インフォメーション イズ ビューティフル
- ARTY FACT LONDON Vol.63
- ARTY FACT LONDON コウヅマノエ
根っからの文系で数学は大の苦手科目。 でもなぜか集計結果や数値データなどの統計は大好き。 そんな私の心を揺さぶるのが、インフォグラフィックと呼ばれるグラフなどのグラフィック。 情報デザインともいわれ、情報、データや知識を視覚表現することで、複雑なインフォメーションを素早く明確にビジュアルで表現。例えば、道路の標識や電車の路線図など、日常生活の中でも身近なところでたくさん用いられています。
というわけで、私がロンドンベースのインフォグラフィック・デザイナー、David McCandlessの名を知ったのはごく最近のこと。 前回お伝えしたアーティストオープンハウスですが、カタログで彼の作品写真を見て「何となく面白そう!」とチェックをしていましたが、結局、彼のスタジオには時間切れで訪れることができませんでした。 と同時に、私が普段よく読むイギリスの新聞『ガーディアン』紙には、見た目にも楽しいインフォグラフィックが多用されていて、一見難しそうに聞こえる内容も、視覚化されることでとても分かりやすく表現されいていつも感心して見ていたのですが、それらが彼のデザインだったと知ったときには、時すでに遅し・・・。 まさかあのガーディアン紙のデザイナーがオープンハウスに参加しているとは思ってもなかったし、それがDavid McCandlessという人物であることも知らなかった!! 今さらですが、もし最初から知っていれば絶対訪れていたのに!と、自分の勉強不足が悔やまれてなりません。
さて、もともとはジャ-ナリストとして20年のキャリアを持つ彼ですが、インフォメーション イズ ビューティフル(http://www.informationisbeautiful.net/)という美しいインフォグラフィックを集めた人気サイトの運営者でもあります。その彼がデザインを始めたのは、驚くべきことに、まだ最近のことなのだそうです。しかも、デザインスクール卒でもなければアートを勉強したわけでもなく、デザインは全て独学なのだそう。そんな彼の情報デザインの美学は、「インフォメーション イズ ビューティフル。データ イズ ビューティフル。そして、ライフ イズ ビューティフル、いかに自分の人生を素晴らしいものにするか。」という言葉に基づいています。 ネットで目にした彼の講演の中で彼は、自分のデザインプロセスを「凝縮された情報のジャングルの中をさまよっている最中に、美しいグラフィックや素晴らしい視覚化のアイディアが湧いてきたときには、ほっとした安堵とともにジャングルから一気に視界が開ける感じになる。新しい種類の二つの言語、視覚(色、形、パターン)とマインド(言葉、数字、コンセプト)、この二つの言葉が自発的に対話を始めると、お互いが相乗効果を産み出す。」と表現していました。 また、「これらの莫大な量のデータをいかに読み込み理解し、そして紙面(画面)という小さなスペースに納めるのか」という問いに、「デザインとは問題の解決であり、エレガントな解決策を提供することである。現代社会においてのインフォグラフィックの役割とは、複雑に絡み合う問題の中から、シンプルな答えをもたらすことでもある。」と、とっても奥深い言葉で答えていました。
余談ですが、私自身、過去にビジネス誌のレイアウト中にあるグラフをデザインしていたことがあるのですが、当時はな~んにも考えておらず、藤子不二雄A原作のテレビアニメ「プロゴルファー猿」にかけて、自らを「プロ・グラファー猿」と呼び、「わいは、猿や~!」と深夜残業の最中、会社の仲間とともに、天才少年ゴルファー猿の自慢の手作りの木製クラブの代りに背中に定規をさし、野生児のごとく叫んだりしていたことがありました(笑)。
そんな楽しい思い出が遠い昔のこととなる以前に、いつの頃からかウェブという新しいメディアが当たり前になり、膨大な量の情報を浴びせられながら生活する毎日となりました。まだまだ歴史の浅いウェブ業界ですが、デザインや技術の発展とともに、感覚として理解できるインフォグラフィックは今後ますます重要になっていくのではないかと思います。
Profile of コウヅマ ノエ
女子美術短期大学卒業後、デザイン事務所勤務。その後、雑誌『エルジャポン』のデザイナーを経て、フリーのグラフィックデザイナーとして様々な雑誌のデザインを手掛ける。2003年に渡英し、ロンドンにあるRavensbourne CollegeでInteractive digital Media の修士号を取得。現在は南ロンドンで様々なプロジェクトに参加しつつ、ロンドン生活を満喫中