いつもの生活のありがたみ
東京
ライター
来た、見た、行った!
かつらひさこ氏
今ほど先が読めない時代もない。
メディアの言うことも下手をすれば1日で変わるし、ひとつのことでも賛成や反対やその他、様々な意見が出る。
さらに、その情報が本当かどうかもわからないので、感情を動かされるものほど、一次情報に当たらねばならない。
何かストレスを発散したくても、人と集まることも、映画に行くことも、飲みに行くこともなかなかしづらくなってしまった。
常に不安と焦りの中にいて、気持ちが殺伐としやすい。
日本どころか世界もしっちゃかめっちゃかで、歴史に間違いなく残る1年になるのだろうなぁと思う。
子供たちが早めの春休みに入って1カ月。
世の情報は「とにかく家から出るな」になった。
通勤していた他の仕事も在宅勤務になり、ずっと家にいることが多いせいか、睡眠リズムも乱れるようになってしまった。
朝早く起きられた日もあれば、丸一日布団から出られなくなってしまったり。
さすがにどうなのかと思うので、三密を避けて夜遅めの時間に散歩に行くことにした。
誰もいないご近所の夜は空気が澄んでいた。
その辺をうろうろと歩いていると、まだ桜が残っていた。
ああ、きれいだなと思う気持ちと、どうしてこんな生活になってしまったんだろうという怒りと、でも人類はそれでもなんだかんだ生きてきたんだなという安心感みたいなものが胸の中でくるくると回転した。
最近は、「この生活が落ち着いたらやりたいことリスト」を作っている。
いろいろとあるが、どうも中身は「人と会って話したい」でまとまることばかりだ。
自分のことを人見知りだと思っていたが(実際そうなのだが)、実は人が好きでもあるんだなと思う。
ここ数カ月いろいろあったからこそ、普通の生活の有難さを噛みしめる。
あって当然と思っていることは、あっけなく崩れるということも。
プロフィール
ライター
かつらひさこ氏
1975年札幌市生まれ。自分が思い描いていた予定より随分早めの結婚、出産、育児を経て、6年前からライティングを中心とした仕事を始める。毒にも薬にもならない読みやすい文章を書くことがモットー。趣味はクイズと人間観察。