世界は近くなったはずなのに…
インターネットで世界中がつながるようになり、どこで暮らしていても、地球の裏側の情報まで、リアルタイムで得ることが可能な時代になった。
夜と朝、夏と冬の違いはあっても、日本にいながら同時刻に2016年のリオ五輪の熱戦を楽しむことができたし、
海外に住んでいる留学中の友人や恋人、家族とも、ネットを使えば何時間でも、料金を気にせず顔を見ながら話ができる。
30年前では予想もしていなかったことが今、起こっている。
世界が近くなる一方で、便利なIT社会とは別のところで、戦争や飢え、迫害に苦しむ人々も数多く存在する。
例えば、米国での安全な暮らしを求め、危険を冒しても中南米から小さな子供を連れてやってくる家族、
終わりの見えない戦争の中で命を落としていくシリアの人々…。
恵比寿の東京都写真美術館で開催中の「世界報道写真展2019」には、そんな社会の様々な問題を切り取った写真が数多く展示されている。
ネットの発達により世界は身近になったはずなのに、遠い国で起こっている社会問題への関心は薄くなっている。
自分にとってうれしいこと、利益になる情報は簡単に手に入りやすくなった一方で、
自分たちさえ安心・安全で暮らせれば、よその国の人は犠牲になってもかまわない。
そんな利己的な空気さえ感じてしまう。
報道写真は、幸せアピールで「いいね」を増やすインスタグラムとは真逆の辛い写真が多いけれど、
ここに展示されている写真は、どれも心に刺さる真実を写した写真ばかりだった。
スポットニュースの部で大賞を受賞したのは、米国とメキシコの国境で、監視員の取り調べを受けているホンジュラス人の母の横で泣き叫ぶ幼児の姿を写した一枚。
現場の緊迫した状況や恐れる子供の泣き声が聞こえてきそうな写真であった。
「世界報道写真展2019」は東京では8月4日までの開催ですが、そのあと、大阪、滋賀、京都、大分でも見ることができます。
https://www.asahi.com/event/wpph/