ふとした時に感じる、美しいもの
沖縄県
ライター
Jun Nakahama
仲濱淳氏
例えば秋のすっきりとした空の青さや、全く紅葉しない青々とした樹木。季節感を無視したかのような鮮やかな花の色。沖縄では当たり前の、こんな秋の風景に、最近とんと心を動かされなくなってしまった。移住したときには全てが新鮮だったし、フリーランスのライターを始めたころだって、取材を通じて聞くもの、見るものは驚きに満ちていたはずなのに。慣れとは怖いもので、鈍化した心の方が普通なのだと思い込み始め、ますます心も頭も硬くなる。
このままではいけない、と思いつつ、取材へ向かった。そこは海沿いの丘の上。私の住む市街地よりも、植物は生き生きとしているし、虫も多い。海沿い恒例の強い風も心地よくて、空気は軽やか、湿度は低め。いいじゃないか。なんだ、素敵じゃないか。凝り固まった心が、少しだけ融解した気がした。
そう、こんな、ふとした美しさこそ、今の私にはちょうどいい。あまり刺激的でなくていい。日常の中に感じる、ほっと心が和むものや、瞬間。これに気付かなくなったら本当に終わりだけど、私はまだ大丈夫みたいだ。「いつでも、どこでも、感性は磨ける」。先日会社伝で取材したデザイナーの言葉が、今、腑に落ちた。
プロフィール
ライター
仲濱淳氏
雑誌・WEBマガジン編集職を経て、3年前よりフリーランスライターとして沖縄県で活動中。アラフォーだけどいつまでも厨二病が抜けないのが悩み。