってできます。編集もデザインもプログラミングも、県外の方と仕事ができる現代です。しっかり外にも目を向けながら、上を向いていきましょう。

取材日:2023年2月6日 ライター:山口 夏織

株式会社ワード

  • 代表者名:三宅 耕介
  • 設立年月:2010年5月
  • 資本金:500万円
  • 事業内容:編集制作業務、Web制作業務、自費出版業務、ウェブライティング業務
  • 所在地:〒700-0821 岡山県岡山市北区中山下1-11-15 新田第一ビル2階
  • URL:https://word-inc.com/
  • お問い合わせ先:086-221-5663

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