旋律のカッコイイ「古関裕而の戦時歌謡」

神奈川
フリーライター
youichi tsunoda
角田陽一

※写真は、マレー沖海戦で日本軍に轟沈された大英帝国東洋艦隊の戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ

名曲が生まれやすい
軍歌の作成環境

軍歌、いくさの歌
兵士を鼓舞する歌の類を作り上げるには、国家がプロパガンダ目的で当代一流のアーティストを招へいするものである
そのため、意図にかかわらず「名曲」が生まれやすい世界ではある。
現に
「オタマジャクシは蛙の子 ナマズの子どもじゃありません」
「ゴンベさんの赤ちゃんが風邪ひいた」
「丸い緑の山手線 真ん中通るは中央線」

等の替え歌でおなじみの旋律は、アメリカ南北戦争時の北軍軍歌「リパブリック賛歌

「ラメチャンタラ ギッチョンチョンデ パイノパイノパイ」などという奇妙なサビが特徴の大正時代の流行歌・東京節の原曲は
やはりアメリカ南北戦争時の北軍軍歌「ジョージア行進曲

戦の歌ながら、替え歌の旋律として世界各国で親しまれているのだ。

太平洋開戦直後
勝利ムードの古関歌謡

NHKドラマ「エール」
流行歌から学校の校歌に応援歌、あるいは映画音楽にオリンピックファンファーレと、昭和の世相に寄り添いあらゆるジャンルの曲を繰り出した作曲家・古関裕而の人生を追ったドラマ。
昭和の音楽を語る上で外せないのが、戦時歌謡である。
戦時中、やはり古関裕而も戦時歌謡、そして軍歌の作成にかかわった。

大平洋戦争開戦直後

マレー半島東側にて英国東洋艦隊相手に大勝利した

マレー沖海戦

 

それを祝って作詞作曲された
英国東洋艦隊壊滅

 

ほどなくシンガポールを占領
それを祝っての

シンガポール晴れの入城

 

お聞きの通り、歌詞には勝利の喜び、というよりおごりが濃厚に滲み出す。
しかしさすがは古関の旋律、じつに「カッコイイ」メロディーではないか。

 

内容が内容ゆえ、とても戦後の世相に演奏、放映できるようなものではない。
それゆえに、オープンな場で旋律だけでも耳にすることも不可能なのも難しい。

 封印された曲ながら、当代一流のアーティストが招へいされての仕事ぶりを垣間見られるのだ

 

プロフィール
フリーライター
角田陽一
北海道生まれ。2004年よりフリーライター。アウトドア、グルメ、北海道の歴史文化を中心に執筆中。著書に『図解アイヌ』(新紀元社 2018年)。執筆協力に『1時間でわかるアイヌの文化と歴史』(宝島社 2019年)、『アイヌの真実』(ベストセラーズ 2020年)など。

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