状況の美
あなたが一番美しいと思うものは何ですか?
今回は日本人の美意識について考えてみたいと思います。
日本人の美的感覚について「日本人にとって美しさとは何か/高階秀爾 著」に興味深いエピソードが紹介されています。
”アメリカでなら「一番美しい動物は」ときけば、すぐ「馬」とか「ライオン」とか、何か答えが返ってくる。
ところが同じ質問を日本人にすると、「さあ、何だろうな」とはなはだ歯切れが悪い。
そこを無理に、何でも一番美しいものを挙げてほしいと言うと、「そうだなあ、夕焼けの空に小鳥たちがぱあっと飛び立っているところかな」
といったような答えになる。”
この文章を読んで「ああ、わかる」と感じた方もいるのではないでしょうか。
高階先生はこのような日本人の感覚を「状況の美」と表現しています。
ここで清少納言が書いた枕草子の冒頭をご紹介します。
「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。 」
明け方のゆるやかに移り変わる情景を鋭敏に表現しています。
ただ、「春」、「あけぼの」ではなく、変化する状況を美しいと表現しているのです。
世界的に優れた色彩感覚
日本人は古くから自然の中に美を見出す傾向があります。
日本には四季がある為、季節ごとに風景が変わります。植物も色を変え姿を変えます。
その移りゆく景色の中で、観察能力、色彩感覚が研ぎ澄まされたのかもしれません。
実際、日本の植物の数はヨーロッパに比べると遥かに多く、イギリスとの比較では倍以上あります。
日本の伝統色の名称は茜、草色など植物にちなんだ色が多くあるのですよ。
こういった状況の美を鋭く捉え、言葉にするもの日本人は大得意。
俳句は世界一短い詩と言われています。与えられた文字数の中に状況の美が詰め込まれています。
日本語は語彙が多いので、短い文字数でも多様な表現をすることができるのです。
そう考えると、現代においては日本人とTwitterが相性が良いのは必然なのかもしれませんね。