なんの保証もない、 でも覚悟さえあれば 自分のしたいことが なんでも試せる仕事。

東京
株式会社SUGOI 代表 秋葉陽児氏
 
今回は株式会社SUGOIにおうかがいしました。コマーシャル映像の企画制作のほか、パフォーマーとコラボしての「プロジェクションライブ」などの活動を精力的に行っている同社。その活動と今後の展開について、代表の秋葉陽児さんにお話をおうかがいしました。

「自分にもできそう」を実現してきたフリー時代

株式会社SUGOIはどういった経緯で設立されたのでしょうか?

僕はもともとフリーのCMディレクターとして6、7年ほど活動していたんです。ですが、株式会社ADDIXの酒井大輔社長と出会ってアドバイスを受けたことがきっかけで、法人化して営業活動にも力を入れていくことを決意しました。SUGOIがADDIXの関連会社となっているのも、酒井社長に設立の際にご助力をいただいたためです。 元から計画的に法人化を考えていたわけではなく、流れで会社を作った感が強いので、僕はこれを「できちゃった設立」と呼んでいますけどね(笑)。

フリーの間は、どのような制作活動をされていたのですか?

職種で言うと「映像ディレクター」なのですが、実際はディレクションだけではなく、一人でなんでもやっていましたね。 僕の活動の原点は「これくらいなら自分でもできるんじゃないかな?」という発想なんです。だから、誰かに正式に師事したということはあまりなくて、身近なクリエイターの技術を見て覚えたり、一人でいろいろ試して実行したりということがほとんどでした。

独学で映像制作を覚えたということですか? 大変ではありませんでしたか?

そう言われることもあるんですが、実際にやってみるとそうでもなかったんですよ。 また今にして思えば、時代に助けられたという面もあるかもしれません。僕がフリーとして活動し始めた時期は、ちょうどパソコンの映像編集ソフトが充実し始めた頃で、自宅にいながらにして映像が制作できるようになってきていたんです。 少し前であれば、インフェルノ(デジタル合成システム)などのプロ用機器でなければ作れなかったような映像でも、現在はノートパソコンが一台あれば制作できます。おかげで制作費用が抑えられるだけではなく、一人で心ゆくまで実験したり遊んだりできたのは幸いでした。

お一人で一通りの作業をこなされていた中、法人化に踏み切った理由はなんですか?

一人でできること、一人で思いつく発想には限界があったということですね。そこでまずは、今もSUGOIの中心メンバーとして活動してくれている城台直人と一緒に「MANUKE」という映像制作ユニットを結成したんです。 二人なら生まれる発想も単純に倍になりますし、何より、一人だったら途中で諦めてしまうような場面に出くわしても、二人なら「相方に怒られるからちゃんとやらなくちゃ」という気持ちが生まれますからね(笑)。 そんな風に城台と二人で二年ほど活動を続けていた中、ADDIXの酒井社長と出会ったわけです。

新感覚のパフォーマンス「プロジェクションライブ」

SUGOIでは、プロジェクションを使った面白い試みもしていると聞きましたが?

「プロジェクションライブ」 ですね。 僕たちのユニットMANUKEとパフォーマーとのコラボレーションで、プロジェクター映像とパフォーマンスをシンクロさせたライブを展開しています。

特に、ダンスパフォーマーのKATSUMIさんが見せる、映像と完全にシンクロしてのパフォーマンスは海外でも高い評価を得ています。そのオリエンタルな魅力もあってか、ロシアなどでの公演も好評でした。

KATSUMI.mov from SUGOI Inc. on Vimeo.

また、パフォーマーやサウンドクリエイターに僕たちMANUKEも加わっての*Asterisk(アスタリスク)というマルチメディアユニットも結成しており、こちらもフィンランドのダンスフィルムフェスティバルなど海外のイベントでも活躍しています。

FIGURE / *Asterisk from *Asterisk on Vimeo.

これらのライブは、チケット販売などは行ってはいないのですか?

今のところは各国のイベントに招待されたり、ゲストとして参加したりしているだけですね。一回あたりの公演時間は5、6分で、単独で長時間の公演を任されるほどのコンテンツ数はありませんから。 ですが、いずれはもっとコンテンツを増やしていって、大々的に単独公演もできるようになっていったら嬉しいですね。サーカスのような魅力あるステージを作り上げることを目標に、パフォーマンスのジャンルやコンテンツの量を増やしている最中です。

では、これからもパフォーマーの活躍を支援されていくのでしょうか?

パフォーマーを応援していくのはもちろんですが、それとは別に、もっと観客の皆さんが気軽に参加できるライブもできないかと模索しています。 僕は「スター不在でも楽しめるもの」を追求していきたいんです。突出した誰かのキャラクターやカリスマ性に頼るのではなく、誰でも参加できて、誰でも楽しめる制作物の実現が理想ですね。 だから僕たちMANUKE自身も、あまり突出して個人で目立とうとは思ってないんです。むしろ、それを戒めるような意味で「間抜け」という締まらないユニット名にしてみました。 本当は社名も「株式会社MANUKE でもよかったのですが、周囲の人が「間抜けさん」と呼ぶのを遠慮されているようだったので、あえて逆を突く意味で「凄い」なんて社名にしてみたんですよ(笑)。

新たな広告の可能性。Kinectを活用した参加型の三次元広告

観客の参加といえば、新しい広告の試みもされているそうですが?

はい。マイクロソフトのゲームデバイスであるKinectを利用して、スクリーンの中の映像を操作できる広告表現を模索しています。 下記のサンプル映像を見ていただければわかりますが、「スクリーンの前で手や体を動かすと映像の人物の顔が変化する」 というように、お客様が広告を操作できます。

Untitled from SUGOI Inc. on Vimeo.

これを利用すれば、広告を「見る」だけではなく「参加する」という、新たな表現や楽しみを提供できるのではないかと期待しています。 また、こうして立体的に体を動かす広告を展開することによって、今までは映像という平面の表現しか存在しなかった場面に三次元的な空間演出を加えられるようになることは大きな変化だと思いますよ。

「誰もが参加できるもの」の理念は、そこでも生きているんですね。では最後に、クリエイターを目指す皆さんへのお言葉をいただけますか?

僕はお笑いの世界が好きなのですが、「クリエイター」という気取った呼称に気負ってしまっている人には、「クリエイターなんてお笑い芸人と一緒だよ?」と言ってあげたいんですよ。 どういうことかと言いますと、「みんなが憧れるほどカッコよくもないし、苦労も多い世界だよ」と(笑)。 映像作家やディレクターなんて言うとなんとなく凄そうですが、実際は職業とすら言えないかもしれません。なんの保証もない上に、失敗すれば全て自分に返ってきますからね。ハイリスクハイリターンという点でも「芸人」に近い仕事だと僕は思っています。 ただ、それらを覚悟した上であれば、自分のしたいこと、できることを何でも試せる仕事であるのも確かです。今の映像の世界はテクニカルな部分が牽引している面が強いですが、最後に生きるのはやはり作家の演出論や創造性だと思います。お互いにがんばりましょう。

取材日:2012年10月29日

株式会社SUGOI

  • 代表者:秋葉陽児
  • 事業内容:
    • ビデオ・インスタレーションの企画、制作、運営
    • コマーシャル映像の企画、制作
    • 映像を活用したイベント等の企画、制作、運営
    • WEBメディアの開発、デザイン、制作、運営
  • 所在地:〒107-0061 東京都港区北青山3-6-23 青山ダイハンビル10F ADDIX内
  • URL:http://www.sugoi.sg/
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