〈濃厚接触者〉に指定されました その1
「Withコロナ」とか言って、コロナウイルスとの戦いは長期戦になることが決定的になってきました。WHOのトップも、「数十年の戦いになるかもしれない」と発表しています。 人間の我慢や集中力はそう長く続くものではありません。「どうせ長期戦になるから」という気分が広がっているせいでしょうか、最近感染者(陽性判明者)は第1波の時よりも拡大しているのに、あの厳戒態勢のときよりも色々なことが緩くなってしまったような気がします。 「何が悪い!」という顔をして、マスクもせずに平気で電車に乗って来る人もちらほらと見かけるようになってきました。 東京都は毎日200人、300人、400人と「陽性判明者」の数を発表していますが、多くの都民が、自分の身近に「陽性判明者」が出ないので、実感がわかないのが本当のところだと思います。 僕もそう思っている一人でした。ところがとうとう来るものが来てしまったのです。それは土曜日に届いた1本のメールから始まりました。 〜お知らせしたいことがあります【緊急】〜 そのメールにはそんなタイトルが付いていました。土曜日に会社のPCに届いていたそのメールを、僕は月曜日の午前10時に出社して初めて見て、嫌な予感がしました。それはクライアントの事務所からだったのです。メールの差出人であるその事務所の事務員の携帯電話に電話しました。 「すみません。【緊急】のメールをいただいたのですが、お知らせしたいことってなんでしょう?」 「実は先生が、コロナウイルスに感染いたしまして……」 「エッ!?」 「あなたも濃厚接触者の可能性がありますので、保健所の方へ報告しなければなりません。個人の住所と携帯の番号を教えていただけませんか?」 目の前が真っ暗になりました。そして僕は、目出度く流行の最先端であるコロナウイルスの関係者となったのでした。 〈つづく〉