千利休と想像力
前回「見えないものを表現する日本人」と題して余白の美についてご紹介しました。
今回も見えないものに焦点を当てたいと思います。
日本人は見えないものに美を見出すのが得意なのかもしれません。
安土桃山時代の茶人、千利休は侘茶(わびちゃ)を完成させました。
「花をのみ 待つらん人に 山里の 雪間の草の 春をみせばや」
(現代語訳:花が咲くことばかりを待っている人に、山里の雪の中に芽吹く草花の春を見せたいものだ)
藤原家隆が詠んだこの歌を利休は侘茶の精神として例えています。
雪の中に春を感じる感性。まさに想像力の美ですよね。
千利休は禅の思想を侘茶に取り入れました。
枯山水や水墨画に代表される禅宗文化にも想像力の美が潜んでいます。
あたかもそこに水が流れているかのように庭園を表現しているのが枯山水です。
また、「墨は五彩を兼ねる」という言葉があるように、モノクロームの中に色彩を表現しているのが水墨画。
一見質素にも見えるシンプルさの中に私たちは無限の美しさを感じる事ができるのです。
豪華絢爛がもてはやされた安土桃山時代に利休の繊細な美的感覚は卓越していました。
織田信長や豊臣秀吉からも一目置かれていたと記録されています。
千利休の愛した侘・寂は今日においても日本人の美的感覚に根付いているように感じます。
それはただシンプルにすればよいというものではありません。
千利休にはこんなエピソードがあります。
庭掃除をしていたお弟子さんが落ち葉を綺麗に掃きました。
すると千利休は、あえて葉を少し撒きました。
「少し落ち葉が残っている方が自然で美しい」と。
整然としている・規律に沿ったものが美しいと見られがちですが、
敢て不規則性を出して自然な美しさを演出したのでした。
日本人の伝統的な美的感覚は自然と共にあります。
是非一度身の回りの美を探してみてくださいね。
世界で最もクリエイティブな国
少し古いデータですが、2016年アドビシステムズが、世界5か国5000人に行った調査があります。
この中で「世界で一番クリエイティブな国はどこか」と聞いたところ、日本が最多でした。
関連リンク:アドビ、クリエイティビティに関する世界的な意識調査「State of Create: 2016」の結果を発表
世界で認められている日本人のクリエイティビティはこのような文化背景が影響しているのかもしれません。
しかし、残念なことにこの調査では、「大半の日本人は自らをクリエイティブであるとは考えていませんでした。」との結果が出ています。
日本人は想像力豊かでクリエイティブなんだ!ともっと自信を持っても良いのかもしれません。