私的記憶をたどる旅

choco旅 vol.11
ライター
DECO KATO
加藤 デコ

あけましておめでとうございます。

新年も15日、20日…と日が過ぎると、新鮮味というか初々しさというか、ありがたみが減ってしまうような気がします。いい意味での緊張感を保って日々、過ごしたいと思うのですが…。

 

祖父母の暮らした家へ

さて、下の写真の空き地は私の母の生家の跡、言い換えると祖父母が暮らしていた家の跡地です。私の実家と同じ市内にあります。決して遠いところではないのですが、祖父母が亡くなり親族がこの家から離れたため、自然に足を向けない場所になってしまいました。そこで、ふらっと出かけてみた次第。

 

私はこの家に数度、それも幼いころ、誰も住まなくなってからしか入ったことがありません。それでも、こうして空き地になってしまうと「兵どもが夢の跡」という気分になります。祖父母とその子どもたちがきっと、ガヤガヤと暮らしていたでしょうから。

右隣はガラス屋さんで、駄菓子屋さんも営んでいました。ガラス蓋のついた木箱がならび、駄菓子が入っていた様子は、おぼろげに記憶があります。写真左上、建築中(改修中)のお宅の場所には大あん巻屋さんがあり、焼きそばなども売っていたようです。このお店の一方は国道1号線に面しており、夏になると通行止めにして地域のお祭りがおこなわれていました。母は2階にあげてもらい、お祭りを見物したと言います。

ぼーっと眺めていると、数軒向こうのお宅から男性が出てこられたので、声をかけてみました。祖父母のことはご存じなかったのですが、近所のお宅がどこへ引っ越されたか、改築や新築をされたかなどお話をうかがうことができ、「隣近所」をイメージすることができました。

 

川が結ぶ2つの世界

祖父は大の旅行好き。この家のすぐ近くにもJRの駅があり、そこからよく旅に出かけました。いまだに踏み切りがあり、カランカランとなる音がよく響きます。踏切の音って最近、珍しいですよね。

線路は川と交差していて、川沿いには桜並木。春になると花筏ができ、地域の方は楽しみにしています。

この川をたどって10分ほど歩くと、たどりつくのは私が通った高校です。私が高校生だったのはずっと昔ですが、それでも祖父母の家よりはるかにリアリティがあります。時間の異なる2つの世界――幼かったころの自分と祖父母の家の世界と、高校生の自分をめぐる世界――が美しい桜を擁する小さな川によってつながっている。そのことは私を不思議な気分にさせてくれます。

 

 

私的な場所をめぐるおもしろさ

母方の祖父は愛媛県松山市、祖母は兵庫県丹波篠山市の出身です。町名や番地がわかるようなら一度訪ねてみたいもの。私にしか関係のない、私しか興味のない場所ですが、きっと感じるところがあるのではないかと…。そこまででなくとも、小学校や中学校の通学路を今、歩いてみると、当時は見えなかった発見があるのではないでしょうか。

名所旧跡・観光スポットでないからこそ、ほっとする「私的」な旅。ぜひ、味わってみてください。

プロフィール
ライター
加藤 デコ
目指せ、ソロワーク、ソロ旅、ソロ温泉。 そのために、もの書きとしてがんばって働きます。

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