2021.01.02
「売っていたのは、希望」
東京
ライター
来た、見た、行った!
かつらひさこ氏
2021年が明けた。
「よい年でありますように」というのは毎年の定型文になっているが、2020年がとんでもなかったために、「本当に今年は、今年こそはいい年であって欲しい」と力を込めて思う方が多いと思う。私もそうなのだが。
何が辛かったって、あらゆる行動を制限されることの辛さもあるけれど、それを繰り返しているうちに、「夏休みになったらどこに行こう」「思い切って海外に行っちゃうか」「これが終わったら友達と飲み会だ」「楽しみにしているライブに行くんだ」というような、「楽しみにしていること」がどんどんなくなっていってしまったこと。
心が乾いて、でも我慢しなくちゃならなくて、心の中から何かが削られていく感覚は、もしかすると昨年独特の物だったかもしれない。
「いい年」というのはどういうことなのかな、と思いながらネットを検索していると、西武・そごうの元旦の新聞広告が目に飛び込んできた。
それはレシートに記載された、西武百貨店の2020年6~11月の売り上げ。
新型コロナウィルスで行動が制限されても、いつか旅行できる日のためにスーツケースを買った人。
マスクで隠れてしまうけど、口紅を買った人。
夏祭りは中止になったけど、浴衣を買った人。
ハイヒールを買った人。
ベビーギフトを買った人。
泣きそうになった。
いい広告だなと思った。
私が大好きな映画「ショーシャンクの空に」のラストシーンで、「希望はいいものだ。たぶん最高のもので、決して滅びない」というセリフがあるのだが、それを思い出した。
希望が削られる日々はまだまだ続きそうではあるけれど、それでも手放さずに握りしめていきたい。
年の初めにそんなことを思った。
プロフィール
ライター
かつらひさこ氏
1975年札幌市生まれ。自分が思い描いていた予定より随分早めの結婚、出産、育児を経て、7年前からライティングを中心とした仕事を始める。毒にも薬にもならない読みやすい文章を書くことがモットー。趣味はクイズと人間観察。