映画も原作も!これまで紹介した映画作品の原作紹介
Creator’s eyeで幾つかの映画レビューをさせて頂きました。 今回はこれまで紹介させて頂いた作品を原作を絡めてご紹介します。 原作を読むことで、作品への理解が深まり、映画と原作の違いを楽しむ事ができます。 ※既に公開されている作品の為、ネタバレ含みます。
るろうに剣心最終章The Biginning
- 原作:るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-
- 作者:和月伸宏
- ジャンル:漫画
- 映画レビュー記事:ついに完結!「映画 るろうに剣心 最終章 The Beginning」レビュー
大友監督が、「映画は映画版として楽しんでほしい」と発言しているように原作とは違う部分が幾つかあります。実写版のるろうに剣心シリーズで原作と大きく違うのは人外キャラクターのデザイン。 原作ではアメコミに出てくるような人間離れしたキャラクターも登場するのですが、映画版は皆人間らしい風貌をしています。 想像ですが、敢えて監督が拘ったところでは無いかと思いました。CGで巨大なキャラクターが大暴れするよりも、全員人間にしたほうが戦闘にリアリティが増し、剣心の葛藤にも感情移入しやすいと感じました。 漫画には漫画の、映画には映画の素晴らしい世界観で展開されています。 緋村剣心役の佐藤健さんのアクションシーンも圧巻。
緋村剣心といえば、神速。メイキングでは佐藤さんのトレーニングシーンも見ることができるのですが、驚愕です。本作を通じて「役を演じる」という枠を超えた努力をされている方なんだと知りました。漫画キャラクターの技を実写化するのは簡単ではありません。ですが、剣心の飛天御剣流の他、四乃森蒼紫の回転剣舞(るろうに剣心 最終章The Final 他)、瀬田宗次郎の縮地(るろうに剣心 最終章The Final 他)などが再現されています。 また、映画版のラストで、剣心と薫が手を繋いで歩くシーンがあります。 ここは台本には無い演出だったそう。 ですが、原作にはあるので佐藤さんが原作リスペクトで取り入れたのではないかと思います。様々な過去を乗り越えて、2人が手を繋く姿は心打たれます。 原作を読むと、佐藤さんの緋村剣心への敬意が強く伝わります。
鳩の撃退法
- 原作:鳩の撃退法
- 作者:佐藤正午
- ジャンル:長編小説
- 映画レビュー記事:究極の謎解きエンター「転」メント!映画「鳩の撃退法」レビュー
原作は上下巻に分かれる長編小説です。 時間軸が複雑に前後しているので、じっくり読まないと重要な箇所を見落とす可能性があります。佐藤正午さんの文章は一文が長いのも特徴的です。 映画版でもボーッと見ているとヒントを見落とす「謎解き感」は健在。 ですが、映画は上映の尺もありますから分かりやすい構成になっています。 素人的な感想で恐縮ですが、119分にまとめ上げているのがまず凄いと感動しました。 原作は文章ですので、主人公、津田伸一の想いをしっかり感じ取る事ができます。
「そもそも僕がこの小説を書こうと思い立ったのは、神隠しにあった幸地家の全員を生かしておくためなのだ。言い方を換えれば、生きている幸地秀吉と再会するためだ。小説ならそれができる。」(鳩の撃退法 下巻より引用)
誰かを救いたい、執筆の行動原理が最高にカッコ良くないですか? 原作ではこの事が繰り返し書かれています。映画版だと藤原竜也さんという名優によってビジュアル化されています。どちらの楽しみ方も贅沢です。
ボクたちはみんな大人になれなかった
- 原作:ボクたちはみんな大人になれなかった
- 作者:燃え殻
- ジャンル:恋愛小説
- 映画レビュー記事:ベストセラー小説待望の映画化!「ボクたちはみんな大人になれなかった」レビュー
原作者の燃え殻さんは、テレビ業界に身を置く方で、元々小説家ではありませんでした。それ故か難解な表現が殆どなく、さらりと読めます。 そして、「どこにも行けないふたりの声が、世界を旅して廻る」「地面の上に憂鬱な荷物を置いて」など詩的な表現が度々登場するのも印象的。 文章の雰囲気が、主人公・佐藤誠の過去を懐かしく愛おしいものとして彩っているように感じます。 私が1番好きなのは東京発の銀河鉄道の章。 佐藤が「このまま仕事を辞めて遠くに逃亡したいなぁ」と呟くと、かおりは言います。「宮沢賢治は死ぬまで遠くに行ったことなんてなかったんだよ」と。 宮沢賢治は東北の田舎町から銀河まで旅をしたのだと。
「きっと、妹を一緒に連れて行ってあげたかったんじゃないかな」
「どこに行くかじゃなくて、誰と行くかなんだよ」
2人なら東京から銀河まで行けるんだと言いたげな、若い2人の恋愛が甘酸っぱくも眩しく感じます。 また、燃え殻さんは
「どこまでが本当だっただろう。過去は変えられるなぁと書きながら思ってました。希望を足せるなぁって。自分にとって小説は希望です」
と話します。 鳩の撃退法の津田伸一と共通していますね。現実で望まない結末を迎えても小説なら変えられる。小説家としての在り方を垣間見た気がします。
最後に
原作と映画の両方に目を通すと、「あえて表現を変えているのは何故だろう?」など想像のきっかけが増えます。 また、原作で想像していた描写が映像化されることで、新たな発見もありますし、俳優さん達の表現力にも驚かされます。映画レビューをさせて頂くようになり、何度も「俳優さんて凄い!」と思いました。 様々な表現に触れることで、自身のクリエイティブな感性も育つと思います。 いつもと違う見方をしてみる事、オススメです!