映像2021.11.25

NHK朝ドラ「おかえりモネ」完結!被災地に寄り添うというコンセプトについて思うこと

東京
フリーランス記者・作家
スーパーいわちゃんねる!クリ目版
岩崎

震災から10年目の節目となる2021年、宮城県北の登米・気仙沼を舞台にしたNHK朝の連続テレビ小説「おかえりモネ」が先月末に完結しました。

主人公のモネが東日本大震災の経験から「好きな人たちのために自分にできること」を模索していくというストーリー。しかもヒロインはNHKの秘蔵っ子と名高い清原果耶さん! 制作統括の吉永証チーフプロデューサーは「震災で傷ついた方たちの気持ちに寄り添う」ことを目指して制作したと語ってくださり、やっと宮城にもスポットライトが当たった! ばんざーい! ……という訳には、簡単にはいきませんでした。

というのも、宮城県は大河ドラマ「独眼竜政宗」(1987年)以降、これといった地域を代表する連続ドラマが制作されていませんでした。一応、2004年に「天花」という朝ドラがありましたが、諸事情により県民の多くはその存在を忘れてしまいました。放送前、SNS上で朝ドラファンから「現代モノは視聴率が伸び悩む傾向がある」と言われ、作品(特にストーリー)を不安視する宮城県民も少なくありませんでした。

東日本大震災以降、関連の映像作品が全くなかった訳ではありません。単発ドラマ「3.11 その日、石巻で何が起きたのか~6枚の壁新聞~」「河北新報のいちばん長い日」が2つありましたが、どちらも報道関係からの視点だったので被災地を俯瞰している印象を受けました。その後、岩手を舞台とする朝ドラ「あまちゃん」(2013年)と、福島の「八重の桜」(同)が話題になり、宮城的には前後の県になんか“先越された感”が否めない……。いや、2013年と言えば楽天イーグルスが初優勝した年ですから、全く何もなかった訳ではありませんが……。

 

そんな状況を踏まえた上で、県民みんなが今回のドラマ化でドキドキしていましたが、いざ放送が始まってみるとそんな心配は吹っ飛びました。

モネのパートナーとなる菅波先生の不器用なコミュニケーションがSNSのハッシュタグ「#俺たちの菅波」が盛り上がる一方で、母が津波で行方不明になった及川親子の苦悩は涙なしには見られない……。

他にも登場人物たちが宮城に住む人々の気持ちを代弁してくれているようなシーンが多々見受けられ、散々「地震!津波!未曾有の被害!被災地ってかわいそう!」と言われ続けてきた東北に、作品を通して向き合ってもらえたとしみじみ思いました。ありのままの姿を正確に捉えて伝えるって、意外と難しいことなんですよね。

個人的には、現実のまちと比較してやや違和感を感じる部分はあったものの、その誤差は微々たるものだったし、逆にフィクションでありながらよく現実に寄せてくれたなと思っています。都会の人たちに、あの世界はどんなふうに写っていたのか気になります。あんな世界が現実にあるって思いますか? それともやっぱり地方や田舎ってある種のファンタジー?

加えて、地方あるあるなやりとり・考え方や捉え方にプラスして「震災関連で、そういえばそういうのあったな……」という、被災した当事者たちも当時を回顧できるような構成にもなっていたのが、宮城県出身・練馬在住としてありがたいなぁと思いました。

 

象徴的だったのは、他の幼馴染たちは津波を見たが、モネは見ていないというだけで壁ができてしまったこと。

当時の被災地では、被災者同士の間で格差のような感覚がありました。「○○さん家は全壊だって。ウチ半壊だもの(だから弱音吐いてられないよね)」「津波で家が流されて避難所暮らしだけど、ウチは家族は無事だったから。▲▲さんなんか、お子さんの行方がまだわかってなくて……」といった具合に、どんどんネガティブな比較をしてしまう負のスパイラルがありました。みんな被災者で、それぞれが大変なのにね。

その感覚は、当時の現地を知る人じゃないとわからないと思います。そこを捉えてくれ、作品の中で表現してくれたことには感服しました。

 

衝撃を受けたのは、及川家のお母さん・美波さんが「位牌を取りに自宅に戻った」という話。その後、南さんは津波に呑まれて行方が分からなくなっていますが、現実でも位牌や銀行の通帳と印鑑などを取りに自宅に戻ってそのまま帰らぬ人となった人も少なくありません。位牌を取りに行かなければ! ご先祖さま大事! という地方・田舎ならではの感覚が、ピンとこない人がいるかもしれません。私にはちょっと想像できます。だからそのような行動を取った方々を責めることはできませんし、だからこそ余計に悲しいです。

このような話は「千年に一度の大災害」という大枠から、それぞれの家庭・個人というミクロな視点に立った時にはじめて見えてくるものであり、その辺をきっちり抑えてくださってる点にちょっと感心しました。

 

また、細かい話ですがモネと幼馴染たちの訛りが出るタイミングについても“わかってるな〜感”がありました。

皆さんの身の回りに、こんな人はいませんか?初対面の時は「あれ?東北出身と聞いてたけど、そんなに訛ってないな」と思ってた人が、親しくなるにつれて訛りが激しくなり、酒呑んだ日にはちょっと何を言ってるか分からなくなることが……。これ、結構東北人あるあるなんです。東北人は(一部を除いて)普段なるべく標準語を喋ろうと心がけていますが、心を開いている相手には思いっきし訛る。

特にわかりやすかったのは幼馴染の1人である及川亮ことりょーちん。実は彼は本音で喋っている時は訛り、嘘をついている時は標準語なんですね。そこに注目して作品を見返してみると新たな発見があるかもしれません。さーで、あんだだぢにわがっかなー?(岩崎も急に訛るよ、ビックリされるよ)

 

長くなってしまいましたが、まだまだ書きたいことはたくさんあります。

俳優・スタッフ・関係者の皆さまおよびNHKには、素敵な作品を作っていただいて感謝しかありません。本当にありがとうございました、そしてお疲れ様でした。

 

※サムネの画像はこちらからお借りしました。亀島のモデルになった気仙沼・大島で以前撮った画像が見つからなかった……。無念。→http://k-ships.com/photo_service/

プロフィール
フリーランス記者・作家
岩崎
フリーランス記者・作家。メディア関係の仕事を経て、書いて撮って編集・デザインして発信できる「平面系マルチクリエイター」を目指す平成元年生まれ。巳年・蠍座の女。本家ブログ&連絡先は「スーパーいわちゃんねる!」で検索。宮城県出身、東京都在住。今月誕生日でした。本厄です。

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