ASEANのクリエイティブ産業事情~インドネシア~
Fellows Creative Staff Singapore PTE. LTD.(以下「Fellows Singapore」)代表の大石隼矢(おおいし じゅんや)です。
早いものでこのコラムも3回目となりました。このコラムを始めて文章を書くことを仕事としているライターや小説家、漫画家、脚本家の方々って本当にすごいなと尊敬を深めています。読むのと書くのとでは全く世界が違うのだと実感しています。
シンガポールはこの2月に旧正月を迎え、街並みは赤い装飾一式。どこへ行っても「福」の文字が入った旗やポスターで埋め尽くされていて、場所によっては獅子舞を見ることができます。日本では「あけましておめでとうございます」が一般的な新年のあいさつですが、シンガポールではそれとともに「恭喜発財 (gong xi fa cai / コンシーファーツァイ)」と言います。直訳すると「お金がたくさん入ってきますように」。中華系民が多いマレーシアでも同じような風習だそうで、包装されたポンカン(柑橘類)を訪問した家族や親戚と交換するそうです。(橘が吉の発音に似ているから)
さて第三回は前回に引き続き、ASEANのクリエイティブ産業事情について、その中でも今クリエイティブが“熱い”と言われているインドネシアについて書きたいと思います。
*前回同様にクリエイティブ産業の大分類として、映像・音声/マスコミ/ゲーム/広告・デザイン/出版/WEBサービス/ソフトウェア/建築設計としたいと思います。
まずインドネシアと聞いてもあまりピンと来ていない方のためにインドネシアの概要をご紹介いたします。
インドネシアは東南アジア地域にあり、シンガポールから見て南方に位置します。首都はジャカルタで、人口は世界第4位の約2億6千万人。赤道にまたがっていて、多くの島国で構成されているのですが、その数はなんと1万3466個。日本と同じ島国でも規模が違いますね!そしてASEAN本部が設置されているのもインドネシア・ジャカルタで、東南アジアで唯一G20に参加していることでも知られています。
主な産業は農林水産業とされていてカカオやキャッサバ、ココナッツなどが有名。豊富な水産資源も魅力の一つ。そのほか鉱業資源も豊富で金や天然ガス、ニッケルなどの採掘量が多く、工業では軽工業、食品工業、織物、化学繊維などの工場が多くて、日本からはパナソニック株式会社やオムロン株式会社、株式会社ブリヂストンなどが現地拠点を構えています。
一方でサービス関連の産業についても注目したいインドネシア。特にファッションなどのクリエイティブ分野の育成に注力していて、前回コラムでも触れたとおり急成長を見せています。2015年にはジョコ大統領の下、Indonesian Agency for the Creative Economy(インドネシアクリエイティブ経済庁、通称BEKRAF)という政府直轄組織を設立しています。
更に盛り上がっていくであろう、インドネシアのクリエイティブ産業なのですが、それを加速させる強みとして「人口に対する若年層の厚さ」があります。24歳以下の人口が約40%の約1億人で、今後もさらに増え、その数は2030年までになんと1億8000万人になる予測!(日本の総人口より多い!!)。近年ではクリエイティブ関連のスタートアップ企業も増えているそうで、コンテンツやイベントも開発されてきたそう。日本のポップカルチャーが特に人気で、「ドラえもん」「名探偵コナン」「ドラゴンボール」「ワンピース」などのアニメや漫画が親しまれています。きっとこういったジャパニメーションを小さいころから観て育った世代がインドネシアの次のクリエイティブコンテンツを創っていくのですね!
その豊富な労働力や人件費の面から、日系のソフトウェア開発企業も現地に開発拠点を置いています。またオンライン化も進んでいて、インドネシア5番目のユニコーン企業となったOVOやDANAといった支払いアプリや配車サービスが生まれています。インターネット普及率がこの10年で急速にすすんだことや、SaaS関連のスタートアップの起業が増えたこと、インドネシア政府による中小企業へのデジタル活用支援策などの影響により、IT関連の人材ニーズも高まっています。実際にLinkedInが作成している2020年におけるインドネシア国内求人の成長率ランキング(昨年と比較した伸び率ランキング)によると、10位中7位がITやAI関連、ソフトウェア開発スキルを必要としたポジションという結果もありました。
2位DevOps Engineer
3位Customer Success Specialist
4位Data Scientist
5位JavaScript Developer
6位Back-end Developer
7位Business Operations Specialist
8位Product Owner
9位Acquisition Specialist
10位Software Quality Assurance
すでに年間1兆1000億インドネシアルピア(約83憶円)を創出しているインドネシアのクリエイティブ経済ですが、これからさらに成長していくためには課題もあるようです。その一つが知的財産(IP)問題です。現在、インドネシア国内ではまだまだその認識が低く、海賊版や偽造問題が多発しているそう。こういった問題へ罰則を設けるだけでは足りないと考えられていて、定期的にIPに関する啓蒙セミナーや専用モバイルアプリによるIPに関する基礎情報を提供するようになったそうです。更に意識を高めるために、若い世代への教育の必要性も感じていて、今後それにも注力していくことでしょう。
インドネシアの概要やクリエイティブ産業についてここまで触れてきましたが、私としてはインドネシアがシンガポールの次に進出したい国であることは間違いありません。IT分野では2030年までに900万人の人材不足が発生すると予想している記事もありましたし、コンテンツ領域ではIP問題があるように発展すればするほどチームを構成する専門スタッフが多く必要となるはず。一方でインドネシアは言語や宗教の壁もあってローカライズの必要や現地に精通した人材が必要です。そこにフェローズとして一石を投じ、インドネシアクリエイティブの発展に寄与したい。今はコロナ禍の影響が大きくありますが、その時にいち早く進出するためにも、まずはここシンガポールでご縁を作る実績を一つ一つ積み上げていきます!
好きなバンドはOasis、最近の趣味はNetflixで英語学習、尊敬する歴史上の人物は吉田松陰と白洲次郎、好きな食べ物はカレーライスとらっきょう、嫌いな食べ物はかぼちゃと大学芋、みずがめ座B型、佐々木希とジェームズディーンと富岡義勇(鬼滅の刃)と同じ誕生日。
Twitter:@junya_oishi