優秀な人材を育成して いつかは、 テレビ局に提案できる 番組制作を
- 名古屋
- 株式会社エヌティーピー 代表取締役 谷水 康彦氏
父の跡を継ぎ社長に就任、経営手腕を発揮し 新聞記者からグループ企業のトップへ
会社設立の経緯を教えてください。
1983年にCBC(中部日本放送株式会社)に在職していた父が当時の東通社長とともに名古屋東通を創設し、名古屋東通の兄弟会社としてエヌティーピーを設立しました。
元から、お父様の会社を継がれるつもりだったのですか?
いいえ、大手新聞社に入社して20年が経ち、現場を離れ編集デスクを任されるようになった頃、父ががんで倒れました。父は、病と闘いながらも仕事を続けていましたが、容態が芳しくなかったため、新聞社を退職し93年に専務として就任しました。 エヌティーピーに入社して2年後、父が息を引き取りました。それから1年半後、社長に就任しました。
社長に就任されて、まず何をされましたか?
名古屋東通の経営悪化を受け、経営再建に着手しました。制作と技術を分け、エヌティーピーの制作部門と名古屋東通の制作部門を一本化し、01年名古屋東通企画という制作専門の会社を作りました。09年にはエヌティーピーが、M&Aでパナ・エンタープライズを吸収して子会社化し、現在の4社のグループ会社になりました。
大胆な改革に対する社内の抵抗はありましたか?
私自身は、父の跡を継ぐ2代目という意識は全くありませんでしたが、社内はそうは思わなかったのでしょう。何もせず、ハンコだけ押していればいいと思っていた人はたくさんいただろうと思いますが、あっという間に、新しい組織を作り上げたので、抵抗はありましたよ。
新聞社への未練はありましたか?
その頃、すでに現場を離れて、人の原稿をみるデスクワークだけだったので、現場を取材して書いていた頃ほど、魅力は感じませんでした。
社長業は、新聞社時代の仕事とは違いましたか?
はい、本当に第二の人生を歩ませていただいたという感じです。新聞社で事件を追っていた一記者から、グループ会社を作り上げて束ねる立場になり、本当に別世界でした。2回の全く違う愉快な人生を歩ませてもらえたのは、周囲の人たちに恵まれたことが大きかったと思います。
時代は刻々と変化・放送業界も変わっていく。
テレビと新聞。マスメディアとしての役割の違いはありますか?
それぞれ大きな違いがありますね。なんといってもテレビは速報性が武器です。新聞は問題点を提起することですね。
放送業界は、今後どう変わっていくと思われますか?
現在、テレビは東京のキー局を通じて全国に放送され、名古屋は準キー局の位置づけで、東京が100なら名古屋は5~10しかありません。今、盛んに言われている地方再生は、東京一極集中の状況から地方が独立していくことで、災害時においてもその必要性は非常に高いです。報道の役割を果たす我々の業界がまさにその一翼を担うと言えます。 この地域であれば、東海3県に加え、静岡、長野、滋賀も含めて1ブロックとし、名古屋がその中心にとなり、番組を作って全国的に発信する時代が来ると思います。東京だけが番組を作って流すという時代は、そろそろ終焉を迎えるのではないでしょうか。番組を流すのは放送局ですが、作るのは制作会社という「発送電分離」の時代になっていくと思います。
では、そうした変化の時代に、御社はどう応えますか?
今、放送の主体はテレビ局にあり、制作会社は局の下請けにすぎません。ところが、現場には、たくさんの制作会社の社員が派遣されています。テレビ局の指示や命令を受けて制作し、その対価として収入を得るだけではなく、資質や能力を向上して、下請け構造から脱皮することが必要です。自分たちを高めることで業界を変えていきたいと思います。
具体的には、どのように変えて行きたいとお考えですか?
いい番組を作るにはお金がかかります。自分たちで、クライアントから資金を集め、いい番組を作り、出来上がった番組をこちらからテレビ局に提案できるようになれば素晴らしいと思います。
いつからそのようにお考えですか?
20年前の新聞社時代に、取材先で居合わせるテレビ局の人と思われた人々、実はその下請けの制作会社の人間であったことをこの業界に来てはじめて知りました。 テレビ局の真のパートナーになるためには、自分で考えて動けるように、我々自身の資質の向上が必要だと痛切に感じました。
物事の情勢は、100年も200年も同じであることはなく、会社も然りです。ふと考えると、なくなってしまったものは、たくさんあることに気付きます。 だから時代とともに物事の価値判断や、状況の変化をとらえ、どう対応するのか。変化に合わせられる人材を育成していかなければいけません。
優秀な人材を確保し、社員教育を重視
社員の資質の向上のため、どんなことをされてきましたか?
まずは、優秀な人材を採用し、しっかり教育することです。社員教育を重視し、3か月に1回、社内報で全社に共通の方針や考え方を知らせます。また毎年6月に、株主総会と同じ内容の説明会を全社員に対して行います。会社の状況や今後の方向性を話し、質問も全部受けます。考えを全社で首尾一貫させるため、目指す方向を示すことが目的です。
優秀な人材を集めるためには?
最近はテレビの業界を志す人が減り、優秀な人材を集める努力が必要な時代になりました。厳しい環境だからこそ、4社一同が1つの同じビルに入りオフィスを構えたことにも意味があります。弊社への入社を希望する人が、オフィスにやって来て「ここで働きたい」と思ってもらうことは大切です。 仕事でも人間でも、大きく見栄を張ると薄っぺらい虚勢になりますが、ちょっとの背伸びは、励みや張り合い、成長要因になります。人もちょっとした背伸びをしないと、大きくなったり前に進んだりできないでしょう。
変化に合わせられる人材とは?
“ホシのある人”だと思います。説明は難しいですね(笑)。“ホシのある人”を見抜けるのは、“ホシのある人”だと思うので、そういう人がたくさん会社にいれば、会社は隆盛を極めることができると思います。
目立つパフォーマンスではなく、平凡さの中に光るものがあったり、どこか惹かれる何かがあったり、それがその人の持つホシなんだと思います。 人の話を聞く人は、人の話に興味を抱いて吸収していくので、周りに自然と人が集まって、情報も集まって、どんどんホシが輝いて大きくなっていきます。だからその人自身は、最初、光っていなくても、どんどん光るようになっていくのかもしれませんね。 逆に人の話を聞かない人は、どんどん陰ってきます。「でも」「しかし」の否定から入るから、誰もその人に話をしなくなる。仕事でも最初から「無理」というと「じゃあ、もう頼まない」となりますね。物事はまず肯定論から入り、あとから問題点は定義していくことが大切です。問題点を先にあげたら、ほとんどが無理であることが多いからです。 失敗したときも、私はまず平身低頭して謝ります。理由は聞かれてからです。結果が問題なのですから。
仕事は仲良しクラブではいけない。
組織の長として、リーダーシップについては、どのようにお考えですか?
考えをはっきり言うから、周囲は怖いと思っているようですが、はっきり答えを出しているように見えても、実際はそうでもないんですよ。 1人で考え抜いて、決断を下さなければならない立場は孤独で、悩み、揺らぎ、不安もあります。でもリーダーは強くなくてはならないし、厳しいことを言わざるをえません。組織には怖くてピリッとした存在が必要です。
今は、叱るよりも、褒めて育てるという社員教育をするところも多いですが。
会社は常に仲間と協力して仕事をする場で、みな自然と仲良くなりますが、仕事はあまり仲良しではいけない部分もあります。上司から部下に思ったことはビシビシと言わなければいけないし、下も上に対して正しいと思ったときは言わなきゃいけません。仕事上は仲良しなのに、職場を離れると悪口を言うというのはおかしいと思いますね。仕事のときこそ、本当のことを言い合うべきです。「和を以て貴しとなす」も正しいです。ただ、本当の和を保つためには、本当のことを言わなければいけない。その上で本当の和ができる気がします。
取材日:2016年2月29日 ライター:望月佑香
株式会社エヌティーピー
- 代表者名:代表取締役 谷水 康彦(たにみず やすひこ)
- 設立:1983年1月
- 資本金:20,000,000円
- 事業内容:ラジオ・テレビ放送番組・コマーシャル番組・イベントおよび業務用録音、録画などの企画制作業務。ラジオ・テレビ放送用設備の整備、調整。テレビ難視聴の整備、調整および有線放送に関する業務。派遣法による放送関係人材派遣。広告代理店業務など。
- 所在地:461-0005 名古屋市東区東桜2-10-10 東桜ビル3階
- URL:http://www.n-t-p.co.jp/
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