職種その他2011.08.10

真夏の夜の夢

ARTY FACT LONDON Vol.65
ARTY FACT LONDON コウヅマノエ

暑い夏の日が続いたかと思えば、突然ガクンと気温が下がって一日中雨だったり、天気がくるくるよく変わるロンドンのお天気。あまりの気温の変化の激しさに、最近身体がついていけません。 特に近年は、半袖を着る機会がほとんどないといってもいいくらい夏らしい夏を過ごせぬままいつの間にか夏が終わってしまうというパターンが続いていて、日本のうだるような暑さが恋しいです。

サーペンタインギャラリー

サーペンタインギャラリー

そんなぱっとしない夏真っただ中のロンドンのハイドパーク西側にある公園、ケンジントン・ガーデンズに行ってきました。ロンドン市内中心部にあるこの公園の中には、サーペンタイン・ギャラリーという小規模ながら上質な現代アートを展示するギャラリーがあります。

特に夏は、夏季限定特別企画として、著名な建築家によってデザインされたサマー・パビリオンがギャラリーの隣に建てられ、建築好きな人にとっては、毎年誰が選ばれどんなパビリオンが建てられるのか夏のお楽しみとなっています。2000年に始まったこの企画はこれまで、来年開催されるロンドンオリンピックの水泳会場(Aquatics Centre)を手がけたザハ・ハディット(2000年)や、伊東豊男(2002年), SAANA(妹島和代と西沢立衛によるユニット・2009年)などによっても手がけられています。

今年は、スイスの建築家Peter Zumthor (ピーターズントー)。今回のパビリオンは、存在感のあるまっ黒なシンプルな建物。夏の青い空と芝生の緑に黒い建物が一段と映えて見えます。 真っ暗で一見入りづらそうにも見える建物を入ると、中には狭くて暗い回廊があり、建物の中央には明るく開けた空間が広がり、素朴な感じの花々が植えられた中庭がありました。 この中庭のデザインは、オランダのガーデンデザイナー、Piet Oudolf によるもの。ナチュラルな感じのデザインがシンプルな建物にマッチしていていい感じです。薄暗い森の中をさまよっていたら急に視界が開けて、そこには色とりどりのお花畑があった、と感じをさせるような作りになっていました。

中庭の周囲にはテーブルと椅子が並べられていて、みんなギャラリーのわきに出ていたカフェワゴンで買ったコーヒーを飲んだり、お昼を食べたり、熱心に色んな角度から写真を撮っている人がいたり。みんな思い思いに楽しんでいました。なんとなく縁側で庭を眺めながらお茶を飲んでいるような、日本の庭園のヨーロッパバージョンといった感じのちょっと不思議なほっこりできる空間でした。

23 45 67

ちなみに、このサマー・パビリオンのオープニングパーティは、イギリスを代表するブランド、バーバリーがギャラリーと共同でホストを務めたそうで、ユアン・マクレガーら豪華ゲストが多数来場したとか。機会があれば行ってみたかったです。

そんな素敵なパビリオンは夏の間の約3ヶ月間だけ。10月16日を最後に建物は解体され跡形もなくすべて消えさってしまいます。まるでイギリスの短い夏のはかなさを表しているかのような空間でした。

Profile of コウヅマ ノエ

コウヅマノエ

女子美術短期大学卒業後、デザイン事務所勤務。その後、雑誌『エルジャポン』のデザイナーを経て、フリーのグラフィックデザイナーとして様々な雑誌のデザインを手掛ける。2003年に渡英し、ロンドンにあるRavensbourne CollegeでInteractive digital Media の修士号を取得。現在は南ロンドンで様々なプロジェクトに参加しつつ、ロンドン生活を満喫中

続きを読む
TOP