感性とデザイン性に圧倒される『ミュシャ展~マルチ・アーティストの先駆者~』
コロナ等の影響もあり、なかなか会えずにいた友人と数年ぶりの再会。
双方にとって馴染み深い友も交え、3人で向かったのが福岡市美術館で開催されている『ミュシャ展~マルチ・アーティストの先駆者~』である。
興味深い展覧会はたくさんあるけれど、何となく学生時代から「ミュシャ展と伊藤若冲展は近くでやっていたら行くもの」という勢いで足を運んでいる気がする。
そんなわけで、今回もSNSで友人が行きたいな~と呟いていたのに飛びつき、いつぶりかの鑑賞が叶った。
もはやミュシャが懐かしい縁を繋いでくれた、と言っても過言ではないかもしれない。
水景公園に佇む、穏やかな美術館
福岡市美術館は、都市の中にある雄大な水景公園「大濠公園」の一角にあるゆったりとした雰囲気の美術館。
入り口には草間彌生氏による「南瓜」のオブジェが堂々と座し、目印のように行き先を教えてくれる。
公園そのものは地域の人々の憩いの場として賑わっているが、こちらの美術館は広々とした造りだからか、人気の展覧会でも窮屈な印象はなく、穏やかに作品を眺められる印象だ。
さて、いよいよミュシャ展に足を運ぶと、何と「写真撮影OK」の文字が。
しかも全作品、フラッシュさえ焚かなければ(そして動画でなければ)スマートフォンで撮っても構わないとのこと。
元々図録を購入する予定ではあったものの、特にお気に入りの作品を画像として収めておけるのは有難い……!と感動しつつ、緩やかに歩を進める。
総合芸術家の、様々な魅力に出逢う
ミュシャといえば雑誌やポスター、書籍の挿絵などに用いられたように、奥ゆきを感じさせる繊細な曲線と、鮮やかでありながらも優しい色使いが特徴的なイメージだ。
所謂「ミュシャ・スタイル」と呼ばれた豊かな独自性は、現代で言うところのイラストレーターの先駆けとしての一面も覗かせる。
ひときわ現代の人々の心にも響きやすいのは、やはり連作のセンスなのではないだろうか。
12ヶ月それぞれにイメージされる女性の姿を描いたものや、朝・昼・夕・夜をテーマに女神のような女性たちを表現したものなど、キャラクター性にも通じる豊かな感性が窺える。
また、女優サラ・ベルナールが彼のタッチを気に入り、主演舞台のポスターを次々に依頼したという作品たちにも注目だ。彼女自身の造形を大切にしつつ、背景にミュシャならではの解釈で内容の魅力がしっかりとまとめられているのが分かるだろう。
いっぽうで、油彩や素描、水彩画などを見ても、画家としてのたしかな手腕が感じられるところにも感銘を受けた。
商業的な価値を見出され、時代に即した手法で幅広く活躍したミュシャだが、やはり基礎を身に着けた上での「マルチ・アーティスト」なのだなあと実感する。
そんな風に各々のペースで鑑賞を楽しんだのち、会場を出てから友人と合流した。
「絵が上手い」
「本当に絵が上手い」
「すごい」
開口一番、お互いに思わず漏れる笑み。
うーん分かる。素直に言えば、それが本心なのである。
もう少し高尚な言葉で語れれば良いのだが、近年ではもう開き直って楽しむことにしている。
ただただ、流麗なタッチと色使いに圧倒される。その作品の存在感に感動する。美術館とは私にとって、作品との距離感を確認できる貴重な場所なのかもしれない。
ちなみに今回、図録とともに専用のトートバッグも用意されており、セットで買うととってもオトク。
普段使いしやすそうなデザインのバッグが、正規価格より300円ほど安くなる。
決して回し者ではないが、図録を購入する際には健闘してみてはいかがだろうか。(本当は版画も欲しかったな……と想いを馳せつつ)
会期:2023年4月8日(土)~6月4日(日)
会場:福岡市美術館
所在地:福岡市中央区大濠公園 1-6
アクセス: 大濠公園駅 3・6番出口より徒歩10分
開館時間:9:30~17:30(月曜休館)
■鑑賞料金
- 一般1,700円
- 高大生1,000円
- 小中生600円