夏野菜がスルスル食べられる!山形県の夏の郷土料理「だし」!

東北
フリーライター
youichi tsunoda
角田陽一

猛暑続きの昨今

クーラーを利かせた部屋に籠ってたまに表に出れば、外気とのギャップでますますバテる今日この頃。
そんな猛暑の折だからこそ、夏野菜が実る。
きゅうり、茄子、トマト、ミョウガ、オクラ、ピーマン…

基本的に夏野菜は葉っぱや根を食べるものではなく、「実」を食べるものである。
実を食べる夏野菜は袋に4、5個まとめて詰め込まれて売られている。
だから、一人暮らしには余る。

そんな夏野菜をスルスルと消費したい!
火や油を使ったコッテリ風味じゃなくて、アッサリ風味がよい。
出来れば火を使いたくない…

そんな悩みに応えてくれる料理が「だし」。

 

だし。
昆布や鰹節や煮干しを煮出して旨味を抽出した「出汁」ではない。
山形県の郷土料理である。
簡単に言えば、夏野菜をみじん切りにして醤油をかけただけの料理である。

だがこれが不思議と美味い。
基本のレシピにひと手間加えれば、さらに旨味が増す。

以下、基本のレシピ。

材料:
ナス1本、キュウリ1本、みょうが1個、オクラ1本、ショウガ少々、醤油、濃縮めんつゆ

作り方:
1:ナスは細切りにして水に漬け、アクを抜く。オクラはサッと湯通しした上で冷ます(生のままでもかまいません)。

2:調味料以外のすべての材料(野菜)を、5ミリ角ほどのみじん切りにして容器に入れる。

3:全体に醤油と濃縮めんつゆを回し掛け、よく混ぜる。

4:容器に蓋をして冷蔵庫に入れ、数時間冷やせば完成。

大正から昭和初期にかけての日本各地の日常の食生活をまとめた農文協の「日本の食生活全集」。

 
画像はamazonから

その「山形の食事」では、県内各地の「だし」をこのように説明する。

***
村山盆地の天童市
もぎたてのなす、きゅうり、みょうが、ねぎを粗めのみじん切りにして、削り鰹と醤油で味をつけ温かいご飯にかける。

村山山間、朝日町
もぎたてのなす、きゅうり、しそ、ねぎ、青なんば(青唐辛子)を刻んで合わせ、醤油をかける。生豆腐にだしがあれば、なおうまい。

置賜盆地、長井市
畑からなす、きゅうり、みょうが、しその葉を摘んできれいに洗い、細かく刻んで混ぜ合わせ、醤油をかけて食べる。枝豆を入れると色どりがよく美味しい。
***

などと説明される、歴史ある料理である。
これら大正、昭和期のレシピでは野菜をただ刻んで醤油をかけたのみだが、「オクラ」「とろろ昆布」など粘りのある素材を加えれば素材のまとまりがよく、飯や豆腐にかけてもバラけない。

さて「だし」の食べ方の基本は、炊きたての飯か豆腐にかける。
だが私は「釜たま素麺」を挙げたい。

茹で上げた素麺は冷水で〆ず、熱いままで丼に盛る。
生卵を入れてよく混ぜ、熱で半熟状態にする。

そこに「だし」をたっぷりかける。味が薄いならば麺つゆを少々。

これが「だし」の釜たまソーメン。
一気にすすり込めば美味い!

プロフィール
フリーライター
角田陽一
1974年、北海道生まれ。2004年よりフリーライター。食文化やアウトドア、そして故郷である北海道の歴史文化をモチーフに執筆中。 著書に『図解アイヌ』(新紀元社)、執筆協力に『1時間でわかるアイヌの文化と歴史』(宝島社)など。現在、雑誌『時空旅人』、『男の隠れ家』で記事執筆中。

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP