「アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄」アジアで初の展覧会開催

金沢
ライター
いんぎらぁと 手仕事のまちから
しお

テレビや街頭、最近ではYouTubeやInstagramの広告など、私たちは日々さまざまなメディアからイメージやアイコンを受け取って生きています。

それを意識することは滅多にないのですが、いかに自分たちが外部からの情報を無制限にインプットされ続けているのか思い知るような展覧会「Alex Da Corte Fresh Hell アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄」が金沢21世紀美術館で開催中です。

アレックス・ダ・コルテさんはヴェネチア・ビエンナーレやメトロポリタン美術館、ルイジアナ近代美術館など世界各地で作品が紹介されているアメリカ人アーティストで、今回の展覧会はアジアの美術館で初となります。


取材に応えるアレックス・ダ・コルテさん

1900年代前半に活躍した彫刻家・コンスタンティン・ブランクーシの作品をモチーフとした主人公が、「愛」「喪失」「解放」を表現する劇作品[ROY G BIV]。


アレックス・ダ・コルテ《ROY G BIV(ロイ・ジー・ビヴ)》2022
© Alex Da Corte studio

虹を構成する7色の頭文字からタイトルを付けており、展覧会の会期中に白い展示室のキューブを7色に塗り替えていくパフォーマンスも行われます。


アレックス・ダ・コルテ《ROY G BIV(ロイ・ジー・ビヴ)》2022
© Alex Da Corte studio

カラフルなイスやテーブルと5台のブラウン管テレビが設置された展示室ではアレックス・ダ・コルテさんが「20年間で制作した作品の中で選りすぐりを集めた」という5点が上映されます。


展示室8の様子

同展のメインビジュアルにもなっている[開かれた窓]ではミュージシャンのアニー・クラークさんが猫を抱いて何かを観ながら恐怖に叫んでいる様子を作品に落とし込みました。


アレックス・ダ・コルテ《開かれた窓》2018
© Alex Da Corte studio

映像のうえに目玉やスマイルなどさまざまなグラフィックが描かれたビリヤードのボールが転がっていきます。

ヒッチコックの作品からイメージしたという同作は、不安や熱を感じるオレンジ色をメインに、恐怖や迷信を暗示する猫(しかも目が1つしかない!)を抱き、知らぬ間に見られている・見ていることの怖さを表現します。

57のショートストーリーから成る[ゴム製鉛筆の悪魔]は4つの大きなモニターに「アメリカの叙事詩」をイメージした映像が次々と映し出され、ザ・シンプソンズやセサミストリート、バックス・バニーなどをオマージュしたキャラクターたちは私たちの奥底にいつの間にか溜まっていた記憶を呼び起こします。


展示室11「ゴム製鉛筆の悪魔」

順路の最後に位置する[マウス・ミュージアム(ヴァン・ゴッホの耳)]では、クレス・オルデンバーグの作品[マウス・ミュージアム]の左耳部分を、リスペクトを込めて模倣しています。

オリジナル同様に作品の中が展示室になっており、今回上映した映像作品に登場する小物やキャラクターのオブジェを含めたアレックス・ダ・コルテさんの私物など146点を展示しています。


アレックス・ダ・コルテ《マウス・ミュージアム(ヴァン・ゴッホの耳)》2022
© Alex Da Corte studio

アレックス・ダ・コルテさんは同作を、「自分の脳内や歴史が並んでおり、スクリーンを突き抜けて現実世界にイメージが出てきている。終わったものがまた始まる、自身の作品のテーマの一つである円環を感じてもらえれば」と説明しました。

「イメージの氾濫」という言葉が使われる現代社会において、集団の記憶となったどことなく懐かしいモチーフたちを、新鮮さと共にサンプリングするアレックス・ダ・コルテさんの作品を観ていると、芸術や美術、音楽や文学、流行もまた同じところを繰り返しているだけなのではないかという感覚に襲われます。

それこそ恐怖であり地獄なのではと思いあぐねつつ、その中にも新たな刺激は無限にあるという揺るぎない事実にも気付かされた展覧会でした。

Alex Da Corte Fresh Hell アレックス・ダ・コルテ 新鮮な地獄

会期 2023年4月29日(土・祝)~9月18日(月・祝)

休場日 月曜日(ただし7月17日、9月18日は開場)、5月14日、7月18日

開場時間 10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで)

※観覧券販売は閉場の30分前まで

会場 金沢21世紀美術館 展示室7~12、14

作品数 12点

料金 一般 1,200円(1,000円)/ 大学生 800円(600円)/ 小中高生 400円(300円)/ 65歳以上の方 1,000円
※( )内は団体料金(20名以上)及びウェブチケット料金

主催 金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]

後援 在大阪・神戸米国総領事館、北國新聞社

協力 多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース、川崎市民ミュージアム、ハイアットセントリック 金沢、株式会社モダニスアンドカンパニー

画像提供・取材協力:金沢21世紀美術館
(石川県金沢市広坂1丁目2-1、TEL 076-220-2800)

プロフィール
ライター
しお
ブランニュー古都。 ふるくてあたらしいが混在する金沢に生まれ育ち、最近ますますこの街が好きです。 タウン情報サイトの記者やインターネット回線系のまとめ記事などを執筆しながら見つけたもの、感じたことをレポートします。 てんとうむししゃ代表。

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