毎日がサバイバル!マンハッタンで働くITエンジニア
- Dig It! NYC Vol.57
- Dig It! NYC 藤井さゆり
「マンハッタンで働くITエンジニア」と聞くと、どんなイメージでしょうか? 華やかなイメージ?ハードワークなイメージ?でも、実際は?!
ということで今回は、私の友人であり、ニューヨークでITエンジニアとしてご活躍されている西山久光さんにお会いして、お話を伺うことができました。
西山さんは、ミッドタウンにあるアメリカのIT企業で働いています。本業以外にも、個人での不動産投資や、友人とビジネスを行ったり、勉強会を開催したり、プライベートに忙しい日々を過ごしたりと、充実したニューヨークライフを謳歌されています。
こう書くと華やかなイメージを浮かべるかもしれませんが、世界の中心とも言えるマンハッタンにあるアメリカ企業で働く、ということは、予想以上に厳しい現実があります。それは外国人でなくても、です。
今回登場する西山さんも、厳しい環境でサバイバルされている一人ですが、話を聞いてみると、日々の努力や、ストレスに耐える力、その中で生き抜く術を身に付ける姿勢に、感心し、驚嘆するばかり。一言「たくましい!」に尽きます。
広大なコンクリートジャングルと呼ばれる(!?)、ここニューヨークで、西山さんが日々どうサバイバルしているのかを探りつつ、ご自身のニューヨークライフについてお聞きしました。
まずはお仕事について。ITエンジニアとして具体的にどんなことをしているのか教えてください。
ITエンジニアと言うと、プログラマーやネットワーク関係まで、一般的には幅広く使われていると思いますが、僕はLinuxサーバーの管理者をしています。常時240台ほどのサーバーを一人で管理していて、クライアントのサーバーのセットアップから、運用、管理までを任されています。「ITエンジニア」と聞くと、クリエイティブな感じがしますが、実際にはサーバーの大工さんというか、裏方のようなお仕事です。
サーバーの大工さんと言われると、イメージが掴みやすいですね。実際にデザイナーさんも含めてクリエイティブ業というのは、裏方のお仕事という側面もありますし。 ところで、今お勤めの会社は?
グローバル展開してる金融に特化したIT企業です。元々僕がいたフランスの会社が、今のアメリカの会社に買収された形なのですが、買収前の関係から、僕の部署の本社はパリにあります。僕の業務として具体的に言うと、クライアントである投資銀行やヘッジファンドなどの金融システムで扱うデータセンターの管理者、ということになります。
一日のスケジュールを教えてください。
朝は早めに6時起床。ゆっくりコーヒーを飲みながらメールチェックや、ストレッチをしています。8時前には自宅を出て、8時半に会社着。定時は9時〜5時の勤務ですが、朝は余裕を持って出勤しています。金融マーケットが閉まるのが4時なので、日中はマーケットクローズ後の作業のための準備をすすめます。だいたい4時半位からサーバーシャットダウンや変更作業を始めて、オフィスを出るのが6時位です。休日はジムのボクシングで汗を流しています。
金融システムのデータを扱うというのは、かなり重要なお仕事ですね。
そうですね。もし、マーケットが開いている時に重要な変更作業をして何かあった場合、事故になってしまいます。5分間サーバーがダウンすると大変で、2分単位で訴訟となってしまいますので。
訴訟と聞くとコワい世界ですね。 ちなみに、現在はニューヨークでITエンジニアとしてお仕事されていますが、ここまで来るにはどういう道すじだったのでしょう?
日本で理系の大学を卒業し、日本ユニシスでプログラマーとして働いていました。コンピューターの基礎的なことやプログラミングについては、その時に学びました。そこでしばらく働いた後、1995年にニューヨークに行こうと思い退社。ニューヨークに来てから住みたいと思いはじめ、まずは友人を作るため語学学校に通いました。語学学校時代に就職活動を始めたのですが、学生ビザだと、まったく相手にしてもらえませんでした。電話をかけて、相手があやうく電話を切りそうになるところ「コンピューターできるんです」という一言で相手を引き戻し、日系のIT企業に就職できました。当時はITバブルが来る前で、どの企業でもコンピューターエンジニアは必要とされていた時代でしたから、コンピューターを使えていなかったら、こちらでの就職は難しかったと思います。
グリーンカードをすでに持っているなら問題ないですが、学生ビザしか持っていない時点で、就労ビザをサポートしてくれる企業を探すのは、かなり大変なことですよね。
そうですね、学生ビザで来てこちらで就職したい人は、結構苦労されていると思います。幸い、その日系企業のサポートでグリーンカードも取得でき、そこでは約10年間働いていたんですが、「なぜ自分はニューヨークにいるのに日本の環境と同じようなところにいるのだろう」と思い立ち、友人の紹介から、今の会社が買収する前のフランスの会社へと転職できました。
就労ビザからグリーンカードを取得するには、かなり時間がかかる場合もありますが、その時は今より取りやすかったのでしょうか?それから、友人の紹介で転職できた、というのはよかったですね。
グリーンカードは「コンピューターエンジニア」という特殊技術面での特別枠があったので、通常よりも早く取れたのだと思います。友人からの紹介というのは、通っているジムで知り合ったフランス人の友人に「今仕事探してるんだよね」という話をしていて、「じゃあレジュメ(職務経歴書)ちょうだい」と言われて渡したら、その人の友人関係に僕のレジュメがまわり、ちょうど今のポジションを探しているというので、そこに就職できました。
ジムの友人からレジュメが回って仕事が?!そんなことがあるんですね!
その前から自分でもちょこちょこと応募はしていたんですけどね。でも、こちらでは、人づてに仕事を紹介してもらえることってよくありますよ。リストラになってしまった元同僚から、その直後にフェイスブックやリンクトインの友人申請がよくあります。それだけ人つながりで仕事を紹介してもらえる可能性があるということだと思います。
なるほど。ところで、今現在のお仕事をされていて、どのような時に充足感や面白さを感じますか。
そうですね~。自分で240台あるコンピューターを一つ一つ立ち上げてチェックするのは大変なので、コンピューターのほうでチェックしてお知らせしてくれる自動化のプログラミングを自分で組んだのですが、こういうプログラミングの仕事は好きですね。今はプログラマーではないのですが、正直、こういう仕事のほうが好きなんです。あとは、すごいシステムを作ったときはモチベーションが上がります。
ほぉ~。それがモチベーション持続につながるんですね。 ちなみに、現在のお仕事をされていて、日頃気をつけていることはありますか?
言語の面では気をつけています。僕はネイティブではないので、何かあった場合、僕が英語を理解しなかったからと言われてトラブルにならないよう、同僚との重要なやりとりは、口頭ではなくメールで送ってくれ、と伝えるようにしています。 メールで残しておけば、記録にもなるからです。アメリカの企業では、急なリストラはよくあることで、正社員であっても「明日から来なくていいよ」とその日に言われることもあります。その点はもしかすると日本より厳しい世界かもしれません。次の就職先を探す期間もないですし、引き継ぎ期間もありません。朝普通に出勤した人が午後にはもういなくなっている、ということも多々あります・・・。なので、こういった対策を取って、自分の身は自分で守らないといけないと思っています。
やはりアメリカ企業、厳しい世界ですね・・・。 かなりストレスなのでは?
正直言うと、ストレス、プレッシャーは多いです! いつリストラされるかわからない恐怖だったり、正社員であっても自分の身は自分で守らないといけないという状況なので、日系企業に勤めるよりリスクは高いと思います。 ですが、旅行などで休暇を取る際には、必ず上司から「ホテルにネットあるよね?」と言われ、現地から必ずブラックベリーでメールチェックができるような環境を強いられますので、まだ会社から必要とされているんだ、という安心感もあります。
なるほど。しかしアメリカ企業で、言語の面でのネックもありつつ、ネイティブと対等に仕事ができているというのはすごいです。同僚に日本人はいないのですか?
会社で日本人は僕一人です。そうですね、生き残るためには、技術に関して言えば、日々勉強ですね。あと重要なのは責任感だと思います。これは日本人的だなぁと思いますが。
責任感ですか!なるほど。責任感の強さは、民族的にも日本人は特化しているかもしれませんね。 それでは最後に、将来の展望のようなものをお聞きしたいのですが。 そういえば、本業以外に、投資関連のビジネスもしているのですよね?
そうなんです。将来的には、今やっている投資のビジネスで独り立ちしたいです。常時、株もやっていますが、タイムズスクエアにアパートメントを所有しているので、その不動産投資、あと、友人と行っている短期アパートを法人向けに貸し出しするビジネスを行っています。こちらに関しても、投資関連のセミナーに参加したり、自分で勉強会の講師をしたり、投資関係の友人と情報交換したり、と日々勉強をしています。不動産投資に関して言えば、まだ多くの収入があるという訳ではありませんので、定期的に十分な不労所得が入ってくるといいですね。ほしいものは「安定と自由」です。
現在のITエンジニアという仕事でご活躍されつつも、ご自身のビジネスも精力的にやっていらっしゃるんですね。エネルギッシュ!本日は個人的にも大変刺激になりました。西山さんどうもありがとうございました。
ここ異国の地、ニューヨークで、ストレスとプレッシャーに日々戦いながら過ごしている西山さん。が、それを感じさせることもなく、元気ハツラツとされていらっしゃいました。それは、ITエンジニア以外のビジネスである、自分の本当にやりたいこと、将来の展望があるからなのでしょう。
日々勉強という弛まぬ努力と、それに裏打ちされた基礎的な技術が、ネックである言語の面をカバーし、かつ、日本人ならではの強い責任感というのが、プラスアルファの西山さんのスキルになっている、だからこそ、会社側からの信頼があるのだと推測。近い将来には必ず「安定と自由」を手に入れた投資家としてご活躍されることを期待しています。
Profile of 藤井さゆり
東京生まれ、アメリカ在住。日本とアメリカでの職務経験あり。
東京丸の内にある公益法人にて8年間勤務の傍ら、友人が企画したクラブイベントのフライヤーや、CDジャケットのデザインを行う。
公益法人では「地方の街づくり・街おこし」支援事業の一環で、ウェブサイト業務に携わる。 公益法人退職後、2004年より4年間、都内商業施設のサイト更新・管理、販促サイトのキャンペーンページ企画と取材・撮影を含めたライティングワーク、ウェブデザインを経験。
2008年ニューヨークに移住。ニューヨークではウェブマーケティング、サイト管理を企業にて経験、それと共にウェブデザインとライティングワークをフリーランスとして行う。現在は日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」を立ち上げ、オーナー兼デザイナーを務める。
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