ドイツでのクリスマス
ドイツの冬は暗くて寒いです。
留学のため初めてドイツで冬を迎えた時、どんよりとした雲が空を覆い、1週間も太陽を見ることがない典型的なドイツの冬空を知りました。夜が1年で最も長い冬至を迎える12月になると、暗さはピークを迎えます。8時半頃大学へ向かう電車の中で日が昇りはじめ、16時にはすでに外は真っ暗。冬枯れた街並みは、人の往来も少なくひっそりとしています。
ドイツ語も上手くしゃべれず友達もいない、ドイツの食事も合わないし社会のシステムもわからない。そんな自分は、ドイツの冬という闇の底で、今まで経験したことがない孤独に襲われました。人と会話らしい会話を交わすことがない日が何日も続き、ウィンターブルー(冬季うつ)に陥りかけていたように思います。
そんな中、クリスマスがはじまったのです。
閑散としていた通りにイルミネーションやツリーが飾られ、突然、街に華やかさが溢れ出しました。広場のクリスマスマーケットでは、食べ物やオーナメントの屋台が並び、簡易遊園地でスケートに興じる子供たちを親がホットワインで体を温めながら見守っています。
ドイツ語で「es weihnachtet(クリスマスしている)」という表現がありますが、クリスマス一色に染まった街並みは、自分にとって暗闇の中に現れた光のように見えました。そしてその中に身をおいて、幸せそうにしている人たちを眺めていると心に暖かい火がともっていきました。
イエス・キリストは2000年前、苦境にあったユダヤの民にとって救いをもたらす存在であったそうです。キリストの愛の教えは、ヨーロッパ全土を覆い、建築・芸術・音楽などクリエイティブな領域での基礎ともなってきました。
今日(こんにち)のドイツのクリスマスは、より家族で祝う行事のようになっており、メシヤの生誕を祝うという元来の意味は薄れてきているかもしれません。でも、大人も子供も胸をときめかせるキラメキに彩られた、愛する人との結びつきを強める大切な機会であることは変わらないように思います。
毎年クリスマスを迎える季節になると、キリストが希望の光なんだと実感したドイツでの最初のクリスマスが思い出されます。