今年25年目を迎えたウェビー賞:「Infinite Bad Guy」は、パンデミック中だからこそ生まれたクリエイティブの集結!
1997年から始まり今年25年目を迎えた、その年のベスト・オブ・インターネットを決めるウェビー賞。今年は米国50州と世界70か国以上から13,500件を超えるエントリーがあり、「Special Achievement」「Websites and Moblie sites」、「Video」、「Advertising, Media & PR」他5つのカテゴリから各部門ごとに賞が選出されました。
View this post on Instagram
The Webby Awards@thewebbyawards – Instagram
昨年同様、例年行われている受賞者を招待した大規模な授賞式はせず、MC、プレゼンター、受賞者の各スピーチをウェブサイト上でヴァーチャルセレモニーとして公開。この一年で世界的にもさらにオンライン化が進み、誰しもがネットに費やす時間が増えたことでしょう。そんな状況下での今年の受賞者の模様はどうなっているのでしょうか。個人的に注目した受賞者をご紹介していきたいと思います。
まず、インターネット上で大きな成果を起こし、個人または個人のグループに贈られるWebby Person of the Yearとして選ばれたのはアンソニー・ファウチ所長。
View this post on Instagram
The Webby Awards@thewebbyawards – Instagram
米国立アレルギー感染症研究所の所長であるアンソニー・ファウチ所長は、新型コロナウィルス・パンデミックに関するホワイトハウスのスポークスマンとして、この一年、様々なメディアで発言をしてきました。新型コロナウイルスへの前トランプ大統領の対応を批判したこともあり、ニュースで見た方も多かったのではないでしょうか。
ファウチ所長は、新型コロナウィルスに関する情報を特に若い人に周知してもらうために、多数のソーシャルメディアでインフルエンサーやYouTubeクリエイターと対談しています。
Instagramライブでのマシュー・マコノヒーと新型コロナウイルスについての対談。
View this post on Instagram
Matthew McConaughey@officiallymcconaughey – Instagram
Facebookでのマーク・ザッカーバーグとのワクチンについての対談(抜粋)。
Dr. Fauci & Facebook CEO Mark Zuckerberg Discuss COVID-19 Vaccine | NowThis
NowThis News – YouTube
Instagramライブでジェニファー・ガーナーと新型コロナウイルスの子供への感染について対談。
Dr. Fauci and Jennifer Garner Talk COVID-19 & Kids | NowThis
NowThis News – YouTube
ファウチ所長はワクチン接種の普及に努めてきており、ワクチン接種によりアメリカの感染者数は以前より落ち着いてきています。2021年5月末現在、アメリカでは12歳から16歳の子供のワクチン接種が開始したところ。ソーシャルメディアを使い、新型コロナウイルスやワクチンの情報を若い世代へ周知させたファウチ所長の功績は大きいと言えるでしょう。Webby Person of the Yearに選ばれたのも納得です。
さて次にご紹介するのは、インターネットの経験と機能を斬新でインパクトのある方法で改善した個人や団体に贈られる賞である、Webby Special Achievement Award(特別功労賞)を受賞した、ホセ・アンドレスシェフ。
View this post on Instagram
The Webby Awards@thewebbyawards – Instagram
ホセ・アンドレスシェフは、スペイン料理のシェフとして、アメリカ国内で多数のレストラン経営を行う他、実業家、テレビパーソナリティ、講師として活躍。そして、今回の新型コロナウイルスのパンデミックや自然災害などで食料が困窮しているコミュニティへ出向き、食料を提供するプログラム「World Central Kitchen」の創設者でもあります。パンデミック中の食糧の貧困と不安に取り組むため、「World Central Kitchen」を通じ、オンラインとオフラインの両方でホセシェフのプラットフォームを使用したということにより、今回の受賞となりました。
サンフランシスコのあるコミュニティに提供するために作られているジャンバラヤ。
View this post on Instagram
Jose Andres@chefjoseandres – Instagram
World Central Kitchenが世界中に飛び回りコミュニティへ食料を提供する様子。
View this post on Instagram
Jose Andres@chefjoseandres – Instagram
ちなみにホセシェフのTikTokも面白いですので、ぜひチェックしてみてください。
次にご紹介するのは、Webby Social Movement of the Year。ソーシャルメディアをメガホンとして使用し、強力で影響力のあるメッセージを広く伝え、異種または見落とされた声を集めて、重要な社会運動を行っている個人や団体に贈られます。今年は、Stop AAPI Hateに贈られました。
View this post on Instagram
The Webby Awards@thewebbyawards – Instagram
AAPI はAsian Americans and Pacific Islanders(アジア・太平洋諸島系アメリカ人)の略で、Stop AAPI Hateは、アジア・太平洋諸島系アメリカ人に対する憎悪、暴力、嫌がらせ、差別、忌避、および子供のいじめの事件を追跡し、対応するために立ち上げられた団体です。
前回のコラムでも書いている通り、コロナ禍によりアメリカではアジア人に対する差別やヘイトクライムが増加。Stop AAPI Hateのウェブサイトでは、ヘイトクライムを受けた報告を12か国語で報告することができ、報告された事件は時系列でリストアップされています。
View this post on Instagram
StopAAPIHate@stopaapihate – Instagram
また、#stopaapihateを使った数多くの抗議がソーシャルメディアで投稿されています。Stop AAPI Hateは、Black Lives Matterと同様、インターネットを通じて世の中が変わる大きな運動となることでしょう。この賞が贈られることで、世の中へより大きな影響力が増すことを希望します。
View this post on Instagram
StopAAPIHate@stopaapihate – Instagram
次は、Advertising, Media & PRカテゴリーより、Webby People’s Voice Award for Best Viral PR Campaign(ウェビー賞審査員からではなく、一般投票から選ばれたベストバイラルPRキャンペーン賞)他3部門を受賞した、俳優のケヴィン・ベーコンさんによる#IStayHomeForキャンペーン。
View this post on Instagram
The Webby Awards@thewebbyawards – Instagram
ケヴィン・ベーコンさんは、新型コロナウイルスの蔓延を防ぐ最も重要な手段の一つである「ソーシャルディスタンス」を世の中に広めるため、ソーシャルメディアキャンペーン#IStayHomeForチャレンジを立ち上げました。これは、#IStayHomeForを使って「誰のためにステイホームをするか」を投稿してもらうキャンペーンです。ケヴィンさんは、#IStayHomeForの後にKyraSedgwickと奥さんの名前を付けて、「奥さんのためにステイホームをする」と投稿。
View this post on Instagram
Kevin Bacon@kevinbacon – Instagram
このキャンペーンでは、エルトン・ジョン、デビット・ベッカム、エマ・ワトソン他、有名セレブ多数が参加。2020年3月15日に開始以降3日で、ソーシャルメディアには210万件以上の投稿があったそうです。
View this post on Instagram
David Beckham@davidbeckham – Instagram
View this post on Instagram
Emma Watson@emmawatson – Instagram
ニュース番組や政府から「ステイホームをしてください」と繰り返し言われるよりも、こういったセレブやインフルエンサーとソーシャルメディアを使ったキャンペーンの方が大衆を動かしやすいのだなと実感した受賞でした。
次にご紹介するのは、VideoカテゴリーからComedy: Shortform Video部門で受賞したミュージックビデオ、Dua Lipa Has New Rules for COVID Dating。
DUA LIPA Has ‘New Rules’ For COVID Dating
The Late Late Show with James Corden – YouTube
人気バラエティ番組「The Late Late Show」の司会者、ジェームズ・コーデンとデュア・リパによるミュージックビデオ。デュア・リパのヒット曲「Don’t Start Now」と「New Rules」の歌詞を変えて、「パンデミック中にデートをするための新しいルール」というタイトルで発表されたもの。
この部門は「再生時間が5分未満のコンテンツで、1回の短いエピソードまたは1回限りのエピソードとして作成され、コメディーまたは笑いの芸術作品に贈られる」という賞なのですが、パンデミック中なだけにちょっと悲しいけど笑える、そして楽しい気分にさせてくれるビデオ作品ですよね。
そして最後にご紹介するのは、Websites and Moblie sitesカテゴリーからMusic部門で受賞したInfinite Bad Guy。
「Infinite Bad Guy」は、ビリー・アイリッシュのYouTubeビデオ「Bad Guy」の10億回再生を記念して作られたもので、世界中のファンが楽器や道具他様々な方法でカバーやアレンジし投稿した「Bad Guy」のYouTubeビデオを延々ループで再生し続けるというもの。
下部にあるタグでそれぞれ楽器や音楽ジャンル、道具を選べるようになっており、例えば、#VIOLINを選べばバイオリンで演奏されている「Bad Guy」のビデオを見られ、#JAZZ、#PUNKなどのジャンルや、#ASMRや#TOY CHICKEN(おもちゃの鳥)といった方法や道具などで選ぶこともできます。
ちなみに、おもちゃの鳥を使ったBad Guyカバーがこちら。日本人のクリエイターさんです。再生回数2,000万回超え、異なった言語からのコメントが多数あります。
ビリー・アイリッシュ「バッド・ガイ」|チキンさん【鳴いてみた】びっくりチキンカバー
Chickensan – TouTube
制作したGoogle Creative Labは、何千ものビデオのオーディオをさまざまなテンポ、楽器、キー、スタイルに完全に合わせる必要があったとのことで、そのために「Infinite Bad Guy」は様々な専門的技術が駆使されて作られたようです。
今年のウェビー賞をちらっとご紹介いたしましたが、いかがだったでしょうか。「Bad Guy」の10億回再生というのもすごいですが、「Infinite Bad Guy」は、パンデミック中だからこそ生まれたクリエイティブの集結という感じがして、素晴らしいなと思いました。来年のウェビー賞はどうなるのでしょうか?インターネットの歴史を感じる歴代の受賞者リストも面白いので、ぜひチェックしてみてください。
歴代のウェビー賞受賞者リスト:Webby Gallery + Index
(参考)