2019.10.06
「芸術の秋」でも夏でも
東京
ライター
来た、見た、行った!
かつらひさこ氏
暑さはまだまだ残るが、ようやく秋本番になりつつある。
「芸術の秋」ということで、観たい映画をどんどん観ている(秋でなくても観たい映画は観ているが)。
今月は「人間失格 太宰治と3人の女たち」と「記憶にございません!」を観てきた。
「人間失格~」の方は、太宰治の「人間」としてのダメっぷりを小栗旬さんが鬼気迫る感じで演じており、太宰という天才に惚れてしまった女たちの強さと哀しみが印象的だった。
中でも太宰の才能を誰より愛した、太宰の妻・美知子を演じた宮沢りえさんの演技に感情を揺さぶられた。何よりも蜷川実花さんならではの色彩がとても美しく、画を観ただけで監督の個性が観客にすぐ伝わるのはやはり素晴らしい。
三谷幸喜さんの作品はずっと好きで、必ず映画館で観ている。今回は「記憶を失った総理大臣の話」というファンタジー感のある内容なのだが、政治という伏魔殿でとんでもない状況に陥った総理のあたふたぶりが大変面白い。
多少ご都合主義な部分もなくはないが、「まずあり得ない」設定の中でリアリティを出し、そのずれから笑いを生みだしていくキャストとスタッフの全力を感じた。
私が好きなタイプの作品は、笑いと希望があって「人生捨てたもんじゃないな。明日からまた頑張ろう」と思わせてくれる感じの作品で、映画とはそういうおとぎ話であって欲しいのだ。
ところで、観たい映画はなるべく映画館で観るようにしている。その方が演出や音楽が響いて内容がストレートに入ってくる気がするからだ。
役者の演技もまた然りで、その上手さやハマりっぷりだけでなく「あれ?この方もうちょっと上手いと思ってたけど…」という、役者としての現在の力量も伝わってしまうのだから、ごまかしが効かないスクリーンは面白い。
プロフィール
ライター
かつらひさこ氏
1975年札幌市生まれ。自分が思い描いていた予定より随分早めの結婚、出産、育児を経て、6年前からライティングを中心とした仕事を始める。毒にも薬にもならない読みやすい文章を書くことがモットー。趣味はクイズと人間観察。