アイヌの遊び唄「ピㇼカピㇼカ」
先日の記事
では、アイヌの男の子の遊びを紹介させていただいた。
男子の生業である狩りや漁には弓矢に槍の技が必須。
いずれ家族を支えるために「輪突き」「カジキ突き」などの遊びを通じて技を磨いていく。
一方で女の子は砂浜や炉の灰にお絵かき遊びをして、将来に備える。
女の子の将来…女性の大切な仕事は衣服にかかわる一切。
樹皮から繊維を取り出し糸を紡ぎ、布を織って着物を仕立てる。
そして仕立てた着物には刺繍やアップリケを施す。
着物を彩るのはいわゆる「アイヌ文様」。
独自の幾何学文様のデザインは、子どもの頃からの「お絵かき遊び」で培われている。
夏の砂浜、冬は炉の灰に幾度となく線を描き、デザインを構築していく。
だが、そんな「学び」とは一切無縁の「楽しい遊び」もある。
ここで一つの歌を聴いていただきたい。
ピリカピリカ
近藤鏡二郎 作詞・採譜
雪村いづみ 唄
昭和30年代に流行したこの歌謡曲は、アイヌ古謡を元唄としたものである。
もとはアイヌの遊び唄である。
ピㇼカ ピㇼカ
タントシㇼ ピㇼカ
イナンクㇽ ピㇼカ
ヌンケクㇲネ ヌンケクㇲネ
いいな いいな
今日は いいな
どなたが いいか
どなたを選ぼ どなたを選ぼ
一般にもよく知られたアイヌ語である「ピㇼカ」。「美しい」「かわいい」の意だと思われているが、実際には好ましい状況全般を意味する言葉である。
美男美女はもちろんピㇼカ。天気が良くてもピㇼカ、美味い料理もピㇼカ。狩りなどの作戦が成功してもピㇼカ。
さて「ピㇼカピㇼカ」の遊び方。
本来は「リㇺセシノッ」(踊り遊び)と呼ばれる。
子どもたちが手を繋ぎ輪になり、前記のピㇼカピㇼカを唄う。
ひとり「鬼」になった子が、輪になった仲間の周りをぐるぐる回る。
そして誰か一人の肩に布切れをそっと置く。
また円陣の外郭をひとまわりする。
鬼役がまた一回りしても、布を置かれた子は気が付かない…
気が付かなければ、その子が次の鬼。
このピㇼカピㇼカの本来のメロディー、あるいは歌謡曲になるまでの歴史的変遷は、以下のリンクが詳しいのでぜひお読みいただきたい。
※参考文献
『アイヌ民族誌』下巻 第一法規出版社 1970年