果てしなく美しい、絵画のようなゴシックロマンスの世界
その映像美に溜息。中世ヨーロッパを舞台に殺人や陰謀、超自然的恐怖が描かれるゴシック・ロマンスの世界を遺憾無く表現している映画四選
クリムゾン・ピーク(2015)
監督:ギレルモ・デル・トロ
あらすじ
二十世紀初頭NY。父と二人暮らしのイーディス・カッシング(ミワ・カシコウスカ)は小説家を夢見て執筆活動に励んでいた。ある日、没落貴族の男トーマス・シャープ(トム・ヒドルストン)が現れ彼女の小説に興味を持ち、イーディスと惹かれ合う。ある日イーディスの父が謎の死を遂げた為、身寄りがなくなったイーディスはトーマスの大屋敷アラデール・ホールでトーマスとトーマスの姉と共に暮らす事になった。元々霊能力を持つイーディス、アラデールの屋敷でも不可解な物音や存在に悩まされる。更に自分の身体が徐々に衰弱していっている事にも気づき始めた。
「雄大な敷地に飲み込まれること無く、壮大に聳え建つアラデールの邸宅がとてもゴージャス。没落貴族なゆえ、屋敷の屋根が修理できなく雪の日には屋根から雪がひらひらと舞い降りる。その姿はまるで家が白い息を吐いているかの様に美しい。歪んだ愛情や、生い立ち、様々な感情に縛られて生きていく屋敷の人たち。しかし真実の愛を知った時、その暗闇からやっと解放されるのだ。」
スリーピー・ホロウ(1999)
監督:ティム・バートン
あらすじ
17世紀、NY郊外にスリーピー・ホロウ村で2週間の間に3人が首を切断される首切り殺人事件が発生する。NYからイカボット捜査官(ジョニー・デップ)が派遣されることになった。当時のNY市警は拷問による自白が日常茶飯事。もっと公正な裁判や科学的捜査を要求していたイカボット捜査官は市長に不興をかっていた為この事件を解決するように命じられていた。
「クリスティナ・リッチのコケティッシュさとジョニー・デップ扮するイカボット捜査官が臆病でビクビクしながら首を調べるところがコミカル。それとは対照的に馬に颯爽と乗りこなす首なし騎士が、首があっても無くてもカッコイイ。スリーピー・ホロウ村のダークカラーのグラデーションの木々、街並みの色彩は静かで落ち着いていて心の癒し」
ドラキュラ(1992)
監督:フランシス・F・コッポラ
あらすじ
14世紀ルーマニア・トランシルバニア城の城主であるドラクル(ゲーリー・オールドマン)はトルコ軍との戦争に出征する。城で待っていた最愛の妻エリザベータ(ウィノナ・ライダー)はそこで夫が戦死したと虚偽の知らせを真に受けて投身自殺する。帰ってきたドラクル。悲しみの中、司祭から自ら命を立った者の魂は神に救われないと言われ、神への復讐を誓い血を糧に生き永らえる吸血鬼と化す。
「亡き妻の面影を求めて愛の渇きに彷徨うドラキュラ。亡き妻と瓜二つの女性ミナと出会う。そんなミナも救われない魂を宿し何度も生まれ変わっては愛の渇きに彷徨う、神から見捨てられた女だった。二人の深くも悲しい恋愛劇が始まる。ドラキュラの妻をひたむきに愛する姿に心打たれる。衣装は石岡瑛子、独特のフォルムが上品さと優美さ妖艶さを兼ね備えていて芸術的。」
メアリーの総て(2018)
監督:ハイファ・アル=マンスール
あらすじ
19世紀イギリス。小説家を夢見るメアリー(エル・ファニング)は稼業の本屋を手伝いながら仕事の合間に亡き母の墓場まで行き怪奇物の本を読むのが日課だった。ある邸宅の読書会で異端の天才詩人と噂されるパーシー・シェリー(ダグラス・ブース)と出会う。パーシーは妻子持ち、しかし二人は強く惹かれ合駆け落ちをする。道ならぬ恋と時代に翻弄されながらメアリーはフランケンシュタインを書き上げる。
「古典ホラーの傑作、ドラキュラと知名度を二分するフランケンシュタインの作者が18歳の女性だった事にまず驚き。そしてフランケンシュタインが産み落とされる波瀾の出来事が16歳〜18歳のたった2年間の出来事と言う事も驚いた。無一文で妻子ある男と駆け落ち、借金に追われ子も亡くした。それでも”私の選択は私が作った。後悔はない”と強く生き抜いて行くメアリーに励まされる。そして苦悩と孤独の中フランケンシュタインを産み落とす。フランケンシュタインはメアリーそのものなのだ。」
終わりに
少し観ただけでもその映像の美さにうっとり。恐怖からくる荒々しくも繊細なゴシックでロマンスな世界を楽しんで。