引っ越しをめぐる話

choco旅 vol.12
ライター
DECO KATO
加藤 デコ

1月末に引っ越しをした。

7年間住んだ愛知県名古屋市から、実家のある三重県四日市市へ。名古屋の部屋は悪くなかった。名古屋市民ならだれでも知っている山崎川の桜を、自転車10分で見に行けた。

ものごころついてから何度目の引っ越しか…なんと12回目である。これは多いのか少ないのか?どっちだろう?

20代のころは2年おきに引っ越ししていた。京都市にいて、いろんなところに住んでみたかったからだ。最初は大徳寺の西隣り。この部屋にはお風呂がなく、初めて銭湯に通った。大きいお風呂の快楽?をここで知った。しかし、銭湯の営業時間に合わせての生活はいささか窮屈でもあった。

ちなみに、エアコンもなかった。これはきつかった。そこで2年後、お風呂とエアコンのある、龍安寺近くの部屋に引っ越した。近くにJAZZ喫茶があり、入り浸ることになる。喫茶店でダラダラと本を読むのはこんなに楽しいのか~と。

その後も、西陣のまんなかとか、窓を開けたら嵐山とか、二条城まで歩いて10分とか、京都らしい部屋を探したわけではないのだけれど、あとから思うといずれも「THE 京都」だった。どの部屋も楽しかった。どこに住んでいても、少し歩けば京都らしい、何か楽しいものがある。どの街だってきっとそうなんだろうけれど、京都は街の大きさも手ごろ、目に見える歴史モノ・京都モノがわかりやすく存在していて、街の楽しみ方を身につけるのにうってつけなんだろうと思う。

ちなみに、個人的には嵐山の部屋がいちばんよかった。渡月橋をわたっての通勤という得難い経験をできたからだ。ただし、日曜日に出かけるのはここがいちばん大変だった。嵐山の街も道路も電車も観光客でいっぱいで、オーバーツーリズムのはしりだったかもしれない。

ところで、引っ越してしまうと自分の部屋はすっかり消えてなくなる。だから準備を始める前に記念に写真を撮っておこう…と毎度思うのだけれども、撮ったためしがない。荷物を詰め始めて「そういえば…」と思い出すのだ。すでに、部屋は崩れ始めている。これはもう、私の部屋じゃない。なんて切ないんだ…そう、切ないのである。自分の巣だったのに、あっけなくなくなってしまった。元に戻せるはずもなく…第一、そんな面倒なことはしたくない。

名古屋で借りていた部屋は家具・家電付きの部屋だったこともあり、整理が終わっても引っ越し感はあまりない。せっかく撮影できたのに残念。

ご近所のおいしいベトナム料理店ともこれでお別れかぁ。引っ越しの寂しさがこみ上げる瞬間だ。

春になる頃には立派な三重県民、四日市市民になって、名古屋のことはすっかり忘れていそうな気もする。

プロフィール
ライター
加藤 デコ
目指せ、ソロワーク、ソロ旅、ソロ温泉。 そのために、もの書きとしてがんばって働きます。

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