宮城芋煮と山形芋煮から「多様性」を考えてみたかった
東北、主に宮城県と山形県の秋の風物詩「芋煮」。
そして芋煮を作って親しい人たちと食べることを「芋煮会」といい、仙台の場合は広瀬川の河川敷で、豚肉に味噌味の芋煮を作って食べるのが通例です。
ですが、山形県ではこの芋煮を牛肉と醤油味で作るところが多いそうです。
なので、両県の出身者が毎年この時期に芋煮会で鉢合わせ、手違いで鍋が一つしかない……という状況になると高確率で揉めます。
そして山形サイドから「宮城の芋煮は芋煮じゃなくて豚汁」と言われ、宮城サイドは「河原でみんなで食べてるから芋煮だー!!」と、謎の理屈を添えてブチ切れるまでがワンセットです。
そういえば先日、とあるインスタントカップ麺のうどんで「東北芋煮味(醤油)」と書かれたものが発売になったとSNSで投稿された時は、宮城関係者と思われるユーザーが次々と怒りを露わにしていたなぁ……。
インターネット上ではこの無益な争いは「芋煮戦争」と呼ばれているようです。
他県の人から見ると「おいしければどっちでもいいじゃん」と思われるでしょう。
しかし、それはできません。
宮城人にとって「宮城の芋煮は豚肉に味噌」。これが唯一無二のアイデンティティーで、よほどのことがない限りこれからも揺るがないでしょう。
反対に、山形の人にとっては「醤油に牛肉」が芋煮の正義(ジャスティス)で、どんなにおいしい宮城の芋煮を口にすることがあっても「でもこれは自分たちの芋煮じゃない」と思うでしょう。
昨今、何かと「多様性」が訴えられる世の中です。
芋煮に置き換えると、多様性とは「お互いの芋煮の違いを認めて受け入れなさい」ということになると思います。
でもそれは、決して「山形の芋煮と宮城の芋煮を同じ鍋に入れなさい」ということにはならないと思います。
「どちらとも争いを生まない、第三の芋煮を作ればいい」というアイデアもありますが、実際に「鶏肉に塩味の芋煮」というものを作った結果、両サイドからあまり受け入れられなかった事例もあります(私もいただきましたが、コレジャナイ感がものすごかったです。味が薄かっただけかもしれませんが……)。
同じ場所で鍋を分け、それぞれに作り分けて、食べたい人が自分のお椀にすくって、価値観を分かち合える人たちと「おいしいね」って言って食べればいい。
「多様性」について、最近そのように考えるようになりました。
……言いたいこと、伝わりました?(超不安)
【写真提供:宮城県観光プロモーション推進室】