寺院×アートな芸術祭!「oterart(オテラート)金澤」で地獄めぐり

金沢
ライター
いんぎらぁと 手仕事のまちから
しお

金沢の秋といえば、兼六園の紅葉?底引き網の甘えび?金沢マラソン?ノンノン、「oterart(オテラート)金澤」ですよ!

oterart金澤は2010年から始まった芸術祭で、お寺を会場にベテラン作家さんから美大生、一般の参加者など幅広いアーティストが作品を出展したり、ワークショップや演奏会、飲食の出店があったりと気軽にお寺へ足を運べるイベントです。

毎年テーマが決まっており、作家さんたちは展示するお寺やテーマにあわせて作品を制作したり選定したりしています。今年のoterart金澤のテーマは「地獄」。

もし死後の世界があるのなら…と考えると地獄に堕ちるのだけは嫌ですが、畏怖の念がそうさせるのかそそられてしまうテーマです。

oterart金澤は前期と後期で開催する地域とお寺が変わり、今年は全部で11の寺院で実施です。今回は前期にお邪魔した寺町地区の長久寺さん、興德寺さん、常松寺さんで出会った素敵な「地獄」を紹介します。

まず伺ったのは長久寺。金沢21世紀美術館から寺町方面へ真っ直ぐ進んだ先、新桜坂を上ったところにあります。

 

長久寺を入ってすぐに大きな目がこちらを見つめてきます。

金沢美術工芸大学視覚デザイン専攻の丸田哲平さんの作品「日常」です。

近づいてみると目を形成しているのが、実は日常の風景であると気が付きます。

キャプションには「視点の違いで景色が大きく変わる。私は地獄にいる者とそうで無い者との間には果てしない距離があると思う。恐らく地獄にいる人が見える景色はきっと私たちとは違ったものだろう」と書かれていました。

個人的には何気ない日常の集合体が、視線という恐怖に変わっていく様にインパクトを受けました。

長久寺のお庭に面する陽ざしのあたたかい場所に設置されていた、東京藝術大学大学院鍛金研究室研究生のユ ジャピンさんの作品「転生」も存在感を発揮していました。

死について語ることがタブーとされる台湾で育ったユ ジャピンさんが、言語化できない死や魂について鍛金技法で表現した作品とのこと。

「転生」というタイトルも含め、哀しみや儚さだけでなく強さや優しさも感じます。

次にお邪魔したのは、子育鬼子母神が祀られた「興德寺」。

子育鬼子母神像の前に並ぶは、画家・倉林雅幸さんの「賽の河原」です。

建築資材のスタイロフォームと粘土などで作られた人物と、賽の河原で健気に石を積み重ね続ける子どもたち。

倉林さんは報われない作業を続ける賽の河原の幼児とアーティストの制作活動を重ね、悲しげに手を伸ばす人物を幼児が生まれ変わった姿=作家かもしれないと話しました。

それでも賽の河原の逸話にあるように地蔵菩薩が子どもたちを救いにくる、「救済」に希望を見出します。

興德寺の奥には田頭テリヤキさんの作品群が、ポップかつ斬新な地獄像を描いています。

江戸期の画家・俵屋宗達の「風神雷神図屏風」の中に遊びが秘められているという妄想を見出し、その思考に執着しながら模倣したという、その名も「妄執模写~宗達の風神雷神図屏風~」。

立体感や迫力に息を呑む作品です。

忍者寺近くの常松寺では、オルタナティブ仏画作家の大橋りほさんの作品「無銭拝聴地獄」が印象的でした。

自らの音楽制作をビジネスとして捉え、サブスク型音楽配信や違法ダウンロードが横行している現代を批判するKISSのジーン・シモンズを財力の神である毘沙門天になぞらえました。

音楽がタダでダウンロードできてしまうパソコンの周囲で行き所なくさまよう曲=魂たち。アーティストにとって、「命を込めて作った楽曲たちが正当な対価もなく消費されていくことこそが地獄」と大橋さんは話してくれました。

常松寺さんでは今年初登場した「地獄みくじ」も引いてみました!中身は…めでたく?大凶!

これより底はない!ということで、前向きに後期のoterart金澤も楽しんでいきます!

お寺とは古来より一般に開かれていた場所。とはいえ、現代では気軽にお寺の中まで伺うのはハードルが高いのも事実です。

そんな中、伝統工芸から現代アートまでいろんな作品を観たり作家さんやご住職ともお話しつつ、各寺院のご本尊やお宝も拝見できたりするoterart金澤。

毎年開催しているので、秋のご旅行の際はぜひ足を運んでみてください。

 

oterart(オテラート)金澤2023

[前期日程:小立野地区・寺町地区]2023年9月16日(土)~9月24日(日)

■小立野地区

天徳院(金沢市小立野4-4-4-)

戸田 伸英/北原 明峰/山岸 耕輔/芸宿(企画)

■寺町地区

長久寺(金沢市寺町5-2-20)

書家 佑蒼子/ておえむく/ユ ジャピン/丸田 哲平/ヤマシロタクヤ/吉田 篤史

興徳寺(金沢市寺町5-12-16)

アートユニットみわかなみ/田頭テリヤキ/巳雲/矢野 宏実/倉林 雅幸

妙法寺(金沢市寺町4-2-6)

紅乃谷 安那/アルゴノート/森 花/鹿庭 健司/田中 美路

常松寺(金沢市野町1-38)

paraiso/瑞吉/大橋 りほ/城戸 咲喜花/haru/木下 富雄

​[後期日程:東山地区・浅野川地区]2023年9月23日(土)~10月1日(日)

■東山地区

浄光寺(金沢市森山2-19-32)

芝山 佳範/marie/出村 禮子/カガ ユウジ/下橋 翔/瑞(Miz)

全性寺(金沢市東山2-18-10)

BeBe/蒼月/やまなぞ/オオタニユリ/宮井 茂江/Kinjo Art

観音院(金沢市観音町3-4-2)

齊藤 美知代/あ・うん/長野 峰子/梨紗[Risa]/草川 紫音

■浅野川地区

崇禅寺(金沢市瓢箪町5-43)

つな/宮﨑 匠/シバカン/灘 ふい/岸 桃子/勝又 理音

聞善寺(金沢市瓢箪町5-33)

ala/増井 大樹/平林 沙也加/佐藤 慧/櫻哉/ほんだじょり/アマヤギ堂

廣誓寺(金沢市昌永町13-25)

Sgatch/小坂 素石/うき/青木 遼/田中 良征/正水 瞳

午後1時~午後6時 ※最終日は午後5時まで

[入場無料]

取材協力:oterart金澤2023 実行委員会

プロフィール
ライター
しお
ブランニュー古都。 ふるくてあたらしいが混在する金沢に生まれ育ち、最近ますますこの街が好きです。 タウン情報サイトの記者やインターネット回線系のまとめ記事などを執筆しながら見つけたもの、感じたことをレポートします。 てんとうむししゃ代表。

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