ドラマを描く
短編小説と長編小説、どちらを読むのが好きですか?
私は小説の面白さを知って、好きな作家さんに出会うようになってからは断然長編小説派になりました。
長編の良いところは、各キャラクターの描写が丁寧に追えることであったり、作者が納得いくまでストーリーの緻密さや奥行きを引き出せる部分にあるのではと思います。
そう考えると、“面白い“短編小説を創作するのは、実は長編よりも難しいのではと思うことがあります。
面白い短編と聞いてパッと思いつくのは、僅かなトリックで数分後には大どんでん返しが待ち受けるようなミステリーでしょうか。
かの有名な星新一さんのショートショートなんて、僅か2,3ページめで驚愕のオチに辿り着いたりするので本当に作家さんは頭が良くて凄いなと思い知らされます。
私にはまだまだ、緻密な仕掛けを短編に落とし込めるほどの技量が足りていません。
大分前にはなりますが、私は脚本の勉強をするために月2回程度、シナリオスクールへ通っていたことがあります。
そこでは毎回、課題に沿って短いドラマの脚本を書いてくるという宿題がありました。
その時、先生によく貰っていたアドバイスは「ドラマを生み出せ」でした。
“ヒューマンドラマ“というジャンルを思い出せばなんとなくニュアンスが伝わりますでしょうか。
つまり、「人間を描く」ということです。
読んだあと心に残るような作品って、たとえ短いストーリーの中でも主人公の感情が大きく変化していたり、成長したりするものであることが大半なはずです。
例えば、“リモート明け“で毎日の出勤が憂鬱な主人公のストーリーを描こうとした時、私ならまず、主人公の感情が変化する部分を考え始めます。
・しんどい→楽しい
という変化を思いついたらそれをベースに、
・毎日しんどい→突然ラッキーが続く→仕事楽しい
これだけだと少し物足りないかなと思ったら、
・毎日しんどかったけどラッキーが続いて仕事楽しい→嫌いだった上司がリストラされる→嫌いだったけど、楽しくは感じない→シビアな現実に仕事意識が変わってくる
くらいまで作れたら、ドラマっぽくなるかな……などと思いながら、おそらく書き始めます。
この方法なら、短いドラマを考えるのって意外と簡単なのではと思えてきませんか?
主人公と一緒に読み手の心も動かせるような面白い短編作りに、ぜひ挑戦してみてください!