パリを愛しパリから愛された写真家ルベール・ドアノー〜モノクロームからの音色〜

Vol.5
モデル・ライター
satoko
satoko

 

『パリは、時間の浪費がチケット代わりになる劇場だ。ルベール・ドアノー

現在、渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムにてフランスの国民的写真家ルベール・ドアノー「写真家・音楽・パリ展が開催されている。ドアノーが生きていた1930年代〜90年代パリの様々な音楽シーンを集めた写真200作品を楽しむ事ができる。さて、ドアノーと言えば、「パリ市庁舎前のキス」がよく知られている。この一枚でパリは恋の街として、ドアノーはパリの《こころ》を写しだす写真家として知られることになった。しかし今回はその写真のようなロマンチックな物ではなく、音楽を奏でる人・音楽が響く場所・歌手・文化人・衣装・スタジオ・楽器工房といった音楽にまつわる写真。そして日本初上陸のドアノーのカメラ、といった八章立てで、それぞれの視点から楽しめるようになっている。

 

 

第一章【街角】

《流しのピエレット・ドリオン》ピエレット・ドリオンは流しのアコーディオン弾き。当時マダム・ルルと言う年配の女性と共に下町のビストロや酒場を回っていた。すっかりピエレットに魅了されたドアノーは彼女の写真をシリーズ化した。この写真からは、汚れたエプロンを付けたまま、彼女の演奏に聞き入っている肉屋の主人の姿も見え、古き良き時代のパリのバルの様子も知れて面白い。

 

 

第二章【歌手】

《サン=ジェルマン=デ=プレのジュリエット・グレコ》「私はクラッシックに通じていなかったが、シャンソンのおかげでずいぶん理解することができた。街角から聴こえる口笛は、やさしい空気となって私を勇気づけてくれる」。ドアノーはシャンソン歌手を多数撮っていた。偶然出会ったというこの女性こそ、デビュー前のジュリエット・グレコだった。この写真の隣にはデビュー後の彼女の写真も添えられていて比較できるのが面白い。またエディット・ピアフの写真もあり、言葉に詰まるぐらいカッコイイから絶対に観て欲しい。

 

 

第三章【ビストロ、キャバレー】

《パリ祭のラストワルツ》フランス革命が勃発した7月14日を祝うパリ祭の夜、街灯も消え音楽も消えた街角の一隅でワルツを踊るカップル。二人で何か口ずさみながら、祭の夜を最後まで味わい尽くしたい気持ちで踊っているのだろう。愛すべき瞬間だ。

 

 

第七章【モーリス・バケ】

《雨の中のチェロ》第七章は生涯の友人モーリス・バケ。チェロ奏者で役者でスキーヤーでもあり、マルチに活躍していたモーリス・バケをドアノーは”人生の幸せの師”としても被写体にし、多くの作品を残した。雨の中、チェロに傘を差し掛ける写真がユーモラス。

※参考資料Bunkamura magazine

おわりに

パリの日常を愛したドアノー。写真をじっくり観ていくとパリの街を隅から隅まで出掛けているような気分で楽しめる。写真を撮る前にどんな言葉をかけて撮ったのだろう?。そんな事も考えながら見てみるのも楽しい。ミュージアム内に入るとシャンソンが流れ初め一気に気持ちが盛り上がる。

■写真家ドアノー/音楽/パリ
会期:2021年2月5日(金)~3月31日(水)※会期中無休
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
開館時間:10:00〜18:00(毎週金・土曜日は21:00まで)※金・土の夜間開館は変更になる可能性あり
入館料:一般 1500円(前売り 1300円)、大高 700円、中小 400円(大高、中小は当日券のみの取り扱い)※土日祝日に限りオンラインによる入場日時予約が必要

プロフィール
モデル・ライター
satoko
    茶の道をたしなむアラフォーモデルsatoko。 美しい日常に敏感な為、超感覚的知覚が常に刺激され振り回される日々。猫・茶・アート・ファミリー&個性豊かな友人達に支えられ生きている。

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP