「アニメ番組制作者が語る制作エピソード!」その④~アニメ制作における音楽の役割と重要性・制作者のこだわり~
こんにちは。
フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザーシニアプロデューサー
関田有應(せきたゆうおう)です。
16回目のコラムは「アニメ番組制作者が語る制作エピソード!」その④
~アニメ制作における音楽の役割と重要性・制作者のこだわり~
今回は私のアニメ制作における音楽プロデューサーとして、キャラクターソングへの想いと、拘りのお話をさせて頂きます。
アニメソング(アニソン)とキャラクターソング(キャラソン)の違いをご存知ですか。
アニメ番組の枠の中で歌われる挿入歌やオープニング・エンディングで歌われる楽曲をアニソンと呼んでいます。
アニソン専門の歌手の方も多くいらっしゃいます。
またオープニング・エンディングなど、アニメのために制作された楽曲ではない、
いわゆるアーティスト楽曲提供(タイアップ楽曲と言います)で使用する事が最近ではとても多く行なわれます。
声優や歌手が、そのアニメ番組のために制作された楽曲を歌う場合も、アニソンとひとくくりに言われる場合もあります。
ではキャラクターソング(キャラソン)とはなんでしょうか。
これはキャラクター役の声優が、キャラクターの声のままで歌を歌った楽曲の事を指します。
番組本編にも歌手表記はキャラクター名しか記載せず、声優の実名はクレジット表記されないのがキャラクターソングです。
大きな意味ではアニソンでくくる場合もありますが、そもそもがキャラクターが歌手であり、
声優がキャラクターの声のままで歌う楽曲がキャラクターソングです。
大人はドラマやアニメを観るときには、ストーリーや登場キャラの面白さなど番組そのものを楽しんで見ている(視聴)のですが、
子供たちがアニメ番組を見る様子は少し違います。
番組を見ている(視聴)というより、大好きはキャラクターたちと一緒に遊んだり、歌ったり!
時には自分も仲間のキャラクターになって冒険したり!
アニメを見て(視聴)いながらも番組に参加しているのでは、と私は思いました。
たとえば、キャラクターが歌い出せば一緒に歌い始め、キャラクターが踊り始めれば一緒に踊ります。
そうであれば、子供たちが大好きなキャラクターと一緒に歌って踊れる楽曲作り、
子供たちに楽しんでもらえるアニメ番組をつくるには「素敵なストーリーとキャラクターと一緒に踊り歌える楽曲を作る」のが、
より良い楽しいアニメ番組になるのではないだろうか!
そんな思いから私が目指したのが、キャラクターソングの楽曲制作です。
最初にキャラクターの登場音楽を制作し、次にその楽曲の歌詞を作詞家にお願いします。
キャラクター設定(生い立ちから現在に至るまで)から、キャラクターデザイン(キャラクター設定)を参考に、
そのキャラクターの性格を活かした歌詞を、作詞家に依頼します。
番組オープニングソングは、主人公役の声優がキャラクター声で歌い、仲間のキャラクターがコーラスで参加する構成にしました。
続いて、仲間のキャラクターが歌うキャラソン楽曲制作へ進みます。
私が音楽プロデューサーとしても担当させて頂いた番組は、多くのキャラクターが毎回登場するお話の構成でした。
どのキャラクターもカラーが強く、番組の世界観に大きく影響するくらいの個性の持ち主です。
ですので、各キャラクターに合わせて曲のアレンジや、歌詞を作るのは容易ではありません。
音楽制作の現場からは「キャラ数が多いので、ユニットにしてのキャラソン制作を行うのは」というお話を頂き、
それは楽しいと思い、ユニット毎のキャラソン制作をお願いしました。
しかし、仲間のキャラクターが歌う楽曲を作りたいという思いも強く、個性が強いキャラクター中心にキャラソンの制作をお願いしました。
登場キャラの中で双子の兄妹キャラクターがいたのでデュエット曲にしたらどうだろうか。
最初のAメロ・Bメロまでの伴奏は、イントロからアコースティックギターで入り、イントロから歌をかぶせるような構成の楽曲にしたい。
アコースティクギターの音色は、アメリカ製の老舗ギターメーカーのあのギターの音色で!
普段は旅に出ていて、気まぐれに登場するキャラクターには、
日本語ロックを世に広めたバンドの名曲をリスペクトした世界観での楽曲制作の提案を行い、
アレンジのモチーフや、楽器はアコースティックギターと電子オルガンの音を入れて、ゆったりとした曲調で!
などなどと想いを伝えさせて頂きました。
もちろん私もレコーディングにも立ち合させて頂きました。
ギター収録の時などは、音色、アドリブ部分にまで私がイメージしている事をお伝えさせて頂きました。
今思えば、大変なご苦労をお掛けしたのではないだろうかと。
いまさらながらですが、反省と感謝の気持ちでいっぱいです。
そんな中でひとつのエピソードをお話させて頂きます。
音楽に拘りの強い私は、作詞家・作曲家とのミーティングの時に、自分の中にくすぶっていた楽曲制作の思いをぶつけました。
ニューヨークで活躍している全世界的に有名な、ジャズ・ロック・フュージョン系の二人組のバンドが有り、
そのアレンジ技法を取り入れた楽曲制作を行いたい!という希望です。
コード進行も複雑で、譜面を見ると恐ろしい位、綿密に計算された構成の音楽で有り、音大の音楽理論の教材にもなりうるような内容です。
ともかくオシャレで都会的、ニューヨークの摩天楼がみえるような楽曲ばかり。
この方向性での、楽曲制作を行いたい旨のお話をさせて頂きました。
ところが作曲家・作詞家の意見は、
「未就学就学向けのアニメ番組には向いていない。今までのBGM・キャラソンの方法性で進める事の方が大切である」でした。
であれば、70年代の管楽器を入れた、アメリカロックのテイストをいれたアレンジ楽曲の方向性はと、
再提案をさせて頂きましたが「管楽器の音色は思った以上に薄くなるのでお勧めできません!」
というご返答で、またもや受け入れてもらえません。
作詞家、作曲家は音楽制作のプロフェッショナルです。
音楽制作を熟知されているからこそ、また子供たちの事を音楽制作者として真剣に考えて取り組んでいるからこそ、
このようなご指摘をされたのでしょう。
エンターテインメントの世界では、個々の役割が有り、最高のパフォーマンスを発揮するのがプロフェッショナルとしての仕事の進め方です。
お互いに納得するところまで追求して、ブレないように同じ方向を向いてコンテンン制作を行う。
これがプロフェッショナル同士の仕事への向き合い方です。
実は3度目の提案を行いました。
もっと都会的な日本のポップス(J-POP)の世界観を、さらに前に出した楽曲制作の提案です。
今回はご理解とご賛同を頂けました。
そこから生まれたのが、キャラクターが歌うエンディングソングです。
そうそう、これこれ。
やっぱそうなんだ!
プロデューサーをやっていて良かった!
その時はいろいろなチャレンジをしたいと思っていたのですが、
今思えば「言い出したら納得しない、引かない、趣味・嗜好に走りすぎようとしている私の事を見抜いて、
番組コンセプトから外れないように、プロフェッショナルとしての対応をして下さったのです。
アニメ番組制作者が語る制作エピソード!」その④
~アニメ制作における音楽の役割と重要性・制作者のこだわり~
今回はここまでです。
次回のお話は、エンディングソングへのこだわりのお話をさせて頂きます。
クリエイターとして歩み始めたアシスタントプロデューサー君。
音楽制作って本当に楽しい世界で終わりの無い無限大の表現の世界です。
志を高く持ち、自分の選んだ道を迷うことなく真っ直ぐに進んで下さい。
そして素敵なプロデューサーになって下さい。
「がんぱれ」
先輩シニアプロデューサーとして心より願う事です。
ここまで読んで頂き有難うございました。
それではまた次回。
*株式会社フェローズは日本動画協会の会員です。