職種その他2012.03.14

草間彌生展

ARTY FACT LONDON Vol.72
ARTY FACT LONDON コウヅマノエ

先月始めからロンドンのテートモダンで草間彌生の回顧展覧会が始まりました。 これまでに、マドリッドのソフィア美術館、パリのポンピドゥーセンター、そして現在のロンドンでの展示のあとは、ニューヨークのホイットニー美術館で巡回展示されるそうです。これだけの数の世界でも有名なトップクラスの美術館で日本人女性アーティストの大規模な回顧展が開かれたのは、どうやら草間彌生が初めてらしいです。

草間彌生の回顧展覧会

草間彌生の回顧展覧会

草間彌生の回顧展覧会

草間彌生の回顧展覧会

草間彌生の回顧展覧会

草間彌生の回顧展覧会

そんな世界で有名な日本を代表するアーティストであり、なんと82歳の草間彌生の、延々にに続く水玉模様、無限に繋がる細かな編み目模様など、かなり個性的な作品たちが展示スペースいっぱいに広がり、強力なエネルギーを発していました。 というか、展示フロアーに降り立つと、そこはもう「ザ・草間ワールド」。草間彌生展の向かいで行われているアーティストの展示は、この強烈さに完璧に食われてました…。

Infinity Mirrored Room―Filled with the Brilliance of Life

Infinity Mirrored Room―Filled with the Brilliance of Life

イギリスの雑誌や新聞でこの展覧会のレビューを見ている中で最も取り上げられていたのは、「Infinity Mirrored Room―Filled with the Brilliance of Life」という作品。

四方を鏡で覆われた真っ暗なスペースの中に一歩足を踏み入れると、そこには色とりどりの無数の星が瞬く無限に広がる宇宙空間。自分自身がまるで宇宙遊泳しているような、一瞬そんな錯覚に陥るこの作品を見て訪れたお客さんたちは、ひと言「ゴージャス!」とか「こんな素敵な作品は今までに見た事がないわ」とか、ただもう作品に圧倒されて「ほ~」とか「うわぁー」とか。あちこちから色んな賞賛の声が聞こえてきていました。

展示のある階とは別の場所には、すべてが真っ白に塗られた空間にカラフルな丸いシールで覆い尽くされた部屋の作品がありました。色んなところで話題になっているこの作品、実は訪れた子供たちの手によって作られています。『The Obliteration Room』というタイトルのこの観客参加型作品は、来場した子供たちに1枚ずつシールが配られ、好きな場所に貼って行ってね!という企画です。

The Obliteration Room

The Obliteration Room

The Obliteration Room

The Obliteration Room

うっかりすると家中どこにでもシールを貼ってしまう子供たちですが、ここではお構いなし。子供たちは楽しそうに、壁やテーブル、ぬいぐるみやカップ、部屋の中のあらゆるところにシールをぺたぺた。私が訪れた時には、手の届く範囲にはシールが何重にも貼られていて、白いスペースは天井しかないといった感じでしたが、お父さんに肩車してもらい貼っている子なんかもいました。

ちなみに、この巡回展覧会は、ルイ・ヴィトンが冠スポンサーとなっているのですが、現在ルイ・ヴィトンのアーティスティック・ディレクターであるマーク・ジェイコブズと草間彌生のコラボで、ヴィトンのモノグラムと草間彌生のポルカ・ドットをモチーフに使用した限定コレクションが販売されるそうです。ヴィトンが新しく開設した草間彌生のコラボレーションサイトの中で、マーク・ジェイコブスは、草間彌生を「とてもチャーミングで暖かい人」だと評しています。また、今回の彼女とのコラボについては「時間をこえた永遠に続くエンドレスなプロジェクトだ」と話しています。以前ヴィトンとのコラボで話題になった村上隆の時のように、今回も、ファッション界の重鎮とアート界のカリスマとのコラボによる斬新なデザインの商品たちが、近いうちに店頭に並ぶことになるでしょう。

それにしても、草間彌生の作品が発するエネルギーは本当に強烈です。まるで展示スペース全体がパワースポットとなっている感じです。彼女の作品を見たあとに他のアーティストの作品を見ると、どことなく醒めた感じでちょっと大人しい印象すら受けます。草間彌生の作品が世界で人気なのは、独特な作風だけでなく、80代でも今なおパワフルに作品を作り続ける、彼女の満ちあふれるエネルギーが感じられるからなのだと思います。

Profile of コウヅマ ノエ

コウヅマノエ

女子美術短期大学卒業後、デザイン事務所勤務。その後、雑誌『エルジャポン』のデザイナーを経て、フリーのグラフィックデザイナーとして様々な雑誌のデザインを手掛ける。2003年に渡英し、ロンドンにあるRavensbourne CollegeでInteractive digital Media の修士号を取得。現在は南ロンドンで様々なプロジェクトに参加しつつ、ロンドン生活を満喫中

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