新型コロナウイルスにおける校正の仕事の影響
新型コロナウイルスの影響で、デザイナーさんやライターさんは作り直しや、完成したものが公開の延期・中止になったという方もいらっしゃると思います。
校正の仕事はというと、ついこの前チェックしたばかりのものが内容の差し替えが発生してチェックし直したり、時間をかけてチェックしたものが掲載取り止めになったりと、この仕事にも影響が出ております。
また、私の校正の仕事では主に誤字脱字のチェックや、ちょっとした内容の正誤をチェックする校閲作業などをやっていますが、コロナの影響がでてからは「今の状況でこの表現を使うのは適切ではないのでは?」というチェックも多くなりました。
この「適切かどうか」のチェックはあきらかな間違いとは違い、文章自体は間違っていないので校正では「間違い!赤字!」という記入はしていません。疑問出しという形で「この表現は使用して問題ないでしょうか?」といったことを校正紙に記載してました。
適切か不適切かは制作サイドやクライアントが判断するのですが、事前に彼らからNG表現の指示があることはほとんどないので、自分の知りうる情報をもとに「どの表現が適切ではなさそうか」を見つけ、疑問出しをしていかなくてはいけません。
自分が知っている情報元として、SNSでニュースや公的機関からの情報を毎日見ていたので、それが役に立ちました。
「ニュースなど世の中の情報を常にキャッチしていないと仕事ができない」と改めて実感しましたね。
そんなコロナ禍の中で「この表現はちょっと…」と感じて実際に疑問出しをしたところ、取り消されることになった表現の例を紹介します。
・お出かけに〜
国や地方自治体から外出を控えるよう呼びかけられているこの状況下で、お出かけをすすめるようなことは適切ではないですね。
主に、お菓子など小包装にされた商品では「持ち運びやすくて、お出かけに持っていくのに便利!」といったものをよく見かけました。
また、春になって暖かくなりお出かけをテーマにした訴求も増えてくるため、レジャーグッズやピクニック用品などの雑貨には「お出かけを楽しもう!」だったり、衣料品には「お出かけにぴったりの装い」だったりと、さまざまなところに頻出しています。
・大人数で〜、みんなで集まって〜
「密閉・密集・密接」を意味する「三密」という言葉が誕生し、こちらも国や地方自治体から避けるように呼びかけられています。この状況下で「みんなで集まって楽しもう!」と言うのも適切ではないですね。
主に、大容量パックのおやつなどで「大容量だからみんなで食べられる!」といったコピーに多く見かけます。本来ならば3月は春休み、4月・5月はゴールデンウィークと子どもたちが集まって遊んだり、大人も花見やBBQなどをやったりと何かと集まることが多い時期なので、「みんなで集まって楽しもう!BBQセットや大容量おかしなどを揃えました!」といった表現などがたくさん使われるのですが、今年はすべて使用されなくなりました。
一見なんの変哲もない文言で、それくらいすぐ見つけられるのでは?と思われるかもしれませんが、数あるコピーの中のいろいろなところに書かれていて、しかも文章自体は間違ってはいないので……うっかりすると見落としそうでいつもよりもヒヤヒヤします。
つい先日では、サザエさんでGWにお出かけする話が再放送され炎上してしまったというニュースもありましたね。
現実ではないアニメのこととはいえ、多くの人が「みんなで休みの日に外出する」という内容を敏感に感じとっていたと伺えました。
この再放送がどういった経緯でなされたのかは不明ですが、サザエさん炎上事件でこの「適切がどうか」チェックは今の状況ではいつも以上にしっかりやらないといけないなと考えさせられました。
コロナの状況が長くなってきたので、最近では校正にあがる前に制作サイドの方で修正してくれて、だいぶ上記のワードは見かけなくなりましたが、他に別の適切ではないかもしれない表現が潜んでいるかもしれないので油断はできません。