「アニメ番組制作者が語る制作エピソード!」その③~アニメ制作における音楽の役割と重要性・制作者のこだわり~
こんにちは。
フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー
関田有應(せきたゆうおう)です。
15回目のコラムは「アニメ番組制作者が語る制作エピソード!」その③
~アニメ制作における音楽の役割と重要性・制作者のこだわり~
今回は私のアニメ制作における音楽プロデューサーとしての想いと、音楽制作のお話をさせて頂きます。
私にとって、テレビ番組制作での音楽制作は、映像制作と同じぐらい大切な表現方法です。
映像は目から入る情報!
音楽は耳から入る情報!
2つの情報のクオリティを上げる事により番組の質が上がると信じていました。
最初に、局プロデューサー、制作プロデューサー、監督、音響監督にOP・ED・BGM・挿入歌・キャラソン・アニソンの全ての音楽プロデュースを私が行いたい、という旨をお話しさせて頂きました。
いわゆる「根回し」です。
「根回し」という言葉は、最近あまり使われていない言葉ですが、これは関係者の皆様に事前に意図をお伝えして、ご了承を頂くために行う事です。
前職の制作プロダクションが、音楽出版社でもあった事や、私自身、音楽が大好きで番組制作プロデューサーと音楽プロデューサーの両方の業務を行っていた事もお話させて頂き、私の音楽制作における熱い想いをお伝えしたところ、全ての皆様にご納得頂き、私にお任せ頂く事でご了承を頂戴いたしました。
こうなったら 「水を得た魚」 「プールに入ったカバ」 です!
思うがまま!好き勝手!
しかし大前提は、
視聴者の笑顔!
視聴率を上げる!
エンタ-テイメントビジネスとして成果・結果を出す!
この3つの約束の中で音楽プロデュースを行う。
これが自分で決めた音楽プロデューサーとしての覚悟でした。
どのような音楽ジャンル・アレンジを含む方向性をどうするか!
そのためには、番組の特徴、対象視聴者・放送日・放送時間など、プリプロダクションを進めて行くうちに決まった事を基本において、音楽の方向性を探り始めました。
コンセプトは、
未就学・就学児童には新しくも楽しくなるような音楽。
親御様にはご自身がキラキラ輝く青春時代・社会人の頃に聴いていた、懐かしくも、心地よく、安心して聴いて頂ける音楽。
すべてのファミリーに受け入れて頂ける、ちょっとだけオシャレな音楽!として決めました。
番組のテーマ・世界観・方向性を決める要素のひとつとして、放送日時も重要です。
放送日時が、毎週金曜日の18:30からの30分枠のアニメ番組として編成されました。
この時間帯は、ほとんどの親御さんが夕食の支度をされている時間ですので、お子さんと一緒にアニメ番組を観る事は難しいのではないか。
そうであったら、耳から入る情報としての音楽から、お子さんたちが安心して観て頂けるアニメ番組である事をお伝え出来るような、親御さんにとっても、爽やかで何かワクワクするようなお気持ちになって頂けるBGMだったら良いのでは、と考えました。
なんかオシャレな音楽! ちょっとイケテルBGM! いいねぇ!
私の息子がちょうど未就学児童でしたので、親御さんたちともお会いする機会もあり、お好きな音楽ジャンルやアーティストの話をさせて頂きました。
私を含め、親御さん世代がお聞きになられていた音楽は、AOR(アダルト・オリエント・ロック)モータウン・サウンド、カリフォルニア・サウンド、JPOP・シティーサウンドです。その音楽の世界観をモチーフとする事に決めました。
その中でも特に爽やかなサウンドMaj7(メジャーセブンス)系のコード進行での楽曲制作、楽器の音色まで、そのジャンルの音楽を改めて聴き直し、出来上がった音楽を頭の中でイメージ出来る位まで激考(げきこう)しました。
私は音楽制作に関わるスタッフすべての方、特に(作曲・編曲)コンポーザーの方にBGM(劇伴奏音楽)制作にあたり、自分の考え方と、番組音楽の世界観を伝える方法として、資料をお渡しする事以上に私の想いを熱く語らせて頂き、ご理解頂くまで何度もお話をさせて頂きました。
エレキギター、エレキベースはシングルコイルの音色。
エレクトロニックピアノの音はアメリカの某メーカーの音色。
クラビネット・エレキシタールも使って欲しい。
今思えば、相当面倒な音楽プロデューサーだったのではないかと思います。
まだ、子供向けアニメ番組の音楽制作に対して、
「所詮、子供が聴く音楽なんだからそれなりの体裁が整っていれば良い!」
という風潮が根強かった頃です。
「子供向けアニメの音楽制作になんでここまで拘るんですか」とも言われました。
それでは、今までの子供向けアニメ番組BGMと何ら変わりがない!
そんな音楽制作なら、私が行わなくても別のプロデューサーが行えば良い。
私が、プロデューサーをさせて頂く限りは、新しい手法や子供むけアニメ番組の音楽のあり方すら変えてしまう位の「熱」と「チェレンジ精神」で挑み、今までに無い子供向けのアニメ音楽・BGMを制作し、作画と音楽でアニメ番組制作を行う。
「魂」を入れる!
チャレンジ精神でやり遂げる!
仕事をする上で常に新しい事を行う。
それがプロデューサーとしての私の信念でありポリシーです。
出来上がったBGMは私の想像以上のクオリティでした。
アレンジの良さが光る素晴らしいセンスあふれる楽曲ばかり。
あの時の感動は今でも忘れません。
オーダーに対して、それ以上の価値提供(楽曲制作)を行う。
正にプロフェッショナルの仕事です。
番組は、好調な滑り出しで、週を重ねる毎に視聴率も右肩上がり!
音楽の評判も良く、BGM集のCDも発売され、各局の番組BGMでも使用されるという、 思いがけない結果を生み出しました。
もうひとつ、私がお願いしていた事があります。
それは「BGMを各キャラクターのテーマソングにも出来るように」というお願いです。
このBGMが流れると、そのキャラクターが登場する。
分かりやすいし、そのキャラクターが好きな子供たちにしてみれば、登場音楽です。
さらに、音楽制作に徹底した拘りを持つ私は、もうひとつのたくらみを持っていました。
それはキャラクター登場BGM(劇伴奏音楽)を、声優の皆さんにキャラクターとして歌って頂きキャラクターソングにする!という事です。
登場BGMからキャラクターソングへ!セカンドステージです。
アニメ番組制作者が語る制作エピソード!」その③
~アニメ制作における音楽の役割と重要性・制作者のこだわり~
今回はここまでです。 次回のお話は、BGMが個性あふれるキャラクターが歌う、キャラクターソングになって行く制作工程や、
私が音楽プロデューサーとして、なぜキャラクターソングを作りたかったのか!そのお話をさせて頂きます。
クリエイターとして歩み始めたアシスタントプロデューサー君。
音楽制作の楽しさは、映像制作と同じ位、限りのない表現の世界です。
志を高く持ち、自分の選んだ道を迷うことなく真っ直ぐに進んで下さい。
そして素敵なプロデューサーになって下さい。
「がんぱれ」
先輩シニアプロデューサーとして心より願う事です。
ここまで読んで頂きありがとうございました。 それではまた次回。
*株式会社フェローズは日本動画協会の会員です。