映像2020.12.23

乗り遅れた列車に飛び乗った件

第64話
とりとめないわ
Akira Kadota
門田 陽

いや~、だいぶ乗り遅れました。もちろんずいぶん前から来ていることは知っていましたし早く乗らなくちゃ、とも思っていました。

一緒に乗ろうというお誘いもありました。一人で乗るチャンスも何度かあったのですが、これまでタイミングを逃していました。そんな大人気の列車に冬至を目前にした12月の平日の夜、ようやく乗って来ました。

「鬼滅の刃 無限列車編」。まだ見終わってからさほど時間が経っていませんが、素直に面白かったです。鬼滅のブームはいつから始まったのでしょうか。ファンの人からすればもう何年も前なのでしょうが広く世間一般には去年の後半くらいですよね。そしてこのコロナ渦で一気に加速してちょうど非常事態宣言で街が閉じている頃に少年ジャンプ連載終了のニュース。多くの人が驚いていたような記憶があります。それまで個人的に興味がないフリをしてスル―していたというか、あえて見ないようにしていました。人よりちょっと遅れて始めるのに気恥ずかしさを感じるのは昭和生まれの特長なのかもしれません。「今さら聞けない・・・」や「他人には聞けない・・・」のタイトルで始まる本のターゲットは僕のことが多いです。しかしふだんから後輩やクリエーティブを志す学生さんには「多くの人が好きなものは食わず嫌いせず一度は試すこと。ディズニーやハリーポッターや乃木坂やEXILEやドラえもんを知らないわけにはいかないよね」と常々言い続けているからには何周遅れになったとしても見るしかありません。

さて、いざ見ようと決めたのですが、せっかくここまで見てこなかったのだから予備知識ゼロで見たいと思いました。これがなかなかタイヘンでした。ワールドカップの日本戦やM-1グランプリの決勝をオンタイムで見られなくて録画して見るときの感じに近いでしょうか。どっちが勝ったのか、誰が王者になったのか知らない状態で見ないとつまらないでしょ。なのに、とにかく今はボーッとしていてもスマホやら電車内やら街なかでも何かしら情報が飛び込んできます。完全に素の状態で見ることが難しい時代です。しかもこれだけの超人気作ですからどんなに目を閉じ耳を塞いでもある程度のことは知ってしまうのです。この数ヶ月で僕が知ってしまったこと。

①緑と黒の市松模様の和服を着た少年が主人公で名前はどうやら「タンジロー」であること。
②竹を口に咥えた鬼になった(?)妹がいること。
③タイトルからして「鬼」が重要な物語だろうこと。
④「全集中」というコトバが流行っていること。
⑤どこにいてもよく耳にする主題歌。Li SAの「炎」の歌詞からすると、未来のために何かつらい別れがあるだろうこと。

この5つの前知識のみで映画鑑賞直前に妄想した物語がこちら。

何かの伝統芸能(歌舞伎なのか落語なのかそれとも講談)を志す少年タンジローがきびしい修行の途中で突然鬼に襲われ囚われの身になります。その兄を武道の達人の妹が仲間たちと助けに向かいます。戦いの舞台は近未来の鬼ヶ島。その島への移動手段が無限列車です。途中何人もの仲間を失いながらも妹たちはタンジローの救出に成功。この戦いの最中に妹はタンジローに必殺技「全集中」を教えます(ドラゴンボールの「かめはめ波」のイメージ)。しかしここで妹に思いがけないことが起こるのです。それは鬼の親分との恋。因みに親分はイケメンです。許されるはずのない恋の炎は燃え盛り、鬼との間に子を身籠る妹。そしてその子はとてつもなく強い「鬼滅」となって人間社会に刃を向け地球の征服を企むのです。タンジローはその原因を作った自分を責め妹と同じ武道家に転身をします。そして新たな仲間たちと鬼滅に立ち向かうために再び無限列車へ乗るのでした。つづく。

実際はまるで違うストーリーでした。どんなに知識がなくても十分楽しめる内容でした。

終映後、売店(令和になっても売店は売店と呼ぶのがなぜかフシギな心持ち)でパンフレットを購入。舞台設定は近未来ではなく大正時代だったのですね。和服の謎は解けました。タンジローは「竈門炭治郎」、レンゴクさんのレンの字は「煉」とどちらも想像外で漢字検定1級並みの難しさ。でもきっと子どもたちはみんなスラスラ書けるはず!いまだに伊之助が猪のかぶり物をしている理由や、「全集中」って何なのかはわかりませんが心地よく映画館を後にしました(※写真①)。翌日、野暮用で郵便局に行ったとき「鬼滅の刃」のフレーム切手と年賀状が目に入ったので躊躇なく購入しました(※写真②)。もしサンタクロースがいるのならコミック全23巻をねだりたい気分です。


写真①

写真②

 ところで僕は、エヴァンゲリオンについてもほぼ何も知りませんという話はまたの機会に。

プロフィール
とりとめないわ
門田 陽
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター/コピーライター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州を経て現在に至る。 TCC新人賞、TCC審査委委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

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