シンガポールで働く~クリエイター事情~

Vol.9
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
Junya Oishi
大石 隼矢

Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.代表の大石隼矢(おおいしじゅんや)です。

いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。
私は新卒で株式会社フェローズに入社し、東京本社にて人材エージェントとしてクリエイターの皆さまの仕事をサポートして参りました。2020年9月より、ここシンガポールでFellows Creative Staff Singaporeの代表、兼エージェントとして日々奮闘している私から、今回は日本人クリエイターがシンガポールで働く際に知っておいた方がいいポイントをいくつかお伝えしてまいります。

シンガポールでクリエイターとして働きたいけど実際はどんな求人があるの?
A.
求人の種類は様々!その中でも、「Web・IT開発関連」「Digital Marketing」が多い!

WebやDigitalと名のつく職種や仕事がとても多いです。例えばDigital Marketingで言えばInhouseでブランディングメインに担当するポジションや、エージェンシー的にクライアントベースで案件を担当するポジションなど。Web関連の会社はWeb制作もやるしデジタルマーケティングも代行するし、広告代理もするというようなWebまわりのソリューションをトータルで提供する企業が多いです。
一方でテレビ関連の求人は限定的です。シンガポールの地上波TVはMediaCorpが独占していて、その他有料放送でSingtel TVとStarHub TVというチャンネルがありますが、その他の衛星チャンネル保有は禁止されているため、TV番組の制作は多くありません。シンガポール国内でテレビ映像関連職を探す方は少し苦労するかもしれません。今、コンテンツが増えている配信系を見ると、Netflixはよく求人を出していますが、シンガポールではテレビ制作者というよりもProducerやManagerなどの管理職系の求人が多く、またそのほか独立系プロダクションの数は日本より少ないようです。
ゲーム関連は少数精鋭の開発会社がありますが、求人数としてはまだまだ少ない印象ですし、クリエイターも多くありません。

シンガポール最大手のテレビ局 MediaCorpの社屋

実を言うとシンガポールに来る前から来たばかりの頃、知人やクライアントなどいろんな方から「シンガポールにクリエイターはいない」と聞かされていました。それは人口が少ないこと、市場が小さいこと、金融ハブや海運ハブとして成長してきた背景、などが理由としてありました。先入観を植え付けられたような形でしたが(笑)、実際に自分の目で見たことや話してみたことから「そんなことなかった!」というのが結論です。Fellowsはクリエイターを応援するエージェントです、と前面に出しているので、問い合わせをくれるシンガポール人の皆さんのジャンルは様々にせよ「クリエイティブにかかわる仕事がしたい」という方ばかりです。なかには「経験はないけれど挑戦したいんだ」という方もいます。年齢問わず、です。「クリエイターはいない」というのは、ある視点から言えばその通りかもしれませんが、スキルがあるとか経験があるとかを置いておいて、シンガポールにはクリエイティブが好きな方やクリエイティブ業界を目指す方は多いと感じています。

現在日本に在住している人でもシンガポールでクリエイターとして働ける?
A.
働けます!…が、乗り越えなければいけない条件が複数あります!!

ひとつ前のコラムでも書いたのですが、シンガポールで日本人が働く方法は大きく2つあります。駐在員として働くか、現地採用で働くか。そしてそのいずれの場合でも就労ビザの取得が必須となってきます。
参照→シンガポールで働く~駐在員と現地採用とはどう違うの?~

またフリーランスや個人事業主の方が日本在住のままシンガポールからの案件を受注することは基本的にはできると思います。業務委託、と同じ形なのだと思います。
一方でシンガポール在住の日本人がフリーランスや個人事業主として仕事を受けることは原則できません。例えばオンライン上のみで行われるサービス(ECサイトやオンラインレッスンなど)も一見大丈夫な気がしますが、シンガポールに在住している人がシンガポールで就業する場合、必ずどこかの企業から就労ビザを申請してもらい取得する必要があります。個人的に調査した結果、どうやら就労ビザが無いまま、帯同ビザ(Dependent Passなど)保持者がフリーで仕事を受けているor副業しているというケースもあるようですが、これはいくつかの条件が重なってクリアになっている、もしくは残念ながら非合法なのだと思います。合法的なケースとして考えられるのは、配偶者の転勤にともないシンガポールに在住しているが、日本企業に所属したままリモートワークを許可されているケース。以前「越境ワーカー」としていくつかの記事に掲載されていたRevCommの重城さんがこれにあたるかもしれません。
参照→https://www.facebook.com/revcomm/posts/4027996363922665

上記に書いた通りですが、日本からシンガポールに移住して働く場合は就労ビザの取得をサポートしてもらえる企業もしくは求人への応募が必須です。ある日本人の登録者に聞いたことがありますが、コロナ前は8割以上の確率で応募すれば面接は受けられていたということですので、もう少し様子を見てから求人が増えてきたタイミングで、というのが良いかもしれません。それまでに個人でリサーチしたり、私のような現地の人材会社とつながりを持ったりすることがおすすめです。

シンガポールでクリエイターとして働いた経験は日本や世界でも活かせる?
A.
活かせます!得られるものは大きいはずです。

シンガポールに来て、日本とは違った感性を持っている人が多いんだなとすごく思います。レストランのポップやカフェの空間デザイン。テレビCMの演出や街角のサイネージ。人々の服装からわかるトレンドやWebサイトのデザインまで、ありとあらゆるものが日本とは違います。日本っぽいな~と直感で思う商品やデザインは、調べてみると日系企業が手掛けていたりすることもしばしば。

 
道行く人の足を止めるオーチャードロードの3Dサイネージ

また、これは主観的になってしまいますが、日本でしか働いたことのない人は私も含めて「海外で働くってすごいな」と漠然と思いがちだと思います。実際に私もそう思っていましたし、来る前までは正直「通用するかな」と不安でした。「自分の実力がわからない」とか「日本語以外でのコミュニケーションの経験が少ない」などが大きな理由だと思います。

私はそれらの不安を解消するには、日々の努力の積み重ねだと常々思っています。日本で認められていた方もシンガポールに来て自分の実力を認めさせることができるようにならなければいけませんし、日本とは違った視点があったり、好まれる特有の表現があったりすることを知らなければなりません。自分の固定観念を壊す場面に一度は遭遇すると思いますし、とにかく実力主義な世界に出ると思った方が良いです。

ビジネスの観点でいうと、例えば東南アジアへのサービス展開を考えているような企業で、それまでの経験に基づくビジネススキルやコミュニケーションスキルなどが生きることもあるでしょう。あるいは、自ら独立してビジネスを仕掛けるということもできると思います。
クリエイターの観点でいうと、感性の違うクリエイターやクリエイティブに触れることにより新しい表現力が身についているはずですし、他とは違った作品が作れるようになるかもしれません。

まとめ

今回は、シンガポールでクリエイターとして働くことをテーマに書いてみました。いかがでしたでしょうか。海外×クリエイターと考えるとどうしてもしり込みしてしまうかもしれませんが、そんな時こそ我々のような人材エージェントに相談してみるというのは一つの具体的な手段だと思います。最近はTwitterFacebookLinkedInからも問い合わせいただくことが増えましたし、日本在住の方からもちらほらご質問をいただきます。もしも悩んでいる方がいらっしゃいましたら、一度お気軽にお問合せください。
今回のコラムで触れていない職種についても、今後調査して書いていきたいと思います。
次回はシンガポール国内での転職事情について書いていきますので、引き続き当コラムをよろしくお願い致します!

※会社名、製品名、サービス名等は、それぞれ各社の商標または登録商標です。

プロフィール
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
大石 隼矢
1990年 静岡県焼津市生まれ。小さいころからサッカーに魅了され、日韓ワールドカップで来日したデイビッド・ベッカムの話す英語に衝撃を受け、自分も話せるようになりたい!と大学は外国語大学へ。2010年カナダ・ウエスタンオンタリオ大学へ交換留学。 2012年株式会社フェローズ入社。ブロードキャスト・ビジュアルセクション。2020年4月にフェローズ初の海外拠点であるFellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.の責任者に就任。 好きなバンドはOasis、最近の趣味はNetflixで英語学習、尊敬する歴史上の人物は吉田松陰と白洲次郎、好きな食べ物はカレーライスとらっきょう、嫌いな食べ物はかぼちゃと大学芋、みずがめ座B型、佐々木希とジェームズディーンと富岡義勇(鬼滅の刃)と同じ誕生日。 Twitter:@junya_oishi

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