自然美と建築美が融合した「世界に類を見ない」美術館

広島
コピーライター、エディター
Kyoko Kittaka
橘髙京子

先日、広島県大竹市に昨年の3月オープンした「下瀬(しもせ)美術館」に行ってきた。この美術館は、建築資材などの製造・販売を手掛ける広島の企業「丸井産業株式会社」を創業した下瀬家のコレクションを保存し、一般公開している民間の施設。世界的な建築家・坂茂(ばん・しげる)氏が設計を手掛けたことでも注目を集めている。

  

 

 

 

 

 

 

この美術館の特長は、なんといっても、鑑賞空間や周辺風景のすべてがアートであること。坂氏が瀬戸内海に浮かぶ島々から着想を得たという、水盤にたたずむ8つの可動展示室、エミール・ガレが愛した植物を中心に四季折々の草花が植栽された庭園「エミール・ガレの庭」、施設と瀬戸内海の多島美が調和した絶景を望める「望洋テラス」などなど…「アートの中でアートを観る。」というコンセプトのとおり、訪れる人たちの感性を刺激するアイデアがあちこちに!

ベンチや傘立もアート! 素材は坂氏の代名詞でもある「紙管」

ミュージアムショップでは紙管の輪切りも販売されている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

収蔵されている下瀬コレクションは、日本工芸・日本画・油彩・西洋工芸など約500点。現在開催されている「開館一周年記念 加山又造 ―革新をもとめて」では、個人所蔵のものを含む20余点が展示されている。ラスコーの洞窟壁画やキュビスムといった西洋絵画の造形手法を取り入れた日本画や、伝統的な技法に加えエアブラシなどを併用した水墨画など「革新的」な作品を多彩に楽しむことができた。なかでも、個人的に好きな作品は「動物シリーズ」。猫をモチーフにしたものも多く、猫好きのわたしは見入ってしまった。毛1本1本が精密に描かれており、絵画とは思えないリアルさ。ふわっふわの毛並に思わず触れたくなった。

そのほか、加山と同時期に活躍した東山魁夷や平山郁夫の日本画、加山と親交のあった小磯良平の油彩画なども下瀬コレクションの中から展示されており、著名なアーティストの作品を多数観賞することができた。さらに、エミール・ガレの春らしいデザインの花器も展示されていて、宝石のようにキラキラした作品にうっとり…「わたしだったら、どんな花を生けるかな」と想像しながらの鑑賞はワクワクした。

ちなみに、可動展示室内を移動する際は扉の開閉が自動になっている。最初はコンテナに閉じ込められたような感じがして「わたしはココから出られるのか⁉」と軽く焦ったのだが(笑)、非日常感が増して面白かった。この可動展示室は、なんと、広島の造船技術を活用して水の浮力で動かせる仕組みだそう!

美術館のある敷地内には、別荘のような10棟の宿泊施設「ヴィラ」、地元の食材を活かしてシェフが腕を振るう「SIMOSE French Restaurant」も併設されており、いろいろな楽しみ方ができる。特別な日に、ぜひ利用してみたい。

■現在開催中の展覧会

「開館一周年記念 加山又造 ―革新をもとめて」

会期:開催中~2024年6月30日(日)まで
会場:下瀬美術館(広島県大竹市晴海2丁目10-50)

公式サイト「下瀬美術館」で検索

公式インスタグラムhttps://www.instagram.com/simose_artmuseum/

プロフィール
コピーライター、エディター
橘髙京子
大学卒業後、広告代理店のコピーライターや出版社の編集者・ライターとして勤務。現在は映像業界のプロデューサー、フリーライターとして活動中。

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