「すべての道はローマに通ず」…551段、登ったよ!
自由に海外へ旅行するのがここまで難しくなる時代が来るなんて、誰が予測したでしょうか。
かつて、私は、海外旅行が大好きで、ヨーロッパ、アメリカ、アジアの国々へよく旅しました。ニュージーランドには1年、暮らしました。
もうなんだか昔話を想い出すような気分ですが、若い時に様々な海外旅行を体験できた私は、とても幸せとしか言いようがありません。
多くの国がロックダウンする中、海外へ行けない今の若い人たちは、色々なチャレンジを制限され、本当につらいですよね。思考を大転換するしかない状況。
こんな時だから、あえて、ひと昔前に私が体験した旅のひとこまをご紹介します。
約20年以上前になりますが、憧れのイタリア旅行した時のこと、初めてのイタリアに大興奮していたのを憶えています。
下調べは、適当にしかしてなくて、あまり予習しないで無邪気な感じでイタリアに到着。
ローマからフィレンツェ、ヴェネチアと辿ったのですが、どの街も素晴らしすぎて甲乙つけがたい印象でした。
ローマでは、サン・ピエトロ大聖堂の「クーポラに登りたい!」と、それだけははっきりとした願望でした。クーポラとは、大聖堂の一番上の屋根部分を覆う半円になっているところを指します。
私は、単純に高い所からの眺望が大好きなので、クーポラに登ることを旅のプランのひとつとして漠然とピックアップしていました。
旅の大きなテーマは、美術館巡りだったので、日中は美術館やお買い物に
時間があっと言う間に過ぎてしまう…
街を歩いているだけでも、ローマは、古い映画「ベン・ハー」そのもので、
ローマ帝国支配時代からまるで変わっていない歴史的建造物だらけで驚きでした。
「なんて素敵なんだろう」と、胸ときめく街歩き。
あちらこちら歩きまわり、ようやく、サン・ピエトロ大聖堂に登るというその日のラストミッションに。
かなり夕暮れになってきていて、私と友人が最後の見学者のようでした。
そこで、何も下調べをしていなかった自分に愕然としたのです。
ローマにそびえ立つ大聖堂の頂上に行くのに、てっきりエレベーターだと思い込んでいたという無知(汗)。
ニューヨークのエンパイアステートビルも超高層でしたが2度エレベーターを乗り換えて行った記憶があったので。
しかしながら、サン・ピエトロ大聖堂は、建立されたのがあまりにも昔で、今の形態に近い形で再建が開始されたのもルネッサンス期であり、バロック期を経て1666年に完成されたと言われています。
エレベーターが設置されているわけがないですよね。
何と急遽、551段の階段を登らないといけない状況になりました!
後でわかったことですが、半分エレベーターの利用が可能だったようです。
だとしても、320段の階段を上がらないといけません。
いずれにしても超ハードワーク!
時間が閉館のギリギリで、迷っている暇なく、警備員さんに「行け、行け」と促されながら、階段を上がるしかないという…登りだしたら、もはや引き返させないのです。
551段というのも後でわかったことで、最初から知っていたら、恐怖におののきトライしていなかったと思われます。
夕方で、散々歩き回った後、エネルギーももう残っていないのに、ひたすら階段を登り続けなければならないのでした。
「いったい、いつ、たどりつけるんだろう?」と、しんどすぎて、
もう私は半泣きでした。正直、「つらい」と…(汗)
そして最後のクーポラのところでは、信じられないほどの狭いスペースを階段というよりロープにすがりつきながら、アドベンチャー的に辿り着いた気がします。
意識も朦朧としながら、クーポラの外にやっと出ることができ、ようやく登頂!
その絶景というのが、それまで登り続けた疲れも吹っ飛ぶほどの素晴らしさ!
ちょうど、黄昏時でローマの街が淡いパーブルピンクに染まる時間帯。
息をのむほどの美しさに、しばし、うっとり。
我を忘れるひと時。
だいたい、山登りも大嫌いな私なので、
死にそうにしんどかったけれど、登ってよかったと思えた最高の瞬間でした。
別世界に浸るのもつかの間、今度は551 段の下りが私を待っていたのですが(笑)
今となっては、下りのしんどい記憶は消えて、登りのつらさと眺望の美しかった記憶だけが鮮明に残っています。
若い時しか不可能な行為でした。
その時は気づかなかったのですが、
「お年寄りや慢性病をお持ちの方、心臓病の方は注意して下さい」との掲示があるらしいので、皆さんは、私のように無謀にはチャレンジしないでくださいね。
「すべての道はローマに通ず」とは、よくできた言葉です。
まさに私は、ローマでそれを体感しました。
真理に辿りつくまでは、苦行を乗り越えなければ、なかなか本来の目的地には到着できない、どんなことも簡単にできることはない。
そのプロセスも大切なのですね。つらい道のりを克服したものには、絶景というご褒美が与えられる。
ローマは、今では遠くなってしまいましたが、
クーポラには行けなくても、もう一度サン・ピエトロ大聖堂を訪ねたいと思います。
いつかきっと!