伝統工芸「絞り染め」
ご縁があって、着物作家 樋熊哲也氏とお話をする機会がありました。
新潟県十日町市で40年以上、手描き友禅、草木染、ロウケツ染、絞り染などの技法を研究されている職人さんです。
元アナウンサーの小林麻央さんの結納衣装や、麻央さんの結婚式で姉の麻耶さんが身につけていた振り袖を作られた方でもあります。
このときは様々な技法の中でも特に「絞り染め」の技法についてお話を伺いました。
絞り染めとは
日本では奈良時代ころから使われてきた染色技法のひとつ。
布の一部を糸で縛ったり縫い止めたり折り重ねたりした状態で染めることで布が染まらない部分を作り、模様やデザインを作る技法です。
ギュッと縛って布に圧力をかけることでその部分が立体的なシワ(しぼ)になり、それもデザインの一部として評価するものもあります。
糸の掛け方やくくり方で様々なしぼやデザインを表現し、有名なものでは「京鹿の子絞り」、「有松・鳴海絞り」などがあります。
布を縫い止めたり糸でくくったりするのはもちろんすべて手作業。
1mmのずれも許されず、着物1枚分の反物にしぼりの加工を施すのに1年以上かかることも珍しくないそうです。
熟練の職人でもわずかな気温や湿度の変化による染めムラや絞りムラが発生する可能性もあります。
数年単位で布を絞り、染め、広げてみるまで成功か失敗かもわからないというシビアな世界です。
1つの技法を身につけるのには少なくても10年以上の修行が必要とのことで、1人の職人がたくさんの図案を作るのは難しく、デザインによっては何人もの職人での共同作業となることも。
後継者がおらず、職人がいなくなるとともになくなってしまった技法や図案もあるそうです。
奈良時代から連綿と伝わってきた伝統技法。なんともったいない。
樋熊氏の作品もいくつか見せてもらいましたが、もうそれはそれはため息が出るほど美しい。
特に辻が花の絞り染めが素晴らしかったです。
お話を伺った上で拝見すると、気の遠くなるような時間と手間と技術がかかっているということがよくわかります。
※写真をとっておらず、お見せできないのが残念です。写真は小山私物のごく普通の絞りの浴衣です。
しぼ感、わかりますでしょうか。
鹿の子絞りかしら?母が嫁入りの際に祖母に持たせてもらったという40年ものの浴衣です。
今の時代に着ても古臭さはありません。
なんとなく「絞りの着物=子供向け・若い人向け」という勝手なイメージがあったのですが、そんなイメージは全て覆りました。
着物はとても高価なイメージですが、作る過程を知るとその価格にも納得がいくというものですね。
ご興味がある方はぜひ樋熊氏のHPで作品をご覧になってみてください。
樋熊哲也氏公式HP