アニメ「フクちゃん」に見る「オレオレ詐欺」のネタ元
平成に花開いた?
オレオレ・振り込め詐欺
平成中期
家族のきずなが希薄になりつつあるなかで、そのスキをついて生まれた新たな犯罪「振り込め詐欺」。
ターゲットは中高年の層。
犯人らはまず被害者の身内になりきり、切羽詰まった口調を駆使して。
「トラブルに巻き込まれた!お金があれば!振り込んで!」と訴える。
その折、肝心の被害者の「身内の名前」を知らなくてもいい。
ただ「オレだけど」「僕だけど」でいい。
肉親の情が希薄になりつつあった20世紀末21世紀初頭
突然の電話を受けた高齢者らは電話の向こう、文字通り「見知らぬ相手」を愛息、愛孫と信じ込んだあげく、身内の一大事とばかりに大金を振り込んでしまう…
身内の関係が薄れつつあった時代にありながら、いまだ濃厚な親戚付き合いを信じていた層が狙われてしまうのである。
だが肉親の情愛が濃厚だった昭和後期、
電話といえば黒電話、「かける」「話す」以外の機能が存在しなかった時代
すでにこの「オレオレ、振り込め詐欺」の萌芽があったとしたら…
アニメ「フクちゃん」に見る
「わたしわたし詐欺」
昭和戦前期から連載されていた横山隆一漫画「フクちゃん」
学生帽姿の男の子と、アルファベット模様の浴衣がトレードマークの老人の生活をほのぼのと描いた当作品は、昭和58年(1983年)にアニメ化され、翌年にかけてテレビ朝日系列で放映された。
ストーリーアニメという設定上。主人公のフクちゃんは幼稚園児、そして両親が新たにプラスされた三世代同居の家庭。アラクマさんは大学生の下宿人。その他、幼稚園の友達やガールフレンドなどあらたにプラスされた。
時代は昭和後期、電話といえば黒電話だ。
さて、そんなおりのストーリー。
一家でお出かけの予定のある日、家にお客さんが訪れた。
結果、予定はキャンセル。
大人にとっては大切なお客さんかもしれないが、子どもにとっては敵でしかない。
ここが子どもの恐ろしいところ。
フクちゃんはワサビてんこ盛りの寿司を出前で頼んだり、挙句にはチャンバラごっこを挑んだりでお客を追い出してしまうのだ。何も知らないお客さんこそ大迷惑だ。
だが一難去ってまた一難、今度は同居人・アラクマさんの元に、大学の迷惑な先輩が押しかけてくる。ここでフクちゃんが取った行動が、今回の本題。
友人・キヨちゃんの姉・ナミちゃんに頼んで、家にニセ電話をかけてもらったのだ。
こうしてフクちゃん宅の黒電話が鳴る。
電話で呼び出された先輩に、ナミちゃんが話しかける。
「わたしよ、わたし!」
先輩はいぶかりながらも答える。
「〇〇さん?」(先輩の意中の相手の名は忘れました。失礼)
「そうよ、○○よ!公園で待ってるから、一緒に話しましょうよ!」
迷惑な先輩は「わたしわたし詐欺」に見事に引っかかって家を飛び出し、
めでたくフクちゃんの望みは達成されたこととなる。
時は昭和後期。
まさか後のオレオレ、振り込め詐欺グループがこのストーリーを本気で「ネタ元」にしたとも思えないが、相手の姿がわからないこそ騙せる電話の欠点が、見事に生かしたネタであろう。