東京では免許の更新でさだまさしを聴かされる。
みなさんは、ゴールド免許ですか? 青い免許ですか?
私は青いほうです。一時停止違反やっちゃって。
コロナ禍での免許更新。感染対策による人数制限のため各地で大行列ですと
ニュースが伝えていました。
やだな怖いなぁ~と稲川淳二な気分で迷っていたのですけれど、
このところは割とスムーズになったと聞いて、予定通り更新へ。
向かったのは新宿駅。
西口の東京都庁の中に運転免許更新センターがあって、わりと穴場なのです。
更新手数料を支払い、視力検査をして、写真を撮って、講習のお時間。
私は違反歴があるので60分の講習となります。
『人は過ちを犯すもの。今回は点数で済みましたけれど、心を入れ替えて
真人間として生きていくのですよ』的な空気感に包まれながら席に着き、
ルール改正の説明やらビデオ講習やら、プログラムは進んで行きます。
眠いのを我慢しつつ、ようやく60分が終了、しようとしたその時。
『それではみなさん、最後に1曲の歌を聴いていただきます』
?
『さだまさしさんの“償い”という曲です。この曲は交通事故で人を
あやめてしまった男性の実話をもとに作られました。事故の怖さと
命の尊さをわかっていただくために、聴いてください』
ようやくシャバに出られるぜぇ! と安心していたところだけに
虚を突かれたような表情になるわれわれ受講者(違反者)一堂。
室内の照明が落とされ、そしてCDプレイヤーの再生ボタンが押されます。
この、さだまさしさん(以下敬称略)の「償い」という曲。
歌詞を読んでいただくのが早いのですが、そのまま転載はできないので
こちらのリンクをご覧になってください。
物語をかいつまんで記すと、
主人公は「ゆうちゃん」という男性。ある日、雨による視界の悪さと疲労が重なり、
ゆうちゃんは人をはねてしまいます。はねてしまったのはもうすぐ定年を迎える男性。
男性には妻がおり、夫婦静かに暮らしていこうとしていた矢先の事故でした。
はねられた男性は亡くなってしまいます。
愛する夫を失った被害者の奥さんはゆうちゃんを「人殺し、あんたを許さない」と罵ります。
事故後、ゆうちゃんは奥さんに対する償いのために、毎月仕送りを続けます。。
…という内容。
たった一度の事故で、被害者、奥さん、ゆうちゃんの3人の人生が狂って
しまった。そんな悲しい歌なのです(奥さんがさだまさしの知人だそう)。
参ったなあ~と思いつつ、実話だけに斜に構えるのもナンだし、ブルーな気分。
歌詞は3章で構成されており実に6分を超える長い歌でありました。
曲が終わり部屋が明るくなると、ハンカチで目を押さえている女性の姿も。
『それではみなさん、本日はご苦労様でした』
まるで友人のお通夜に出席したような沈痛な面持ちで部屋を出る受講者(違反者)一堂。
歌を聴かせる事の賛否は置いておくとして、一定の効果はあるみたいです。
この「運転免許の更新でさだまさしを聴かせる」企画ですが、ネットで調べたところ
2016年頃から東京都内の一部の免許試験場で実験的に始まっているようでした。
山梨県からも「聴いた」というTwitterの投稿を見つけたので、各地に拡大しているかもしれません。
みなさんの住んでいる街ではどうですか? さだまさし、聴かされますか?
しかし、ふぅ、ぐったり。
気分転換に、都庁の中にある「職員食堂」に寄って500円のビーフカレーを食べました。
コクのあるルーがとても美味しかったですよ。見晴らしもいいし、おすすめです。