WEB・モバイル2020.12.04

「ハーバルセラピスト」になる(番外編)

Vol.7
編集者・シニアハーバルセラピスト (JAMHA認定)
メディカルハーブライフ
二橋彩乃

 

ハーバルセラピストの資格をとるために通っていたスクールは、表参道にあった。

表参道には、ハーブやアロマの専門店やサロンが多く立ち並ぶ。

授業の前後でそんな専門店に立ち寄っては、ハーブを試飲したり、
商品の成分表を見たりして、学んだ知識を忘れないよう努めていた。

何度も通ううちに店員さんにも顔を覚えられ、
商品について、使っている植物の成分から詳しく作用を教えてもらったり、
サロンで使用しているアロマのブレンドレシピを、こっそり教えてもらったりした。

植物に限ったことではないけれど、自分が好きなものを人に勧めるのも、勧められるのも、
どうして好きになったのかを聞くのも、本当に楽しい。

ハーブやアロマの専門店には、やっぱり植物好きが多く、有資格者も多い。

商品がずらりと並ぶ中、その人の悩みを解決できそうな植物をピタリと探し出し、
有用な植物成分が生かされた商品や、オススメの使い方を提案する。

そんな店員さんとの会話はそのまま、ハーバルセラピストとして必要な「カウンセリング」の勉強にもなっていた。

接客上手で知識も豊富な店員さんが、ほかのお客様にどのように植物について説明するか、
こっそり聞き耳を立ててみたり、
なるべくお店が混雑しない時間帯を選び、なかば取材のような形で、
「植物と人生」というタイトルの本ができそうなくらい、
さまざまな店員さんから植物にまつわるストーリーをたくさん聞かせてもらったりした
(ちょっと迷惑な常連客だったかもしれない)。

ハーブは日本では雑貨扱いで、医薬品ではない。効果効能もうたえない。
それに、ハーバルセラピストは、それがあれば食べていけるというような強い資格でもない。

しかし、メディカルな分野を学ぶため、
身体の構造や各臓器の機能など、しっかり覚えなくてはいけないことも多い。

だからこそ、産科や介護の現場でアロマが取り入れられたり、
私自身がそうだったように、香りや成分でじっくり癒され、セルフケアに役に立てたりもできる。

それでも、授業が進むにつれ、難易度も上がり、
ついつい眉間にシワを寄せがちだった。

そんなとき、授業の最後に先生が言った。

「試験までの追い込みの時期や勉強に疲れたときこそ、もっと楽しく植物を『使う』ことに目を向けてね。
『なんでこんなにたくさん覚えなきゃいけないの』よりも、
『あの人にこうやって使ってほしいな』とか、そういう気持ちが大切」

教室の空気が少しゆるんで、一緒に学ぶ仲間みんなの肩の力が、抜けたのを感じた。

今はオンラインの授業がメインになっているが、
こんなふうに、さりげなく先生に助けられ、仲間の存在を感じつつ、
専門店での店員さんの話にワクワクしながら学べたからこそ、試験までの日々を乗り切れたと思っている。

(続く)

プロフィール
編集者・シニアハーバルセラピスト (JAMHA認定)
二橋彩乃
2つの出版社でデザイン、アート、生活実用など多ジャンルの編集経験を経て独立。独立後の仕事に『マンガで実用 使える禅』(編集・執筆/朝日新聞出版)、『美術館&博物館さんぽ 首都圏版』(編集/ぴあ)、雑誌「セラピスト」(取材・執筆/BAB)や、占い系のwebメディア記事執筆など。ハーブの魅力にとりつかれ、ハーバルセラピスト、シニアハーバルセラピスト、メディカルハーブコーディネーターと3つの資格を取得(日本メディカルハーブ協会認定)。

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